会計・監査情報(2019.11-12)
本稿は、あずさ監査法人のウェブサイト上に掲載している会計・監査ダイジェストのうち、2019年11月分と12月分の記事を再掲載したものです。
本稿は、あずさ監査法人のウェブサイト上に掲載している会計・監査ダイジェストのうち、2019年11月分と12月分の記事を再掲載したものです。
I.日本基準
1.法令等の改正
最終基準
(1)「会社法の一部を改正する法律」等の公布
2019年12月4日、「会社法の一部を改正する法律」(以下「会社法改正法」という)及び「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が成立し、同年12月11日に公布された。これらは、2019年2月の法制審議会総会で採択された、「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱」に基づき立案され、同年10月に国会に提出、同年11月に一部修正のうえで衆議院で可決され、同年12月に参議院で可決、成立したものである。
会社法改正法の概要は次のとおりである。
1.株主総会に関する規律の改正
- 株主総会資料の電子提供制度が新設され、上場会社等に対して義務付けられることとなった。
- 株主提案について、提案することができる議案の数に制限が設けられた。
2.取締役等に関する規律の改正
- 上場会社等の取締役会は、取締役の個人別の報酬等に関する決定方針を定めなければならないこととされた。
- 上場会社等が取締役の報酬等として株式の発行等をする場合には、金銭の払込み等を要しないこととされた。
- 役員等に係る補償契約や保険契約に関する規定が新設された。
- 上場会社等に社外取締役の設置が義務付けられた。
3.その他
- 社債管理補助者の設置を可能とするほか、株式交付制度が新たに設けられた。
会社法改正法は、公布の日(2019年12月11日)から1年6ヶ月以内の政令で定める日から施行することとされている(附則第1条本文)。ただし、株主総会資料の電子提供制度及び会社の支店の所在地における登記の廃止に関する改正規定については、公布の日から起算して3年6ヶ月以内の政令で定める日に施行されることとされている(附則第1条本文ただし書)。
あずさ監査法人の関連資料
ポイント解説速報(2019年12月11日発行)
公開草案
(1)金融庁、「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正案を公表
金融庁は2019年12月12日、「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正案を公表し、意見募集を開始した。
1.主な改正内容
企業会計審議会における議論等を踏まえ、IFRS任意適用の拡大促進の観点から、指定国際会計基準を適用する企業の開示負担の軽減等を図るため、企業内容等の開示に関する内閣府令について所要の改正を行うものである。改正内容として継続的に求められていた差異に関する開示を廃止することが提案されている。
2.施行・適用について
公布の日から施行予定。
意見の募集は2020年1月14日に締め切られている。
あずさ監査法人の関連資料
ポイント解説速報(2019年12月13日発行)
2.会計基準等の公表(企業会計基準委員会(ASBJ))
最終基準
該当なし
公開草案
該当なし
3.監査関連
最終基準
(1)日本監査役協会、「2019年3月期有価証券報告書の記載について(監査役会等の活動状況)」を公表
日本監査役協会は2019年11月26日、「2019年3月期有価証券報告書の記載について(監査役会等の活動状況)」(以下「本資料」という)を公表した。本資料は、2020年3月期の有価証券報告書から記載が求められる、企業内容等の開示に関する内閣府令二号様式(記載上の注意)(56)a(b)に定める監査役会等の活動状況の記載について、2019年3月期に早期適用を行っている会社の開示事例等を調査し整理したものである。
あずさ監査法人の関連資料
ポイント解説速報(2019年11月28日発行)
(2)日本監査役協会、「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・後編」を公表
日本監査役協会は2019年12月4日、「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・後編」(以下「本Q&A集」という)を公表した。
本Q&A集は、2018年7月の監査基準の改訂により導入された「監査上の主要な検討事項(KAM)」記載の円滑な適用に向け、監査役等の実務支援ツールとして公表されたもので、 2019年6月に公表された、KAMの概要、監査契約の締結及び監査計画の策定段階において必要な対応等をまとめた前編に続くものである。
今回公表された本Q&A集では、期中監査、期末監査において監査役等に求められる対応のほか、株主総会に向けた対応について取りまとめられている。
あずさ監査法人の関連資料
ポイント解説速報(2019年12月5日発行)
(3)金融庁、内部統制監査報告書の記載区分の変更を含む「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準等の改訂に関する意見書」を公表
金融庁は2019年12月13日、企業会計審議会監査部会が取りまとめた「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂に関する意見書」(以下「本意見書」という)を公表した。
本意見書では、2018年7月に実施された監査基準の改訂において、財務諸表監査における監査報告書の記載区分等が改訂されたことに伴い、以下の点が改訂された。
- 「監査人の意見」を内部統制監査報告書の冒頭に記載し、新たに「意見の根拠」区分を設ける。
- 「経営者の責任」を「経営者及び監査役等の責任」と変更し、監査役等の財務報告に係る内部統制に関する責任(内部統制の整備及び運用状況の監視、検証する役割と責任)を記載する。
本意見書では、2020年3月31日以後終了する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から改訂後の基準を適用するとされている。
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ポイント解説速報(2019年12月13日発行)
(4)法務省、監査基準の改訂に対応した「会社計算規則の一部を改正する省令」を公布
法務省は2019年12月27日、「会社計算規則の一部を改正する省令」(以下「本省令」という)を公布した。
本省令では、2018年7月及び2019年9月に実施された監査基準の改訂に対応し会計監査報告の内容について所要の整備を行うため、会社計算規則において以下の点が改正された。
- 「継続企業の前提に関する注記に関する事項」を追記情報の記載項目から、独立した区分に変更する(2018年7月の監査基準の改訂に対応)。
- 除外事項を付した限定付適正意見を会計監査報告の内容とする場合において、会計監査報告の内容としなければならない事項に除外事項を付した限定付適正意見とした理由を追加する(2019年9月の監査基準の改訂に対応)。
なお、本省令の公開草案への意見に対する法務省の考え方として、会社法に基づく会計監査報告において「監査上の主要な検討事項(KAM)」の記載を法令で求めることはしないものの、「会計監査人の監査の方法及びその内容」に含まれるものとして、任意に記載することはできる旨が示されている。
本省令は公布の日から施行されるが、本省令による改正後の会社計算規則の規定は、2020年3月31日以降に終了する事業年度に係る計算関係書類についての会計監査報告について適用することとされている。
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ポイント解説速報(2020年1月6日発行)
(5)金融庁、中間監査基準・四半期レビュー基準の改訂を受けた「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」を公布
金融庁は2019年12月27日、「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令及び企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(以下「本改正府令」という)を公布した。
本改正府令では、監査人による監査に関する説明及び情報提供の一層の充実を図る観点から、監査報告書における意見の根拠の記載等に係る監査基準等の改訂が行われたことを受け、各府令について以下が改正された。
- 監査基準、中間監査基準及び四半期レビュー基準の改訂に対応した監査報告書、中間監査報告書及び四半期レビュー報告書様式の改正、監査概要書及び四半期レビュー概要書様式の改正(財務諸表等の監査証明に関する内閣府令)
- 監査人交代に関する臨時報告書への記載事項の追加(企業内容等の開示に関する内閣府令)
「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」の改正規定については、2020年3月31日以後に終了する事業年度等に係る財務諸表等の監査証明、2020年9月30日以後に終了する中間会計期間等に係る中間財務諸表等の監査証明、2020年4月1日以後に開始する四半期会計期間等に係る四半期財務諸表等の監査証明より適用することとされている。
また、「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正規定については、2020年9月30日以後に終了する中間会計期間及び2020年4月1日以後に開始する四半期会計期間に係る財務計算に関する書類の監査証明を行う監査人の異動について適用することとされている。
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ポイント解説速報(2020年1月8日発行)
4.INFORMATION
(1)金融庁、「日本版スチュワードシップ・コード」改訂案を公表
金融庁は2019年12月20日、「「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~」(以下「SC」という)改訂案を公表し、パブリックコメントの募集を開始した。
SC改訂案は、金融庁に設置された「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」(令和元年度)におけるコード改訂に向けた議論を踏まえ、取りまとめられたものである。
SC改訂案では、主に以下の項目に関する改訂が提案されている。
- 日本の上場株式以外の資産に投資する機関投資家への本コードの適用(前文「本コードの目的」)
- サステナビリティに関する課題(前文冒頭、前文「本コードの目的」、原則1、原則4)
- 企業年金等のアセットオーナーによるスチュワードシップ活動(原則1)
- 議決権行使に係る賛否の理由の公表(原則5)
- 機関投資家向けサービス提供者に関する原則(前文「本コードの目的」、原則8)
コメントの募集は2020年1月31日に締め切られている。
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ポイント解説速報(2019年12月24日発行)
(2)金融庁、金融審議会市場ワーキング・グループに設置された市場構造専門グループの報告書を公表
金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループに設置された市場構造専門グループは2019年12月27日、「市場構造専門グループ報告書 - 令和時代における企業と投資家のための新たな市場に向けて - 」(以下「本報告書」という)を公表した。本報告書は、我が国の市場構造の在り方に関する検討結果を取りまとめたものである。
本報告書では、我が国における証券市場の課題を踏まえ、2022年上半期を目途として市場区分の再編、TOPIXの範囲の見直し、及び上場廃止基準の見直しに伴う受け皿市場の整備等の市場構造の見直しを行う等の提言が示されている。
本報告書を受け、株式会社日本取引所グループから、今後の取組みに関するコメントが公表されており、2022年上半期中に新たな制度への移行を完了させるべく、2020年2月を目途に新制度の骨子を示すほか、株価指数(TOPIX等)の範囲の見直しを含めて段階的かつ着実に制度設計を実施していくとされている。
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ポイント解説速報(2020年1月8日発行)
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II.国際基準
1.会計基準等の公表(国際会計基準審議会(IASB)、IFRS解釈指針委員会)
公開草案
(1)IASB、公開草案「全般的な表示及び開示」を公表
IASBは2019年12月17日、公開草案「全般的な表示及び開示」(以下「本公開草案」という)を公表した。IASBは、業績報告の改善を求める財務諸表利用者の強い要望を踏まえ、財務報告におけるコミュニケーションの改善(Better Communication in Financial Reporting)を優先的なプロジェクトとして扱ってきた。本公開草案は、当該プロジェクトの一環である基本財務諸表プロジェクトにおいて審議を重ねた結果として公表された。
本公開草案は、IAS第1号「財務諸表の表示」を新たな基準に置き換えることを中心に、その他財務諸表の表示に関する関連基準書についても改訂を提案するものであり、その主な提案は次のとおりである。
1.純損益計算書の構造
- 営業損益等の小計を表示する。
- 収益及び費用を営業、投資、財務等に区分して表示する。
- 持分法適用投資を企業の主たる事業活動と不可分なものと不可分ではないものに分類し、これらの投資に係る収益及び費用を区分して表示する。
2.集約と分解表示
- 表示項目の集約及び分解の原則や指針を導入し、特に「その他」のような項目を表示する際の指針を示す。
- 通例でない(同じような種類及び金額の収益及び費用が今後数年間に発生しないことが合理的に予測され、予測価値が乏しい)収益又は費用に関する情報を注記で開示する。
3.経営者業績指標
- 経営者が定義した業績指標(経営者業績指標)を、財務諸表利用者との公のコミュニケーションにおいて財務諸表外で用いている企業は、IFRS基準が定義する小計又は合計との調整表を注記で開示する。
4.キャッシュ・フロー計算書
- 営業活動から生じるキャッシュ・フローを間接法により表示する場合の調整の出発点を、新たに純損益計算書で表示が要求される小計である営業損益に変更する。
- 利息及び配当金の表示に関して現行基準で認められている選択肢を削減する。
コメントの締切りは2020年6月30日である。
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ポイント解説速報(2019年12月26日発行)
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III.修正国際基準
新たな基準・公開草案等の公表として、今月、特にお知らせする事項はありません。
修正国際基準についての詳細な情報、過去情報は
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IV.米国基準
1.会計基準等の公表(米国財務会計基準審議会(FASB))
最終基準(会計基準更新書(Accounting Standards Update; ASU))
(1)ASU第2019 - 08号「報酬 - 株式報酬(トピック718)及び顧客との契約から生じる収益(トピック606):顧客に対する株式報酬の支払いに関する会計処理の改善」の公表(2019年11月11日 FASB)
2018年に行われたトピック718の改訂(ASU第2018 - 07号)により、財又はサービスの販売を行うに際して顧客に付与した株式報酬はトピック718の適用範囲から除外され、トピック606に基づく処理が要求されている。しかしながらトピック606はこれを対価の減額として扱う、すなわち収益の減額として表示することを規定しながら、いくらの減額とすべきかという測定に関する規定を持たなかったため、実務には多様性が生じていた。
本ASU(第2019 - 08号)は、顧客に対して株式報酬の付与という形で対価の減額を行う場合に、以下のように会計処理をすることを明確化している。
- 株式報酬の測定、ならびに資本・負債の分類についてはトピック718の定めに従う。
- 付与日の公正価値として測定された株式報酬の額をもってトピック606における取引価格の減額として扱う。
- 付与日に先立ち取引価格を見積る必要がある場合には、株式報酬の公正価値を見積り、付与日までの期間において調整を行う。
本ASUは、公開の営利企業及びASU第2018 - 07号を早期適用している他の企業については、2019年12月15日より後に開始する事業年度及びその期中期間から適用される。その他の企業については、2019年12月15日より後に開始する事業年度及びその翌事業年度に含まれる期中期間から適用される。
本ASUの早期適用はASU第2018 - 07号の適用を条件として認められる。
本ASUの影響は、
- 本ASUとASU第2018 - 07号を同一事業年度に適用する場合には、当該適用開始事業年度の繰越剰余金の期首残高により修正する。
- ASU第2018 - 07号適用後の事業年度に本ASUを適用する場合は、ASU第2018 - 07号が適用された事業年度又は本ASUを適用した事業年度のいずれかを選択し、その繰越剰余金の期首残高により修正する。
あずさ監査法人の関連資料
Defining issues(英語)
(2) ASU第2019 - 09号「金融サービス - 保険(トピック944):適用日」及びASU第2019 - 10号「金融商品 - 信用損失(トピック326)、デリバティブとヘッジ(トピック815)及びリース(トピック842):適用日」の公表(2019年11月15日 FASB)
本ASU(第2019 - 09号及び第2019 - 10号)は、下記の主要なASUの適用日を次の表の通り見直している。これにより、米国基準を適用していない日本企業でも、実務対応報告第18号により在米子会社等の財務情報を米国基準の数値で連結上取り込んでいる場合、子会社等での新基準対応スケジュールに影響が生じる可能性がある。
基準 | 公開の営利企業(PBEs) | 非公開及びその他の企業 | |
---|---|---|---|
SEC登録企業 | それ以外の公開企業 | ||
ASU第2017 - 12号「デリバティブ及びヘッジ(トピック815):ヘッジ活動に関する会計処理の限定的改善」 | 変更なし (2018年12月15日より後に開始する事業年度) |
変更なし (2018年12月15日より後に開始する事業年度) |
2020年12月15日より後に開始する事業年度末 (期中期間については2021年12月15日より後に開始する事業年度から) |
ASU第2016 - 02号「リース(トピック842)」 | 変更なし (2018年12月15日より後に開始する事業年度) |
変更なし (2018年12月15日より後に開始する事業年度) |
2020年12月15日より後に開始する事業年度末 (期中期間については2021年12月15日より後に開始する事業年度から) |
ASU第2016 - 13号「金融商品 - 信用損失(トピック326):金融商品に係る信用損失の測定」 | 2019年12月15日より後に開始する事業年度及びその期中期間 (小規模登録企業を除く) |
2022年12月15日より後に開始する事業年度及びその期中期間 (小規模登録企業を含む) |
2022年12月15日より後に開始する事業年度及びその期中期間 |
ASU第2018 - 12号「金融サービス - 保険(トピック944):長期保険契約の改訂」 | 2021年12月15日より後に開始する事業年度及びその期中期間 (小規模登録企業を除く) |
2023年12月15日より後に開始する事業年度末 (期中期間については2024年12月15日より後に開始する事業年度から) (小規模登録企業を含む) |
2023年12月15日より後に開始する事業年度末 (期中期間については2024年12月15日より後に開始する事業年度から) |
あずさ監査法人の関連資料
Defining issues(英語)
(3)ASU第2019 - 11号「ASCの改訂:金融商品 - 信用損失(トピック326)」の公表(2019年11月26日 FASB)
FASBは、償却原価で測定される金融資産に予想信用損失モデルに基づく引当てを要求するASU第2016 - 13号「金融商品 - 信用損失(トピック326) - 金融商品の信用損失の測定」を2016年6月に公表したが、本ASU(第2019 - 11号)は、その内容に追加的な改訂を行うものである。
ASU第2016 - 13号では、企業が従前に直接償却した金額(もしくは直接償却が予定されている金額、以下同じ)についても、回収が見込まれる場合には従前直接償却した額を限度に戻入れを行うこととしているが、本ASUでは、当該規定が、償却原価で測定される資産であってその購入時に既に信用棄損していたものにも適用されることが明確化された。なお、予想信用損失の見積りに割引キャッシュフロー法以外の方法を用いている場合には、信用リスク以外の理由から生じるディスカウントの巻戻しを戻入れに含めてはならないとして、例示による説明が追加されている。本ASUは、ASU第2016 - 13号のその他のいくつかの点についても改訂を行っており、その改訂内容は2019年6月の公開草案で提案されたもの(参考:会計・監査ダイジェスト2019年6月号)をほぼ踏襲するものとなっている。
ASU第2016 - 13号を未だ適用していない企業については、本ASUの適用日及び移行措置は、ASU第2016 - 13号の適用日及び移行措置と同一とされている。
既にASU第2016 - 13号を適用している企業については、本ASUは、2019年12月15日より後に開始する事業年度およびその期中期間から適用され、早期適用も認められる。この場合、本ASUを遡及適用することによる累積的影響を、企業がASU第2016 - 13号を初めて適用した適用日の期首剰余金に調整する。
あずさ監査法人の関連資料
Defining issues(英語)
(4)ASU第2019 - 12号「法人所得税(トピック740):会計処理の簡素化」の公表(2019年12月18日 FASB)
本ASU(第2019 - 12号)は、会計処理の複雑性を削減しようとするFASBのプロジェクトの一環として、法人所得税に関する会計処理を簡素化している。本ASUにより簡素化・明確化された主な事項は以下のとおりである。
- 税金費用・利得(税務メリット)を損失が生じている継続事業に配分する際の例外規定を廃止し、継続事業以外から生じる利益を考慮せず配分を行う。
- 外国企業に対する投資の会計処理につき、持分法の適用を開始もしくは中止する場合の繰延税金負債の認識・認識の中止に係る例外規定を廃止する。
- 税法の施行日と発効日が異なる場合でも、原則に従い施行日の含まれる期中期間に税率変更の影響を認識すること、及び年間損失見込みの水準に関わらず期中損失に係る税金利得(税務メリット)を認識することを企業に求めることにより、期中報告における税金計算を簡略化する。
- 法人所得税の要素を含むフランチャイズ税の支払が必要な企業は、まず法人所得税の要素をトピック740に基づき算定し、そのうえで所得を課税基準としない追加的な部分の課税負担額をその発生時に会計処理する。
- 企業が税務当局と個別に交渉し、税務当局との金銭的取引等との引換えに、被取得企業から引き継いだ個々の資産及び負債の税務上の簿価の引上げを税務当局より容認を受ける際(ステップアップ)の会計処理に言及したトピック740のセクション(納税者と政府間の直接取引)の適用範囲を明確にした。具体的には、のれんの税務上の簿価の引上げについて、それが企業結合の一環で生じたものとみるか、企業結合とは別個の取引から生じたと考えるかの検討にあたり判断する指標を示している。前者に該当する場合、繰延税金資産の認識は、税務上損金算入可能なのれんの簿価が会計上ののれんの簿価を超える部分に限定される。
- 個別財務諸表上課税されていない企業への連結税金の配分が不要な点を明確化する。ただし限られた場合に配分することを選択することも認められる。
本ASUは、公開の営利企業については2020年12月15日より後に開始する事業年度及びその期中期間から適用される。その他の企業については2021年12月15日より後に開始する事業年度から(期中期間については2022年12月15日より後に開始する事業年度から)適用される。本ASUの早期適用は、まだ財務諸表が公表されていない(あるいは公表が可能になっていない)いずれの期中期間からも認められる。本ASUは将来に向かって適用されるが、項目により遡及適用または修正遡及適用が求められるものもある。
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Defining Issues: FASB issues simplifications to accounting for income taxes(英語)
公開草案(会計基準更新書案(ASU案))
(1)ASU案「ヘッジ会計の改善 - デリバティブとヘッジ(トピック815)」の公表(2019年11月12日 FASB)
2017年8月に公表されたASU第2017 - 12号「ヘッジ活動に関する会計処理の限定的改善」は、企業のリスク管理活動を財務報告により有効に反映することを目的としつつ複雑な会計処理の簡素化を図る形でヘッジ会計の改善を打ち出すものであった。しかしながら、その後の利害関係者との議論を通じて改訂内容の明確化等が必要であることが認識されたため、本ASU案において対応が提案されている。
提案の内容は主に以下の通りである。
- キャッシュフロー・ヘッジにおけるヘッジ対象リスクの変更:キャッシュフロー・ヘッジの開始時点では、ヘッジ対象リスクの特定に不確実性が存在する場合がある。例えば、変動金利借入の実行を予定しており、金利の変動リスクを回避すべく先日付スタートの金利スワップを取り組んでヘッジ会計の適用を意図するが、予定される借入金の変動金利がTIBORベースかLIBORベースかがまだ確定していないような場合である。本ASU案は、ヘッジ会計適用上のヘッジ対象リスクは、ヘッジ対象予定取引にキャッシュフローの変動をもたらすリスクが何かについての企業の最善の見積りに基づくべきであるとしたうえで、「ヘッジ対象リスクがヘッジ指定時の想定とは異なった場合」と「予定取引が発生しない場合」とは異なることを説明、ヘッジ指定文書化における留意点や有効性の考え方、不確実性が解消された場合の会計処理などについて明確化を提案する。
- 非金融商品に係る予定取引をヘッジ対象とする場合のリスク構成要素:ASU第2017 - 12号は、契約で特定されたリスク構成要素を非金融商品の購入・売却の予定取引においてヘッジ対象リスクに指定することを新たに認めたが、文書化などの適用上の留意点について、本ASU案はガイダンスの明確化を提案する。また、非金融商品の予定取引がデリバティブとして会計処理される場合について、これがヘッジ対象適格となる場合のガイダンスを追加することを提案する。
- 外貨建負債性金融商品によるデュアルヘッジ:金利リスクに公正価値ヘッジを適用している外貨建負債性金融商品を同時に純投資ヘッジのヘッジ手段に指定する(デュアルヘッジ)場合について、純投資ヘッジの有効性評価の変更を提案する。すなわち、会計上のミスマッチの発生を避けるため、公正価値ヘッジの適用によって生じるヘッジ対象の帳簿価額調整(ベーシス調整)を、有効性の評価から除外することを提案する。
本ASU案は、すべての企業について2020年12月15日より後に開始する事業年度から適用することを提案している。早期適用はASU 第2017 - 12号を既に適用している、もしくは同時適用する場合にのみ認めることを提案している。その他移行措置についての定めを設けることも提案している。
コメントの募集は2020年1月13日に締め切られている。
(2)ASU案「ASCの改善」の公表(2019年11月26日 FASB)
本ASU案は、ASC(会計基準編さん書)の内容を明確化し、想定していなかった形でガイダンスが適用されることが懸念される点などにつき誤謬を修正することによって改善することを目的として提案されており、会計実務に対する重要な変更や負担の増加をもたらすことは想定されていない。
本ASU案が提案する主な改訂点は以下のとおりである。
- 基準書に含まれる財務会計概念書への不必要な参照の削除
- 開示に関する規定を含めるべき基準書の区分の整理
- その他
本ASU案による改訂の多くは実務に影響がなく、最終版が公表された時点で適用することが提案されている。移行に関するガイダンスが必要な改訂については、各改訂の事実と状況に応じて移行措置及び適用日が提案されている。FASBは関係者のフィードバックを待って検討し、最終化に先立って適用日を決定する予定である。
コメントの募集は2019年12月26日に締め切られている。
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Defining issues(英語)
INFORMATION
(1)ASU案「参照金利改革についての軽減措置」を最終化する暫定決定(2019年11月13日 FASB)
2019年9月に公表したASU案「参照金利改革についての軽減措置」(参考:会計・監査ダイジェスト2019年9月号)に対するコメントレターを検討し、同案の提案内容をほぼ踏襲する方向で最終化することを暫定決定した。当該ASU案は、参照金利改革(IBOR Reform)により発生する影響を会計処理することに伴う潜在的な負荷を軽減するため、一時的かつ任意に適用されるガイダンスを提供するものであり、関係者からのコメントを受けて追加的な手当てが一部加えられている。最終版のASUは、2020年の初めに公表される予定である。
2.監査関連
(1)PCAOB、監査事務所の品質管理基準の見直しに向けた協議文書を公表
米国公開会社会計監視委員会(PCAOB)は2019年12月17日、監査事務所の品質管理に関する基準の見直しに向けた協議文書(以下「本協議文書」という)を公表した。
本協議文書では、監査事務所のガバナンスやリーダーシップ、リスク評価プロセス、品質管理体制の整備や運用に関連する者の役割や責任の在り方等、監査事務所における品質管理の在り方について広範な内容が対象とされている。PCAOBは、本協議文書に寄せられたコメントを踏まえ、今後、監査事務所の品質管理基準の見直しに向けた検討を進めていくことを予定している。
コメントの締切りは2020年3月16日である。
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ポイント解説速報(2019年12月20日発行)
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執筆者
有限責任 あずさ監査法人