2024年11月号

1.企業会計基準委員会(ASBJ)、日本公認会計士協会(JICPA)及びサステナビリティ基準委員会(SSBJ)

【公開草案】

ASBJ:2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正(案)及び修正の公表

ASBJは、2024年11月21日に2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正(案)を公表しました。本公開草案には、以下の会計基準等の改正案が含まれています。

会計基準等 適用時期の提案概要

包括利益の表示に関する提案

  • 企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」
  • 企業会計基準適用指針第9号「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」

公表日以後最初に開始する年度の期首から適用する。

ただし、公表日以後最初に終了する年度の年度末から適用できる。

特別法人事業税の取扱いに関する提案

  • 企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」
  • 企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」

種類株式の取扱いに関する提案

  • 実務対応報告第10号「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」

(適用日以後取得する種類株式)

公表日以後最初に開始する年度の期首以後取得する種類株式について適用する。ただし、公表日以後最初に終了する年度の期首以後取得する種類株式について適用することができる。

(適用日より前に取得した種類株式)

適用日より前に取得した種類株式については、以下のいずれかを選択する。

  • 従前の取扱いを継続する。
  • 改正後の実務対応報告第10号を適用する。

なお、いずれの方法を選択した場合も、適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わない。

 

本改正(案)に対するコメントの募集期限は、2025年1月20日です。

また、ASBJは、2024年11月1日に2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の修正(会計処理及び開示に関する定めの内容を実質的に変更することなく、形式的に変更するもの)を公表しており、公表と同時に適用されています。修正の対象となる会計基準等については、下記リンク先のあずさ監査法人解説資料をご参照ください。

あずさ監査法人解説資料:ポイント解説(2024年12月5日)

 

SSBJ:公開草案「指標の報告のための算定期間に関する再提案」の公表

SSBJは、2024年11月29日に公開草案「指標の報告のための算定期間に関する再提案」を公表しました。

本公開草案は、指標の報告のための算定期間に関する論点について、2024年3月に公表した公開草案の内容を修正することを再提案するものです。

本公開草案の概要は以下のとおりです。

  • サステナビリティ関連財務開示の報告期間と、指標の報告のための算定期間が一致しない場合、当該指標については合理的な方法により期間調整を行い、サステナビリティ関連財務開示の報告期間に合わせることを明確化しています。
  • 温室効果ガス(GHG)排出量を「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく「温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度」により測定することを選択する場合でも、報告期間と、GHG排出量の算定期間が一致しないときは、合理的な方法により期間調整を行い、報告期間に係るGHG排出量を算定することとする。
  • 「期間調整のための合理的な方法」については、SSBJ基準においては具体的に定めず、解説記事で情報提供する。なお、本公開草案と併せて、SSBJ事務局より解説記事のドラフト「【参考資料】期間調整を行う場合の合理的な方法の例(案)」が公表されている。

2024年3月に公表した公開草案および本公開草案を踏まえた確定基準は、2025年3月末までに公表することを予定しています。

本公開草案に対するコメントの募集期限は、2025年1月10日です。

あずさ監査法人解説資料:ポイント解説(2024年12月6日)

2.東京証券取引所

【意見募集】

企業内容等の開示に関する内閣府令及び有価証券の取引等の規制に関する内閣府令の改正に伴う上場制度の見直しについて(パブリックコメントの開始)

東京証券取引所は、2024年11月20日に「企業内容等の開示に関する内閣府令及び有価証券の取引等の規制に関する内閣府令の改正に伴う上場制度の見直しについて」を公表しました。

本文書は、2023年12月に公布された「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」において、財務上の特約が付された金銭消費貸借契約又は社債に関して、新たに臨時報告書の提出が求められることとなったこと、及び2024年9月に公布された「有価証券の取引等の規制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」において、株式報酬としての株式発行等に係る決定がインサイダー取引規制上の「重要事実」から除外される基準が見直されたことを踏まえ、適時開示事由の追加を行うなど所要の上場制度の整備を行うことを提案するものです。

本文書で示された提案内容は、原則として、2025年4月1日から適用することが提案されています。

本パブリックコメントに対する意見募集は2024年12月20日まで実施されています。

3.金融庁

【改正案】

「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)の公表 について(政策保有株式の開示関係)

金融庁は、2024年11月26日に政策保有株式の開示に関する「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案を公表しました。

本改正案では、当期を含む最近5事業年度以内に政策保有目的から純投資目的に保有目的を変更した株式(当事業年度末において保有しているものに限る。)について開示すべき項目が定められるとともに、従前のパブリックコメントの回答内容等を踏まえ、「純投資目的」の考え方が企業内容等開示ガイドラインに明示されています。

改正後の規定は公布の日から施行予定とされているほか、改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の規定は、2025年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用予定となっています。

コメントの募集期限は、2024年12月26日です。

あずさ監査法人解説資料:ポイント解説(2024年11月29日)

 

【Information】

「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」の公表(サステナビリティに関する考え方及び取組の開示①)

2023年1月に改正された「企業内容等の開示に関する内閣府令」において、有価証券報告書等にサステナビリティに関する考え方及び取組の記載欄が新設されました。金融庁では本改正を踏まえ、どのような開示が投資判断にとって有益と考えられるのかについて、昨年に引き続き、投資家・アナリスト・有識者及び企業を構成員とする勉強会を開催し、検討を行っています。

2024年11月に公表された事例集では、サステナビリティに関する考え方及び取組の開示のうち、全般的要求事項及び個別テーマに関して議論された内容を踏まえて、具体的な事例とともに「投資家・アナリスト・有識者が期待する主な開示のポイント」及び「好事例として取り上げた企業の主な取組み」を掲載しています。

4.国際会計基準審議会(IASB)、IFRS解釈指針委員会(委員会)及び国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)

【公開草案】

「引当金ー的を絞った改善(IAS第37号の改訂)」

IASBは、2024年11月にIAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」に的を絞った改善に関する公開草案を公表しています。本公開草案は、IAS第37号関する要求事項のうち、以下の3つについて、的を絞った改善を提案するものです。

(a)    負債の定義及び引当金の認識要件の1つである「現在の義務」に関する要求事項を、2018年に改訂された「財務報告に関する概念フレームワーク」と整合させる

(b)    引当金の測定に関する以下の2つの点について修正を行う

    (i) 現在の義務を決済するために必要な将来の支出の見積りに含めるべき コストの範囲の明確化

    (ii) 将来の支出を現在価値に割り引くための割引率の明確化

IASBは、上記の「現在の義務」の要件に関する改訂提案を反映するため、IAS第37号に関する適用ガイダンス(以下、「本適用ガイダンス」)の改訂も提案しています。これに伴い、IFRIC解釈指針第21号「賦課金」を廃止し、IAS第37号の新たな要求事項と本適用ガイダンスに置き換えることを提案しています。これにより、IFRIC第21号に規定されている一部の引当金(閾値を基準とする義務等)の認識時期が変更される(早まる)可能性があります。

本公開草案では適用時期が示されておらず、本公開草案に基づいてIAS第37号の改訂がされた場合、その適用時期は本公開草案に寄せられたコメントを踏まえて決定されます。

本公開草案に対するコメントの募集期限は、2025年3月12日です。

あずさ監査法人解説資料:ポイント解説(2024年11月27日)

 

【Information】

サステナビリティ関連のリスク及び機会、並びに重要性がある情報の開示に関する教育文書の公開

ISSBは、2024年11月19日に「サステナビリティ関連のリスク及び機会、並びに重要性がある情報の開示」に関する教育文書を公表しました。

本教育文書では、IFRS S1「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」を適用する上での基本的な検討事項である、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会に関して、重要性がある情報を識別・開示するための包括的なガイダンスが示されています。

本教育文書は以下3つの章で構成され、設例を交えた解説が示されているほか、財務諸表とのつながり(Connectivity)に関する考慮事項や、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)やGRIスタンダード等、他の基準との相互運用可能性(Interoperability)に関する考慮事項が示されています。

第1章     重要性がある情報の定義と、そのISSB基準における適用

第2章     企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会と、そのISSB基準における適用

第3章     重要性がある情報の識別と開示

KPMG関連資料:Assessing materiality(英語)

5.欧州委員会(EC)

【FAQの公表】

「CSRDに関するFAQ(Commission Notice)」

欧州委員会は、2024年11月13日に「CSRDに関するFAQ(Commission Notice)」をEUの官報に掲載しました。本FAQは、EUにおける「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」に関して寄せられた質問に対して欧州委員会が回答を示した文書です。CSRDに基づいて実施されるサステナビリティ報告及び同報告に対する保証業務等のテーマに関連する90個の質問について回答が示されています。

KPMG関連資料:CSRDーYour questions answered?

6.米国財務会計基準審議会(FASB)

【最終基準(会計基準更新書(Accounting standards update; ASU))】

ASU第2024-03号「損益計算書ー包括利益の報告ー費用の分解開示(サブトピック220-40):損益計算書における費用の分解」

FASBは、2024年11月に下記5種類のコスト又は費用のいずれかを含む損益計算書上の費用科目(継続事業のみ)の金額それぞれについて、これらのコスト及び費用を表形式で分解して開示する注記を要求するASUを公表しました。本ASUは公開営利企業の年度及び期中財務諸表において適用されます。

(a)     棚卸資産の購入額(purchases of inventory)

(b)     従業員報酬(employee compensation)

(c)     減価償却費(depreciation)

(d)     無形資産の償却費(intangible asset amortization)

(e)     石油及びガスの生産活動において認識された減価償却費、減耗費及び償却費(depreciation、 depletion and amortization)(もしくは他の活動における減耗費(depletion)))

さらに、既存のUSGAAPの規定により開示が要求されている特定の費用や利得及び損失についても同表形式の開示において、独立した項目として開示することが求められます。

表形式で開示される金額の合計は、それぞれの「費用科目」の損益計算書上の金額と一致する必要があります。分解して開示されることが要求されない「その他」に分類される金額については、質的な説明を行うことが求められます。

また、上記の表形式の開示に加えて、継続事業において認識された販売費(selling expense)の合計額、及び企業による販売費の定義(年次のみ)の開示が要求されています。

本ASUは、すべての公開営利企業に対して、2026年12月15日より後に開始する事業年度及び2027年12月15日より後に開始する期中報告期間(その後のASU案により2027年12月15日より後に開始する事業年度の期中報告期間に修正される予定)から適用され、早期適用は認められています。企業は、適用日より後に開始する事業年度の財務諸表から将来に向かって適用するとされていますが、適用日より後に開始する事業年度の財務諸表に表示されるすべての比較期間の財務諸表について遡及適用することも認められています。

KPMG関連資料:Defining Issues(英語)

 

ASU第2024-04号「負債:転換権及びその他のオプション付き負債(サブトピック470-20):転換権付き負債性金融商品の誘因による転換」

FASBは、2024年11月に転換権付き負債性金融商品(特に、現金転換特性付き転換社債)が当初の契約条件とは異なる転換を促進する条件に従って決済される場合に、「誘因による転換」の会計処理モデルを適用すべきかを判断するための要件を明確化するASUを公表しました。「誘因による転換(induced conversions)」の会計処理モデルを適用できない決済は、一般的には決済に伴う損益への影響が大きくなる「負債の消滅」として会計処理されます。

 

本ASUでは、主に以下の事項が定められています。

  • 転換権付き負債性金融商品の決済を「誘引による転換」として会計処理するためには、転換促進オファー(inducement offer)に少なくとも既存の転換条件に従って発行されるべき対価(の形態と金額)が維持される必要があること
  • 対価に現金等が含まれる場合には、対価の形態と金額が維持されているかの評価は、オファー受諾の日の企業の株式の公正価値に基づいて評価すること(売買高加重平均単価(VWAP)の採用、削除または修正によって、自動的に「負債の消滅」として会計処理が要求されることはない)
  • オファー受諾の日から遡って1年以内に転換権付き負債性金融商品について(条件が実質的に異なるとみなされない範囲で)条件変更や交換が行われていた場合、転換促進オファーの条件はオファー受諾の日の1年前に存在した転換条件と比較すること
  • 現時点では転換可能ではない転換権付き負債性金融商品についても、発行日とオファー受諾の日の双方において実質的な転換特性が存在すれば、「誘因による転換」に関するガイダンスの適用が可能であること

本ASUは、2025年12月15日より後に開始する事業年度及びその期中報告期間から適用されます。適用に際しては、将来に向けて適用することとされていますが、遡及適用(完全遡及アプローチ)も認められます。ただし、ASU第2020-06号による現金転換特性付き転換社債に係る改訂の適用開始日より前に発生した決済に遡及適用することはできません。そのため、早期適用はASU第2020-06号による改訂を適用している企業のみに認められています。

 

【公開草案(会計基準更新書案(ASU案))】

ASU案「期中報告(トピック270):狭い範囲の改善」

FASBは、2024年11月にトピック270の記載が過去の改訂の積み重ねなどにより複雑となっており、各企業の状況に応じた要求事項を理解することが難しいという利害関係者からの見解を受けて、トピック270の理解しやすさを改善し、期中報告において要求される開示をより明確に示すことを意図した改訂を提案しています。

本ASU案では以下を目的とする改訂が提案されています。

  • 企業がUSGAAPに基づいて採用できる期中財務諸表及び注記の様式と内容(form and content)の選択肢を明確化する
  • 期中報告において要求される開示の包括的なリストを追加する(現行の期中開示を拡張又は縮小するものではない)
  • (上記のリストに明記されていない事項について開示すべきか否かの判断に資することを意図して)直近の年度の報告期間の末日以降に発生した事象及び変化のうち企業に重要な影響を及ぼすものを開示するという期中報告における開示の原則を導入する

本ASU案は、適用開始日より後に発行される期中財務諸表に対して将来に向けて適用することが提案されています。なお、本ASU案に基づく改訂の発効日及び早期適用が認められるかは、本ASU案に寄せられるコメントを踏まえて決定されます。

 

コメントの募集期限は、2025年3月31日です。

KPMG関連資料:Defining Issues(英語)

 

ASU案「政府補助金(トピック832):営利企業による政府補助金の会計」

FASBは、2024年11月に企業が受け取る政府補助金の認識、測定、表示に関する規定を新たに設けるASU案を公表しました。

本ASU案では、主に以下の事項を提案しています。

  • 主に適用範囲と認識要件について限定的な修正を行ったうえで、国際財務報告基準(IFRS)の規定(IAS第20号「政府補助金の会計処理及び政府援助の開示」)の主要な定めを導入する
  • 政府補助金を、政府から営利企業への貨幣性資産もしくは非貨幣性の有形資産の移転(交換取引を除く)と定義する(適用範囲)
  • 企業が補助金の付帯条件を遵守し、補助金を受領する可能性が相当程度高い(probable)場合に補助金を認識する(認識要件)

また、本ASU案により、これまで政府援助の開示を定めていた現行のトピック832の名称が「政府援助(Government assistance)」から「政府補助金(Government grants)」に変更されます。なお、現行の開示規定は維持されます。

本ASU案は、適用日時点ですべての補助金収入が認識されていない政府補助金もしくは適用日より後に取り決められた補助金に対する将来に向けての適用と遡及適用(完全遡及アプローチ)をどちらも認めることが提案されています。なお、本ASU案に基づく改訂の適用開始日及び早期適用が認められるかは、本ASU案に寄せられるコメントを踏まえて決定されます。

コメントの募集期限は、2025年3月31日です。

KPMG関連資料:Defining Issues(英語)

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計・開示プラクティス部

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