金融機関とTNFD開示ベータ版フレームワーク
これまでのベータ版で公表されている金融機関向けガイダンスの内容を踏まえ、いま、日本の金融機関が取るべき対応について考察します。
これまでのベータ版で公表されている金融機関向けガイダンスの内容を踏まえ、いま、日本の金融機関が取るべき対応について考察します。
概要
2023年3月、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)よりベータ版フレームワークv0.4(以下v0.4)が公表されました。このバージョンをもってベータ版での公表は最終となり、2年間にわたって行われてきたTNFD開示フレームワークの設計や開発フェーズが終わりに近づいています。本稿では、これまでのベータ版で公表されている金融機関向けガイダンスの内容を踏まえ、いま、日本の金融機関が取るべき対応について考察します。
金融機関の目線から、これまでのベータ版開発を振り返る
金融機関が自然関連リスクと機会に対応することの重要性、そして具体的な取組みの方法論は、TNFDベータ版の開発の過程で徐々に整理されてきました。本章ではベータ版(v0.1~v0.4)の中から、金融機関に特化した内容を整理し、その開発の変遷と主なポイントを確認します。
- 金融機関がネイチャーポジティブに果たす役割の重要性(v0.1)
- リスク・機会の特定・管理・開示アプローチ「LEAP-FI」(v0.1~v0.4)
- 金融機関向けのリスク分析、開示に関するガイダンス(v0.3~0.4)
ベータ版フレームワークv0.4までの金融機関向けの主要なアップデートの詳細はPDFからご確認いただけます。
進むTNFDフレームワーク開発、金融機関が取るべき対応とは
金融セクターにおける自然資本に関する取組みは着実に広がりを見せています。欧州を中心にTNFDの取組みが開始される以前から生物多様性フットプリント等の定量化に取り組む金融機関が存在しており、さらなる分析や開示の高度化が予想されます。国内の金融機関においても、部分的にTNFD開示を行っている例が現れはじめています。
この時流に乗り遅れないためにも、v1.0が公表される2023年9月まで「待ち」の姿勢をとるのではなく、マネジメントからのコミットメントに加え、TNFDフレームワークおよびPBAFなどの分析手法への理解を深め、堅実なロードマップを作成するといった準備を進めておくことが重要と考えられます。さらにベータv0.4までのガイダンスを使用して優先セクターの絞り込みを行い、TNFD開示に向けたパイロットテストを開始するなど、実際の分析に着手することもお勧めします。
KPMGの支援サービス
KPMGでは、金融機関に対して自然資本や生物多様性に関する評価やTNFD開示への対応などをご支援しています。また、金融機関において活用できるデータベースや方法論等の検討を通じて、自然資本・生物多様性サービスの高度化を進めています。詳しくはこちらをご覧ください。
執筆者
あずさ監査法人
金融アドバイザリー事業部
シニアマネジャー 金 玉化