「生物多様性」の保全および回復を目指すネイチャーポジティブという考え方は、企業が事業活動を継続的に実施するための重要課題として、顧客・投資家からも注目を集めています。KPMGは事業活動上の重要なリスクファクターとなりつつある「生物多様性の喪失」に対し、豊富な実績を通じて培ったノウハウや、グローバルネットワークを活用し、対応方針の策定やリスクと機会の分析、戦略策定・目標の設定等、一連の対応を支援します。

ネイチャーポジティブとは?

地球と環境の回復力を高め、生物多様性の喪失に歯止めをかけ、回復させることを意味します。2021年6月に開催された主要7ヵ国首脳会議では、「2030年自然協約(Nature Compact)」として、2030年までに生物多様性の喪失を止めて反転させるという世界的な使命にコミットすることが合意されました。ネイチャーポジティブなアプローチは生物多様性を豊かにし、温室効果ガスを削減し、水を浄化し、パンデミックリスクを軽減することにつながります。

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生物多様性・自然資本に関する解説資料

生物多様性および自然資本の重要性、TNFDの概要と背景について、KPMGが公表したレポートをご紹介します。

生物多様性に関する課題対応の基本的な考え方

経済活動は生物多様性に大きく依存

私たちの経済活動は、動植物、大気、土壌や水など再生可能および非再生可能な天然資源のストックである「自然資本」と生態系が提供するさまざまな便益のフロー(生態系サービス)によって支えられています。世界経済フォーラム(WEF)は、世界経済に対する自然資本の貢献は年間125兆ドルと推定され、世界のGDP(およそ85兆ドル)の半分以上(およそ44兆米ドル)の経済的価値の創出が生物多様性および生態系サービスに中程度または高度に依存している一方、生態系サービスの消失が年間で少なくとも4,790億ドルの経済損失をもたらしているとの分析結果を発表しました。

生物多様性に関する課題対応支援_図表1

出典:World Economic Forum (2020), Nature Risk Rising をもとにKPMG作成

グローバルリスクとしての生物多様性の喪失

世界経済フォーラム(WEF)が2022年1月に発表したThe Global Risks Report 2022(グローバルリスク報告書)によると、今後10年間で発生可能性が高いリスク・影響度が大きいリスクともに、「生物多様性の喪失」がTOP3にランクインしており、生物多様性の喪失はグローバルで見たトップリスクの1つであると捉えられます。

生物多様性に関する課題対応支援_図表2

出典:World Economic Forum, The Global Risks Report 2022 17th Edition. をもとにKPMG作成

また、生物多様性を含む自然資本の喪失は、企業の事業活動において以下のようなリスクを発生させる可能性があります。

生物多様性に関する課題対応支援_図表3

出典:Dasgupta, P. (2021), The Economics of Biodiversity: The Dasgupta Review. (London: HM Treasury) をもとにKPMG作成

企業の生物多様性に対する取組みは始まったばかり

KPMGによる2020年度の調査において、生物多様性の喪失に伴うリスクが高/中程度とされる調査対象企業において、そのリスクを開示しているのはグローバル全体で23%、日本国内ではわずか4%と非常に低い割合となっています。生物多様性や生態系の喪失に関するリスクへの対応・開示はこれから発展していく段階であると考えられます。

生物多様性に関する課題対応支援_図表4

出典:KPMGグローバルサステナビリティ調査2020

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の策定

企業開示が未成熟である一方で、Responsible InvestorとCredit Suisseが発表したレポート“Unearthing investor action on biodiversity”では調査対象となった306の投資家のうち84%が生物多様性の損失を懸念していることが示され、生物多様性は多くの投資家が注目するエンゲージメントテーマと言えます。

こうした状況を踏まえ、2020年7月に、UNEP FI、UNDP、WWF、Global Canopyの4団体によりTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が発足しました。このタスクフォースは、気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)に倣った取組みであり、2023年までにTCFDと同様のフレームワークを採用し、自然関連リスクと機会を特定し、それらをどのように経営に反映させていくかを組織が報告し、変化に基づき行動を起こすことを目的としています。

現在、各国上場規制等における組み込みが進んでいるTCFDと同様に、TNFDに沿った開示の主流化が進み、日本企業を含む数多くの企業の対応事項となる可能性があります。なお、今後は以下のスケジュールが予定されています。

生物多様性に関する課題対応支援_図表5

生物多様性・自然資本支援サービス

KPMGはTNFDフレームワークの開発を行うタスクフォースへの参画や、自然資本に対する影響や依存度を計測、価値評価し、意思決定や戦略策定に資するための標準化された枠組みである「自然資本プロトコル」の日本語版監修等、グローバルスタンダードの検討や設定に積極的に関与しています。KPMGグローバルネットワークと外部有識者とのネットワークを活かし、生物多様性に関連する企業活動を包括的に支援します。

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KPMGあずさサステナビリティ株式会社
マネジャー 石川 敬香
シニア 伊藤 杏奈

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