本連載は、日経産業新聞(2021年10月~11月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

エネルギー業界の画期的なイノベーション創出に向けて

2021年10月31日から11月12日まで「第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)」が英グラスゴーで開催されました。その約1年前の2020年10月26日、当時の菅義偉首相が就任後初の所信表明演説で、2050年までに温暖化ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、以来、日本国内ではこの実現に向けたさまざまな議論が繰り広げられてきました。
最近では、2030年時点での温室効果ガス2013年比46%削減を実現するべく、この目標に向けた総合的な実施計画である「地球温暖化対策計画案」や関連するエネルギー政策が策定されています。これに基づいてまとめた国の削減策「NDC(国が決定する貢献)」をもって、日本は2021年10月末からのCOP26に臨むこととなりました。

2030年時点の排出削減目標の達成可能性については、多くの意見があります。しかし、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、日本がこれを挙国一致で取り組むことに、もはや異論を挟む余地はなくなっています。重要なのは、これから2030年まで9年余りでできることに限界を感じることは仕方がないにしても、30年先の予測不可能な未来にまで、悲観的になる必要はないということです。
地球温暖化対策には膨大なコストが必要であることは間違いありません。しかし、この現状を創造的破壊で乗り越え、経済成長を実現する活動が世界中で始まっているのです。
たとえば、短期的な取組みとしては、太陽光など温暖化ガスを出さない脱炭素電源の開発が進んでいることが挙げられます。中長期的な取組みでは、洋上風力の開発、アンモニアや水素の活用、二酸化炭素(CO2)の回収・有効利用・貯留などの研究も活発になっています。
ただ、いずれも大きな課題が残っていることは否定できません。アンモニアや水素の活用、CO2の回収についての採算面や技術面の問題などは未解決なのです。

脱炭素電源については、再生可能エネルギーだけでは2030年目標に届くかは依然、不透明です。加えて昨今の化石燃料価格の高騰で、エネルギーの供給安定性についての本質的な議論が必要になっています。現実的には、海外で脱炭素電源として重要視されている次世代原子力の扱いをどうするかについても、真剣に検討しなければならない段階に差し掛かっているといえるでしょう。
2050年はそもそも今の現役世代の多くにとっては引退後のことであるし、健康でいるかどうかもわかりません。しかし、未来の社会のためにも、世代を引き継ぎながら、画期的なイノベーションの創出に諦めずに取り組んでいくことが欠かせないのです。

この連載では、このような果敢なチャレンジに向け、日本企業を中心とした取組みを紹介します。実現が間近に迫っているものから、未来においても本当に実現されるのかどうか現時点でわからないことまで、幅広く考察していきます。

【脱炭素に向けたこの1年の日本の歩み】

2020年 10月 ・2050年カーボンニュートラル宣言
12月 ・グリーン成長戦略を公表
2021年 4月 ・気候サミットで2030年に2013年比で46%削減する目標を公表
7月

・第6次エネルギー基本計画案を公表

・地球温暖化対策計画案を公表

8月

・日本のNDC案を公表

・パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略案を公表

10~11月 ・第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)

日経産業新聞 2021年10月22日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

お問合せ