会計・監査ダイジェスト 会計及び監査を巡る動向 2019年11月号

会計・監査ダイジェストは、日本基準、国際基準及び米国基準の会計及び監査の主な動向についての概要を記載したものです。

会計・監査ダイジェストは、日本基準、国際基準及び米国基準の会計及び監査の主な動向についての概要を記載したものです。

ハイライト

今月は、日本基準において留意すべき情報が公表されています。

また、米国基準において提案されていた、リース会計、金融商品の減損などの大型新基準の適用開始時期の一部変更が、公開草案通りに確定しました。

1.日本基準

監査関連

日本監査役協会、「2019年3月期有価証券報告書の記載について(監査役会等の活動状況)」を公表

日本監査役協会は2019年11月26日、「2019年3月期有価証券報告書の記載について(監査役会等の活動状況)」(以下、「本資料」)を公表した。本資料は、2020年3月期の有価証券報告書から記載が求められる、企業内容等の開示に関する内閣府令二号様式(記載上の注意)(56)a(b)に定める監査役会等の活動状況の記載について、2019年3月期に早期適用を行っている会社の開示事例等を調査し整理したものである。

あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2019年11月28日発行)

日本基準についての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(日本基準)

 

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2.国際基準

新たな基準・公開草案等の公表として、今月、特にお知らせする事項はありません。

IFRSについての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(IFRS)

 

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4.米国基準

会計基準等の公表(米国財務会計基準審議会(FASB))

【最終基準(会計基準更新書(Accounting Standards Update; ASU))】
(1)ASU第2019-08号「報酬 - 株式報酬(トピック718)及び顧客との契約から生じる収益(トピック606):顧客に対する株式報酬の支払いに関する会計処理の改善」の公表(2019年11月11日 FASB)

2018年に行われたトピック718の改訂(ASU第2018-07号)により、財又はサービスの販売を行うに際して顧客に付与した株式報酬はトピック718の適用範囲から除外され、トピック606に基づく処理が要求されている。しかしながらトピック606はこれを対価の減額として扱う、すなわち収益の減額として表示することを規定しながら、いくらの減額とすべきかという測定に関する規定を持たなかったため、実務には多様性が生じていた。
本ASUは、顧客に対して株式報酬の付与という形で対価の減額を行う場合に、以下のように会計処理することを明確化している。

  • 株式報酬の測定、ならびに資本・負債の分類についてはトピック718の定めに従う。
  • 付与日の公正価値として測定された株式報酬の額をもってトピック606における取引価格の減額として扱う。
  • 付与日に先立ち取引価格を見積る必要がある場合には、株式報酬の公正価値を見積り、付与日までの期間において調整を行う。

本ASUは、公開の営利企業及びASU第2018-07号を早期適用している他の企業については、2019年12月15日より後に開始する事業年度及びその期中期間から適用される。その他の企業については、2019年12月15日より後に開始する事業年度及びその翌事業年度に含まれる期中期間から適用される。
本ASUの早期適用はASU第2018-07号の適用を条件として認められる。

本ASUの影響は、

  • 本ASUとASU第2018-07号を同一事業年度に適用する場合には、当該適用開始事業年度の繰越剰余金の期首残高により修正する。
  • ASU第2018-07号適用後の事業年度に本ASUを適用する場合は、ASU第2018-07号が適用された事業年度又は本ASUを適用した事業年度のいずれかを選択し、その繰越剰余金の期首残高により修正する。

【あずさ監査法人の関連資料】Defining issues(英語)

(2)ASU第2019-09号「金融サービス - 保険(トピック944):適用日」及びASU第2019-10号「金融商品 - 信用損失(トピック326)、デリバティブとヘッジ(トピック815)及びリース(トピック842):適用日」の公表(2019年11月15日 FASB)

本ASU(第2019-09号及び第2019-10号)は、下記の主要なASUの適用日を下表の通り見直している。これにより、米国基準を適用していない日本企業でも、実務対応報告第18号により在米子会社等の財務情報を米国基準の数値で連結上取り込んでいる場合、子会社等での新基準対応スケジュールに影響が生じる可能性がある。

基準 公開の営利企業(PBEs) 非公開及びその他の企業
SEC登録企業 それ以外の公開企業
ASU第2017-12号「デリバティブ及びヘッジ(トピック815):ヘッジ活動に関する会計処理の限定的改善」 変更なし(2018年12月15日より後に開始する事業年度) 変更なし(2018年12月15日より後に開始する事業年度) 2020年12月15日より後に開始する事業年度末(期中期間については2021年12月15日より後に開始する事業年度から)
ASU第2016-02号「リース(トピック842)」 変更なし(2018年12月15日より後に開始する事業年度) 変更なし(2018年12月15日より後に開始する事業年度) 2020年12月15日より後に開始する事業年度末(期中期間については2021年12月15日より後に開始する事業年度から)
ASU第2016-13号「金融商品-信用損失(トピック326):金融商品に係る信用損失の測定」 2019年12月15日より後に開始する事業年度及びその期中期間(小規模登録企業を除く) 2022年12月15日より後に開始する事業年度及びその期中期間(小規模登録企業を含む) 2022年12月15日より後に開始する事業年度及びその期中期間
ASU第2018-12号「金融サービス - 保険(トピック944):長期保険契約の改訂」 2021年12月15日より後に開始する事業年度及びその期中期間(小規模登録企業を除く) 2023年12月15日より後に開始する事業年度末(期中期間については2024年12月15日より後に開始する事業年度から)(小規模登録企業を含む) 2023年12月15日より後に開始する事業年度末(期中期間については2024年12月15日より後に開始する事業年度から)

 

【あずさ監査法人の関連資料】Defining issues(英語)

(3)ASU第2019-11号「ASCの改訂:金融商品 - 信用損失(トピック326)」の公表(2019年11月26日 FASB)
FASBは、償却原価で測定される金融資産に予想信用損失モデルに基づく引当てを要求するASU第2016-13号「金融商品 - 信用損失(トピック326) - 金融商品の信用損失の測定」を2016年6月に公表したが、本ASUは、その内容に追加的な改訂を行うものである。

ASU第2016-13号では、企業が従前に直接償却した金額(もしくは直接償却が予定されている金額、以下同じ)についても、回収が見込まれる場合には従前直接償却した額を限度に戻入れを行うこととしているが、ASU第2019-11号では、当該規定が、償却原価で測定される資産であってその購入時に既に信用棄損していたものにも適用されることが明確化された。なお、予想信用損失の見積りに割引キャッシュフロー法以外の方法を用いている場合には、信用リスク以外の理由から生じるディスカウントの巻戻しを戻入れに含めてはならないとして、例示による説明が追加されている。本ASUは、ASU第2016-13号のその他のいくつかの点についても改訂を行っており、その改訂内容は2019年6月の公開草案で提案されたもの(参考:会計・監査ダイジェスト2019年6月号)をほぼ踏襲するものとなっている。

ASU第2016-13号を未だ適用していない企業については、本ASUの適用日及び移行措置は、ASU第2016-13号の適用日及び移行措置と同一とされている。
既にASU第2016-13号を適用している企業については、本ASUは、2019年12月15日より後に開始する事業年度およびその期中期間から適用され、早期適用も認められる。この場合、本ASUを遡及適用することによる累積的影響を、企業がASU第2016-13号を初めて適用した適用日の期首剰余金に調整する。

【あずさ監査法人の関連資料】Defining issues(英語)

【公開草案(会計基準更新書案(ASU案))】
(1)ASU案「ヘッジ会計の改善 - デリバティブとヘッジ(トピック815)」の公表(2019年11月12日 FASB)

2017年8月に公表されたASU第2017-12号「ヘッジ活動に関する会計処理の限定的改善」は、企業のリスク管理活動を財務報告により有効に反映することを目的としつつ複雑な会計処理の簡素化を図る形でヘッジ会計の改善を打ち出すものであった。しかしながら、その後の利害関係者との議論を通じて改訂内容の明確化等が必要であることが認識されたため、本ASU案において対応が提案されている。
提案の内容は主に以下の通りである。

  • キャッシュフロー・ヘッジにおけるヘッジ対象リスクの変更:キャッシュフロー・ヘッジの開始時点では、ヘッジ対象リスクの特定に不確実性が存在する場合がある。例えば、変動金利借入の実行を予定しており、金利の変動リスクを回避すべく先日付スタートの金利スワップを取り組んでヘッジ会計の適用を意図するが、予定される借入金の変動金利がTIBORベースかLIBORベースかがまだ確定していないような場合である。本ASU案は、ヘッジ会計適用上のヘッジ対象リスクは、ヘッジ対象予定取引にキャッシュフローの変動をもたらすリスクが何かについての企業の最善の見積りに基づくべきであるとしたうえで、「ヘッジ対象リスクがヘッジ指定時の想定とは異なった場合」と「予定取引が発生しない場合」とは異なることを説明、ヘッジ指定文書化における留意点や有効性の考え方、不確実性が解消された場合の会計処理などについて明確化を提案する。
  • 非金融商品に係る予定取引をヘッジ対象とする場合のリスク構成要素:ASU第2017-12号は、契約で特定されたリスク構成要素を非金融商品の購入・売却の予定取引においてヘッジ対象リスクに指定することを新たに認めたが、文書化などの適用上の留意点について、本ASU案はガイダンスの明確化を提案する。また、非金融商品の予定取引がデリバティブとして会計処理される場合について、これがヘッジ対象適格となる場合のガイダンスを追加することを提案する。
  • 外貨建負債性金融商品によるデュアルヘッジ:金利リスクに公正価値ヘッジを適用している外貨建負債性金融商品を同時に純投資ヘッジのヘッジ手段に指定する(デュアルヘッジ)場合について、純投資ヘッジの有効性評価の変更を提案する。すなわち、会計上のミスマッチの発生を避けるため、公正価値ヘッジの適用によって生じるヘッジ対象の帳簿価額調整(ベーシス調整)を、有効性の評価から除外することを提案する。

本ASU案は、すべての企業について2020年12月15日より後に開始する事業年度から適用することを提案している。早期適用はASU 第2017-12号を既に適用している、もしくは同時適用する場合にのみ認めることを提案している。その他移行措置についての定めを設けることも提案している。

コメントの締切りは2020年1月13日である。

(2)ASU案「ASCの改善」の公表(2019年11月26日 FASB)

ASU案は、ASC(会計基準編さん書)の内容を明確化し、想定していなかった形でガイダンスが適用されることが懸念される点などにつき誤謬を修正することによって改善することを目的として提案されており、会計実務に対する重要な変更や負担の増加をもたらすことは想定されていない。
本ASU案が提案する主な改訂点は以下のとおりである。

  • 基準書に含まれる財務会計概念書への不必要な参照の削除
  • 開示に関する規定を含めるべき基準書の区分の整理
  • その他

本ASU案による改訂の多くは実務に影響がなく、最終版が公表された時点で適用することが提案されている。移行に関するガイダンスが必要な改訂については、各改訂の事実と状況に応じて移行措置及び適用日が提案されている。FASBは関係者のフィードバックを待って検討し、最終化に先立って適用日を決定する予定である。

コメントの締切りは2019年12月26日である。

【あずさ監査法人の関連資料】Defining issues(英語)

【INFORMATION】
(1)ASU案「参照金利改革についての軽減措置」を最終化する暫定決定(2019年11月13日 FASB)

2019年9月に公表したASU案「参照金利改革についての軽減措置」(参考:会計・監査ダイジェスト2019年9月号)に対するコメントレターを検討し、同案の提案内容をほぼ踏襲する方向で最終化することを暫定決定した。当該ASU案は、参照金利改革(IBOR Reform)により発生する影響を会計処理することに伴う潜在的な負荷を軽減するため、一時的かつ任意に適用されるガイダンスを提供するものであり、関係者からのコメントを受けて追加的な手当てが一部追加されている。最終版のASUは、2020年の初めに公表される予定である。

米国基準についての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(米国基準)

 

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執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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