生物多様性条約COP15が描く2030年までの7年
2022年12月に開催された生物多様性条約COP15において、2030年までの国際的な生物多様性目標(昆明・モントリオール生物多様性枠組)が採択されました。本稿では、23の2030年ターゲットについて、その目標の概要とそれらが企業活動に及ぼす影響について考察します。
生物多様性条約COP15において採択された2030年生物多様性目標(昆明・モントリオール生物多様性枠組)について、その目標の概要とそれらが企業活動に及ぼす影響について考察します。
概要
2022年12月に開催された生物多様性条約COP15において、2030年までの国際的な生物多様性目標(昆明・モントリオール生物多様性枠組)が採択されました。今後、生物多様性を毀損する活動に関する規制の強化や、生物多様性を保全する活動に対する事業機会やインセンティブが増加する等、さまざまな形で生物多様性の回復に向けた事業環境の変化が予想されます。
1992年に採択された国連生物多様性条約(Convention on Biodiversity, CBD)は、15回目の締約国会議であるCOP15を迎えました。COP15では生物多様性に関する2030年までの世界的な行動目標が議論されたことから、定期的に開催される締約国会議(COP)の中でも節目となるイベントとして、世界的に高い注目を集めました。生物多様性の損失を止めて回復軌道に乗せるために、気候変動に関するパリ協定が採択された時のような瞬間(Paris moment)を期待する声も挙がっていました。
COP15で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(GBF)
本COP15は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により2部制に分けて実施されました。第1部として、中国・昆明の主催で開催されたオンライン会議(2021年10月)や各国で実施されたワーキンググループ活動における議論を経て、2022年12月、カナダ・モントリオールにおいて第2部の開催を迎えました。12日間にわたって条約加盟国による活発な議論が行われ、合意の締め切り直前であった19日の午前3時30分、2030年までの目標を定めた「昆明・モントリオール生物多様性枠組(Kunming-Montreal Global Biodiversity Framework、以下「GBF」)が採択されました。
GBFは階層構造になっており、最上位の概念である2050年ビジョン「自然と共生する世界(Living harmony with nature)」と4つの2050年ゴール、その達成に向けた2030年ミッション「生物多様性の損失を止め反転させ回復軌道に乗せるための緊急な行動をとる」、そして具体的な数値も含む23の2030年ターゲットが含まれます。
GBF自体に法的拘束力は無いものの、各加盟国はGBFに合わせた国家戦略と行動計画を策定し、進捗状況の把握のために5年以内の期間ごとに国別報告書を提出することになります。日本においても新しい枠組みの下での次期生物多様性国家戦略が2023年3月に閣議決定される予定であり、その内容についてはGBFとの整合が図られることが考えられます。GBFはこうした国家戦略への組み込みや資本市場の変化を通して、関連法規制の強化や新たなビジネス機会の拡大、投資家による要請の変化等、あらゆる形で企業の活動の制約条件や推進力になっていくことが想定されます。
本稿では、23の2030年ターゲットを分類する3つのターゲット・カテゴリー*ごとに、その目標の概要と、それらが企業活動に及ぼす影響について考察します。
*GBFの正式な呼称ではなく、本稿において便宜的に「ターゲット・カテゴリー」と呼称する。また、下記「各ターゲットの要約」に記載のターゲット名およびその内容はKPMGにて作成。
執筆者
KPMGあずさサステナビリティ
シニアコンサルタント 伊藤 杏奈
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