アップデート!非財務情報開示の今 第11回 非財務情報の開示を巡る国内外の動向(2022年10月~12月までの動向)

「週刊経営財務」(税務研究会発行)3590号(2023年1月30日)に「アップデート!非財務情報開示の今 第11回 非財務情報の開示を巡る国内外の動向(2022年10月~12月までの動向)」に関するあずさ監査法人の解説記事が掲載されました。

「週刊経営財務」(税務研究会発行)3590号(2023年1月30日)にあずさ監査法人の解説記事が掲載されました。

この記事は、「週刊経営財務3590号」に掲載したものです。発行元である税務研究会の許可を得て、あずさ監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。

1.はじめに

本連載企画「非財務情報の開示を巡る国内外の動向」では、国内外の非財務情報に関する最新動向について四半期を目途にその動向について解説を行っている。本稿では、2022年10月~12月の動向について、以下に焦点を当てて解説する。

(国内の動向)

  • 金融庁による「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の公表
  • 金融審議会によるディスクロージャーワーキング・グループ報告(以下「DWG報告」という。)の公表

(国際的な動向)

  • 欧州理事会による企業のサステナビリティ情報の報告に関する指令(以下「CSRD」という。)の承認、及び欧州財務報告諮問グループ(以下「EFRAG」という。)による欧州サステナビリティ報告基準(以下「ESRS」という。)に係る最終草案の公表
  • 国際サステナビリティ基準審議会(以下「ISSB」という。)によるIFRS®サステナビリティ開示基準(案)の審議の状況
  • 国連気候変動枠組条約第 27 回締約国会議(以下「COP27」という。)および生物多様性条約第15回締約国会議(以下「COP15」という。)について

なお、本文中の意見に関する部分は筆者の私見であることを予めお断りする。

2.金融庁による「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の公表

金融庁は2022年11月7日に、「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「開示府令」という。)等の改正案を公表した。本改正案は、2022年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告における提言を受け、有価証券報告書及び有価証券届出書(以下「有報等」という)の記載事項について、改正の提案を行うものである。なお、本改正案は、2023年3月期に係る有報等から適用予定である。

本改正案は主に以下の事項について、有報等における開示の拡充を提案している。

(サステナビリティ)

  • サステナビリティ全般に関する開示
  • 人的資本、多様性に関する開示

(コーポレート・ガバナンス)

  • 取締役会や指名委員会・報酬委員会等の活動状況等

開示府令の改正案の概要は、図表1のように整理しうる。

図表1 開示府令案の概要

アップデート!非財務情報開示の今 第11回 非財務情報の開示を巡る国内外の動向(2022年10月~12月までの動向)-1

出所:「金融商品取引法に基づく男女間賃金格差の開示について (金融庁説明資料)」をもとに加工

加えて、本改正案においては、サステナビリティ情報をはじめとした将来情報の記述(任意開示書類の参照を含む)と虚偽記載の責任の関係が明確化された。

また、「記述情報の開示に関する原則(別添)」において、サステナビリティ情報の開示における考え方及び望ましい開示に向けた取組を公表している。

3.金融審議会によるDWG報告の公表

2022年12月27日、金融庁に設置されている金融審議会よりDWG報告が公表された。本報告では、四半期開示に関する事項とともに、主に以下の点について提言が行われた。

  • サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の役割や開示基準の位置付け
  • サステナビリティ情報に対する保証のあり方
  • サステナビリティ開示に関する我が国におけるロードマップ

上記の点に関する提言の概要は図表2のとおり整理しうる。

図表2 DWG報告の提言概要

論点 概要
サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の役割や開示基準の位置付け
  • サステナビリティ情報に関する開示基準を作成し、法定開示である有価証券報告書に取り込んでいく場合、開示基準設定主体や開示基準を、金融商品取引法令の枠組みの中で位置付けることが重要である。
  • サステナビリティ基準委員会(以下「SSBJ」という。)は、開示基準の設定主体として同法令の要件を満たしうる。
  • 必要となる関係法令の整備を行い、SSBJが開発する開示基準を、個別の告示指定により我が国の「サステナビリティ開示基準」として設定することが重要である。
サステナビリティ情報に対する保証のあり方
  • 有価証券報告書においてサステナビリティ情報が記載される場合には、将来的に、当該情報に対して保証を求めていくことが考えられる。
  • 保証の担い手は、サステナビリティ情報の開示と財務情報との結合性(コネクティビティ)の観点から、財務諸表の監査業務を行っている公認会計士・監査法人が考えられる。
  • サステナビリティというテーマが広範かつ多様な専門性が必要であることから、保証の担い手を広く確保することも重要だと考えられる。担い手の要件として、独立性や高い専門性、品質管理体制の整備、当局による監督対象となっていることなどが考えられる。
  • 保証基準や保証水準は、国際的な保証基準と整合的な形で行われることが、比較可能性の確保に資すると考えられる。
  • 有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の記載欄において保証を受けている旨を記載する際には、保証業務の提供者の名称、準拠した基準や枠組み、保証水準、保証業務の結果、保証業務の提供者の独立性等について明記することが重要であり、必要に応じてこのような取り扱いを明確化することが考えられる。
サステナビリティ開示に関する我が国におけるロードマップ
  • 企業や投資家による予見可能性を高め、実務的な準備を確実にすすめる観点から、わが国におけるサステナビリティ開示に関するロードマップを示すことが考えられる(図表3)。

出所:金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ報告」より、筆者作成

図表3 我が国におけるサステナビリティ開示のロードマップ一部抜粋

アップデート!非財務情報開示の今 第11回 非財務情報の開示を巡る国内外の動向(2022年10月~12月までの動向)-2

出所:金融庁「我が国におけるサステナビリティ開示のロードマップ 2022年12月公表」をもとに加工

4.欧州閣僚理事会によるCSRDの承認及びEFRAGによるESRS修正草案の公表

(1)欧州閣僚理事会によるCSRDの承認

EUでは、CSRDについて、EU議会及び欧州閣僚理事会による採択を経て、12月16日にこれが官報に掲載されている。CSRDは官報掲載後20日後に発効し、18ヵ月以内に各国はCSRDを踏まえた法制化することが予定されている。

CSRDでは、サステナビリティ報告に含めるべき項目は示されているが、その詳細は、CSRDの29(b)条の規定により、ESRSにより定められることとなる。

(2)EFRAGによるESRS修正草案の公表

EFRAGは、11月16日に、ESRS修正草案(以下「本草案」という。)が欧州委員会に提出している。本草案は、2022年3月に公表した公開草案に関するアンケートと750を超えるコメントを踏まえた修正案である。欧州委員会は、EFRAGから受領した本草案をもとに、欧州当局やEU加盟国政府との協議を行い、2023年6月までに最終基準を採択することを予定している。

本草案は、2つの横断的な基準(要求事項12個)と、10個のトピック別の基準(要求事項70個)により構成されている。横断的な基準な基準は全般的な情報に関する開示要求を、トピック別の基準はトピック別の詳細な開示要求を、提案している。

本草案の特徴点は、目的が投資家以外への情報提供を超えており、ダブルマテリアリティに基づく開示が必要であることである。また、本草案の作成に影響するさまざまなEUの法規制等が存在するため、すべての対象企業に開示が要求される項目が存在するほか、バリューチェーンにおける情報の開示が必要となることがある点も特徴的である。

5.ISSBによるIFRSサステナビリティ開示基準(案)の審議の状況

(1)基準の最終化に向けた審議の振り返り

ISSBから、2022年3月にIFRSサステナビリティ開示基準について、以下2つの公開草案が公表されていた1

  • IFRSサステナビリティ開示基準第1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項(案)
  • IFRSサステナビリティ開示基準第2号「気候関連開示(案)」

これらの公開草案について2022年7月を期限とするコメント募集が行われた結果、1,400を超えるコメントが寄せられた。ISSBは、コメントの内容を踏まえ再審議項目を設定し、2022年9月以降、再審議が行われている。

(2)再審議項目に関する主な決定(10月~12月)

2022年10月~12月の会議において、ISSBは主に、以下の事項について暫定決定した。

(全般的要求事項に関するもの)

  • 財務諸表とサステナビリティ関連財務情報の同時報告

(気候関連開示に関するもの)

  • 気候関連リスクに対するレジリエンスの報告におけるシナリオ分析の利用
  • 実務上の便宜措置を提供した上でスコープ3排出量の開示を要求

ISSBは、企業に対して財務諸表と同時にサステナビリティ関連財務情報の報告を要求することで合意した。これは、両者を同時に提供することで、財務諸表とサステナビリティ関連財務情報のコネクティビティが強化され、投資家の意思決定に有用な情報が担保されるためである。ただし、実務上の課題に関するコメントを踏まえ、当面の間、財務諸表を公表した後の所定の期日までにサステナビリティ関連財務情報を公表することを許容する経過措置の導入が予定されている。

また、ISSBは、気候関連リスクへのレジリエンスに関する評価について報告する際、企業にシナリオ分析の利用を求めることを決定した。これは、シナリオ分析が、気候関連リスク及び機会が、どのように企業のビジネスモデル、戦略、業績に影響を与えるかについての情報を投資家に提供するためであるほか、シナリオ分析は定性的なものを含む広い概念と考えられたためである。ISSBは、企業のシナリオ分析の実施を支援するため、TCFDが公表したガイダンスをもとにした適用ガイダンスの公表を予定している。

加えて、ISSBは、実務上の便宜措置を提供した上で、スコープ3排出量に関する開示を要求することで合意した。主な実務上の便宜措置は以下のとおりである。

  • 基準の導入後、最低1年間はスコープ3排出量の開示の免除(適用時期)
  • 報告範囲の評価に関するガイダンスを提供(報告範囲)
  • 重大な事象や状況の変化が起こった時にのみ報告範囲の再評価を要求(報告範囲)
  • 報告期間と異なるバリューチェーン情報の使用を許容(バリューチェーン情報)

(3)今後の予定

ISSBは、今後、以下のような予定に沿って作業を進めることを予定している。

  • 2023年上期の可能な限り早い時期(as early as possible)に最終基準を公表する。
  • 2023年の上期に気候関連開示以外に、どのようなトピックについて検討すべきかについてのコメントを収集する。

6.COP27およびCOP15について

(1)COP27について

COP27がエジプト(シャルム・エル・シェイク)おいて、11月6日から20日までの日程で開催された。COP27では、主に以下のテーマについて議論がされた。

  • 「緩和」…温室効果ガスの削減に関する取組
  • 「適応」…緩和策でも避けられない気候変動の影響への予防に関する取組
  • 「損失と損害」…気候変動の悪影響による損失及び損害に対する取組

COP27においては、緩和に関して、パリ協定の1.5℃目標達成の重要性を確認し、同目標に整合的な目標を2023年までに設定していない締約国に対し、目標の再検討・強化を求めることが決定された。また、適応に関して、「適応に関する世界全体の目標(GGA)に関するグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画」についての進捗確認が行われ、2023年の作業の進め方が決定された。加えて、特に脆弱な国の損失と損害支援を目的として、ロス&ダメージ基金(仮称)の設置が決定された。

(2)COP15について

COP15の第二部がカナダ(モントリオール)において、2022年12月7日~19日までの日程で開催された。COP15では、2010年COP10において採択された愛知目標に関する生物多様性保全に向けた取組の評価が行われたほか、新たな生物多様性に関する目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択された。

昆明・モントリオール生物多様性枠組の主な内容は図表4のように整理しうる。

図表4 昆明・モントリオール生物多様性枠組の概要

アップデート!非財務情報開示の今 第11回 非財務情報の開示を巡る国内外の動向(2022年10月~12月までの動向)-3

出所:環境省 「生物多様性条約 COP15 の主要な決定の概要」をもとに加工

7.おわりに

本稿では、2022年10月~12月における、非財務情報開示に関する国内外の動向について概観した。日本では有報等における開示の拡充が提案されたほか、海外においてもIFRSサステナビリティ開示基準やESRSの最終化に向けた検討が進んでいる。

こうした状況下において、自社の態様を踏まえ、サステナビリティ開示の準備を進めていくことが望まれる。

1 本誌3552号「アップデート!非財務情報の今 第8回 非財務情報の開示を巡る国内外の動向(2022年1月~3月の動向)」

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
マネジャー 公認会計士
米谷 将大

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