本連載は、日経産業新聞(2021年10月~11月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

再エネ比率100%を実現する3つの方法

「事業で使うすべての電気を再生可能エネルギー由来にしたい」。このようなニーズが企業の間で急速に高まっています。この実現を早くから目指してきた国際的な取組み「RE100」参加企業だけでなく、それ以外の企業でも動きが活発になっています。
使用電力の再エネ比率100%を実現する方法は、(1)再エネ由来の電気料金メニューの選択(2)再エネ由来の証書の購入(3)再エネ発電による電力の直接調達の大きく分けて3つがあります。

(1)再エネ由来の電気料金メニューの選択
小売電気事業者から「電気+環境価値」を組み合わせた電気料金メニューを選ぶ方法です。環境価値とは、再エネの持つ二酸化炭素(CO2)を排出しない特長を取引することです。環境価値が電気と切り離されたことで、その電源が太陽光ではなく石炭火力であっても制度上は再エネメニューに括られます。そのため、電源が実際は石炭火力など再エネ由来ではない場合、「再エネ」と区別できるように「実質再エネ」と表示されるのです。

(2)再エネ由来の証書の購入
企業が電力契約とは別に環境価値の証書を自ら購入する方法です。現時点で購入可能な証書は「グリーン電力証書」と「J-クレジット」の2つで、2022年度下期に創設予定の「再エネ価値取引市場」から「FIT非化石証書」も買えるようになります。これは、これまで小売電気事業者しか購入できなかったFIT非化石証書を企業も購入できるようにし、安定的に環境価値を調達できるようにするためです。

(3)再エネ発電による電力の直接調達
企業の敷地内に太陽光などの電源を設置する「オンサイト発電」、敷地外に設置する「オフサイト発電」があります。オンサイト発電では、電源を自社所有または第三者所有のPPA(電力購入契約)での自家消費となります。このうち後者のオンサイトPPAは近年注目されており、敷地内の屋根や空地を発電事業者に貸し、太陽光などの発電設備の設置から運転・保守までを委託し、発電電力を一定価格で購入して自家消費するスキームです。
一方、オフサイト発電は、敷地内に余裕がない場合などに敷地外に電源を設置する方式です。ただ、電源と電力の使用場所が離れているため、送電するには自営線を敷設するか、遠隔地で自家発電した電力を他社の送配電網を使って自社に送る「自己託送制度」を活用することになります。
このオフサイト発電でもPPAを活用できますが、自己託送で送電する場合は現状、電源所有者が社内やグループ内に限定され、他社電源を使えません。オフサイトPPAで柔軟に電源を使えるように経済産業省で見直しが進んでいます。

では、企業はどこから始めればいいのでしょうか。現時点では多くの企業は(1)の再エネ由来の電気料金メニューの選択から着手しています。柔軟に証書を買えるようになると(2)の再エネ由来の証書の購入が増えます。さらに再エネ電源が大量導入されると電源コストも安くなり、(3)の直接調達のオフサイトPPAが増えると考えられます。

【再生可能エネルギー電力の調達方法】

(1)再エネ由来の電気料金メニューの選択 ・電気+環境価値(削減したCO2量)
(2)再エネ由来の証書の購入 ・証書は「グリーン電力証書」「J-クレジット」「FIT非化石証書(2022年度下期~)」の3種類
(3)再エネ由来電力の直接調達 ・オンサイト発電:自社の敷地で自社所有または他社所有の電源設備で発電
・オフサイト発電:離れた場所で発電し、自社の工場やビルに送電



執筆者

KPMGコンサルティング
パートナー 伊藤 健太郎

日経産業新聞 2021年11月12日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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