2025年3月号
1.企業会計基準委員会(ASBJ)、日本公認会計士協会(JICPA)及びサステナビリティ基準委員会(SSBJ)
【最終基準】
ASBJ:2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正の公表
ASBJは、2025年3月11日に2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正を公表しました。本改正には、以下の会計基準等の改正が含まれています。
会計基準等 | 適用時期 |
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包括利益の表示に関する改正
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2025年4月1日以後最初に開始する年度の期首から適用する。 ただし、2025年3月31日以後最初に終了する年度の年度末から早期適用できる。早期適用する場合であっても、2025年3月31日以後最初に終了する年度に係る期中財務諸表については適用しない。 |
特別法人事業税の取扱いに関する改正
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種類株式の取扱いに関する改正
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2025年4月1日以後最初に開始する年度の期首以後取得する種類株式について適用する。ただし、適用初年度の期首より前に取得した種類株式のうち、適用初年度の前年度の年度末において保有する種類株式について早期適用できる。 |
なお、ASBJは、上記とは別に、2024年11月1日に2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の修正(会計処理及び開示に関する定めの内容を実質的に変更することなく、形式的に変更するもの)を公表しており、公表と同時に適用されています。修正の対象となる会計基準等については、下記リンク先のあずさ監査法人解説資料をご参照ください。
あずさ監査法人解説資料:ポイント解説(2025年3月19日)
ASBJは2025年3月11日、組合等への出資に係る会計処理及び開示に関して、改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「本改正実務指針」という。)を公表しました。
本改正実務指針により、以下の要件を満たす組合等への出資について当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者の子会社株式及び関連会社株式を除く)を時価評価し、当該組合等への出資者の会計処理の基礎とすることが認められます。時価評価を行う場合、評価差額の持分相当額は純資産の部に計上します。
- 組合等の運営者は出資された財産の運用を業としている者であること
- 組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していること
上記会計処理を適用するかどうかは企業の方針に基づき、各組合等への出資時に決定し、出資後の取消しはできません。また、上記取扱いの対象とした市場価格のない株式は時価のある有価証券の減損処理に関する定めに従った減損処理を行うこととされています。
適用時期は、2026年4月1日以後開始する年度の期首からとし、2025年4月1日以後開始する年度の期首からの早期適用が認められます。また、適用初年度の経過措置が設けられています。
あずさ監査法人解説資料:ポイント解説(2025年3月19日)
サステナビリティ基準委員会(SSBJ)がサステナビリティ開示基準を公表
2025年3月5日、SSBJは、サステナビリティ開示基準(以下、「SSBJ基準」という。)を公表しました。
SSBJ基準は、以下の3つの基準により構成されています。
- サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」
- サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」
- サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」
【SSBJ基準の概要】
- SSBJ基準は、プライム上場企業が適用すること、また、SSBJ基準に基づく開示が有価証券報告書に含められることを想定して基準が開発されています。
- 国際的な比較可能性の確保のため、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が公表するIFRS®サステナビリティ開示基準(以下、「ISSBTM基準」という。)の要求事項を基本的にすべて取り入れています。そのうえで、一部、ISSB基準の要求事項に代えてSSBJ基準独自の取扱いを認める容認規定があるほか、SSBJ基準独自の追加開示を求める定めもあります。
- 開示すべき項目は、「ガバナンス」・「戦略」・「リスク管理」・「指標及び目標」の4つの要素ごとに定められています。
【公開草案からの主な変更点】
指標の算定期間とサステナビリティ関連財務開示(及び関連する財務諸表)の報告期間が一致しない場合、報告期間に合わせることが要求される点が、公開草案から変更されています。
【適用時期】
SSBJ基準には、強制適用時期の定めはありません。強制適用時期及び適用対象企業等については、金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」における議論に基づき、今後、金融庁が法令において定める予定です。
なお、公表日以後終了する年次報告期間から、任意適用が可能となります。
【企業の実務に与える影響】
SSBJ基準に準拠してサステナビリティ情報の開示を行う場合、情報の作成プロセスや時期等について、企業の実務に広範な影響が生じる可能性があります。
あずさ監査法人解説資料:ポイント解説(2025年3月17日)
【公開草案】
「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い(案)」の公表
ASBJは2025年3月11日に、実務対応報告公開草案第70号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い(案)」を公表しました。
ASBJは、本公開草案で⾮化⽯価値の特定の購⼊取引における需要家の会計処理に関し、主に需要家による非化石価値の購入取引の性質の整理を踏まえた実務上の取扱い(会計処理)を提案しています。
本公開草案では、2026年4月1日以後最初に開始する年度の期⾸からの適用開始を想定し、早期適用も認められることが提案されています。なお、適用初年度の期首において非化石価値を受け取る権利を有しており、金額を合理的に見積ることができるものについては、当該金額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減することが提案されています。
コメントの募集期限は、2025年5月30日です。
あずさ監査法人解説資料:ポイント解説(2025年3月24日)
【Information】
SSBJは、ISSB基準に関する付属ガイダンス及び教育的資料のうちISSB基準の適用において参考となるものについて、SSBJ基準の適用にあたり参考にできるよう、SSBJ基準を構成しない補足文書として公表することとしています。
2025年3月27日、SSBJは、以下の補足文書を公表しました。
- 補足文書「IFRS S1号『サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項』に関する付属ガイダンス」
- 補足文書「IFRS S2号『気候関連開示』に関する付属ガイダンス」
- 補足文書「教育的資料『気候関連のリスク及び機会の自然及び社会的側面』」
- 補足文書「教育的資料『IFRS S1号における要求事項を満たすための『SASBスタンダード』の使用』」
- 補足文書「教育的資料『現在の及び予想される財務的影響』」パート1、パート2
- 補足文書「教育的資料『サステナビリティ関連のリスク及び機会、並びに重要性がある情報の開示』」
- 補足文書「教育的資料『IFRSサステナビリティ開示基準におけるプロポーショナリティのメカニズム』」
SSBJでは、SSBJのサステナビリティ開示基準を利用する関係者のニーズが高い論点に関してSSBJ事務局が作成する解説資料を、SSBJハンドブックとして公表することとしています。当該ハンドブックは、SSBJの審議を経ずに公表され、SSBJ基準を構成しないため、その内容に従わない場合であってもSSBJ基準に準拠している旨を表明することができるとしています。
SSBJは、2025年3月31日にSSBJハンドブックとして、以下の文書を公表しました。
- SSBJ基準用語集
- 2024年3月公開草案からの主な変更点
- 報告企業としてサステナビリティ関連財務情報を収集する範囲
- 追加的な情報
- バリュー・チェーンの範囲の決定
- 連結財務諸表に含まれる子会社の財務情報の報告期間と報告企業のサステナビリティ関連財務開示の報告期間が異なる場合
- 法令に基づき報告する指標の算定期間がサステナビリティ関連財務開示の報告期間と異なる場合
- 期間調整を行う場合の合理的な方法の例
- サステナビリティ関連財務開示の公表承認日
- 日本基準で財務諸表を作成する場合の後発事象と財務情報のつながり
- スコープ3温室効果ガス排出の報告と重要性
SSBJは、2025年3月31日、SSBJ基準がISSB基準とどれだけ整合しているのか、また、ISSB基準とSSBJ基準の各パラグラフの対応関係を理解するのに資する資料として、以下の2つの資料を公表しました。
- SSBJ基準とISSB基準の差異の一覧
- SSBJ基準とISSB基準の項番対照表
2.東京証券取引所
【Information】
2022年4月に実施された市場区分の見直しの際、従来の市場区分の上場維持基準から一部基準が厳格化されたことを踏まえ、市場区分の見直し前から上場している会社で、見直し後の上場維持基準の未達企業に対して適用されてきた経過措置が終了となりました。
これにより、2025年3月1日以後に到来する基準日からは、すべての上場会社に対して見直し後の上場維持基準が適用されることになります。なお、上場維持基準に適合しない状態となった場合には、原則として1年の改善期間に入り、改善期間内に基準に適合しない場合には、監理銘柄・整理銘柄に指定後、上場廃止となります。
また、東証は2025年4月2日に、次回の「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」において、グロース市場における上場維持基準の見直し(案)を議論するとしています。
3.金融庁
【改正】
「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの結果等について(リース関係)
2025年3月24日、金融庁は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの結果等を公表しました。
本改正は、企業会計基準委員会(ASBJ)より、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等が公表されたことを受け、表示や注記事項等について、所要の改正を行うものです。
本改正は公布の日から施行されます。ただし、改正後の規定は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度等(連結会計年度又は中間連結会計期間)に係る連結財務諸表又は第1種中間連結財務諸表若しくは第2種中間連結財務諸表及び事業年度等(事業年度又は中間会計期間)に係る財務諸表又は第1種中間財務諸表若しくは第2種中間財務諸表に適用され、同日前に開始する連結会計年度等に係る連結財務諸表等及び事業年度等に係る財務諸表等については、なお従前の例によるとされています。
なお、2025年4月1日以後に開始する連結会計年度等及び事業年度等から適用することができます。また、適用初年度の比較年度については遡及適用をせず、従前の例によることができるとされています。
本改正に係る内閣府令等の公布・施行日は2025年3月24日です。
あずさ監査法人解説資料:ウェブサイト掲載記事(2025年3月31日)
「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの結果等について(特別法人事業税関係)
2025年3月31日、金融庁は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの結果等を公表しました。特段の意見はなく、2024年12月27日に公表された改正案の内容から変更はありません。
本改正では、企業会計基準委員会(ASBJ)より公表されている改正企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」の内容を受けて、特別法人事業税については事業税(所得割)と同様の取扱いとすることとなりました。
本改正に係る内閣府令等の公布・施行日は2025年3月31日です。
あずさ監査法人解説資料:ウェブサイト掲載記事(2025年4月2日)
【Information】
金融庁は、どのような開示が投資判断にとって有益と考えられるのかについて、昨年に引き続き、投資家・アナリスト・有識者及び企業を構成員とする勉強会を開催しており、段階的に好事例集を公表しています。
その最終版として2025年3月24日に、「経営上の重要な契約等」、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析(MD&A)」に関する開示例、及び中堅中小上場企業の開示例が公表されました。
あずさ監査法人解説資料:ウェブサイト掲載記事(2025年3月28日)
2025年3月28日、金融庁は、「株主総会前の適切な情報提供について(要請)」(以下、要請文)を公表し、加藤金融担当大臣名で、全上場会社に対し、株主総会前の有価証券報告書開示(以下、「総会前開示」という。)について、今年からの実施を要請しました。
要請文では、総会前開示は株主総会の3週間前が最も望ましいとしたうえで、その第一歩として、今年から株主総会の前日ないし数日前の有価証券報告書提出の検討を要請しています。あわせて、2025年3月期以降の有価証券報告書の提出状況について実態把握を行い、有価証券報告書レビューの重点テーマ審査において総会前開示を実施しなかった場合の調査を行うとしています。
また、同日に金融庁は、有価証券報告書の開示と株主総会の開催状況、総会前開示の実現方法、総会前開示を行うに当たっての留意点等の情報を掲載した、有価証券報告書の定時株主総会前の開示に関する紹介ページを開設しています。
あずさ監査法人解説資料:ウェブサイト掲載記事(2025年3月31日)
4.法務省
【改正】
「会社計算規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集の結果について
法務省は、2025年3月31日、企業会計基準委員会による企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」の公表等を受けた「会社計算規則の一部を改正する省令」(以下「本省令」という。)を公布しました。本省令では、定義規定等に対する所要の修正、リースに関する注記において注記すべき事項等に関する改正が行われていますが、本省令案に関する意見募集の結果、会社計算規則第108条の注記について、有価証券報告書提出会社以外の株式会社は注記を要しないとされる等の修正が追加されています。
本省令は、公布の日から施行されます。ただし、2027年4月1日以後開始する事業年度に係る計算書類及び連結計算書類について適用し、同日前に開始する事業年度に係るものについては、従前の例によることとされています。また、早期適用や会計方針の変更の注記についての経過措置に関する規定も設けられています。
あずさ監査法人解説資料:ウェブサイト掲載記事(2025年4月2日)
5.欧州委員会(EC)
今月、特にお知らせする事項はありません。
6.国際会計基準審議会(IASB)、IFRS解釈指針委員会(委員会)及び国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)
今月、特にお知らせする事項はありません。
7.米国財務会計基準審議会(FASB)
今月、特にお知らせする事項はありません。
執筆者
有限責任 あずさ監査法人
会計・開示プラクティス部
バックナンバー
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