2024年3月号

1.企業会計基準委員会(ASBJ)、日本公認会計士協会(JICPA)及びサステナビリティ基準委員会(SSBJ)

【最終基準】

改正企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」等の公表

会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」の改正及び「公開草案に対するコメントの概要及び対応」について

本適用指針等は、2023年度税制改正において、完全子会社株式の現物分配の際に一部持分(20%未満)を残すパーシャルスピンオフが一定の要件を満たす場合も適格組織再編となる特例措置が加えられたことを受けて、保有する完全子会社株式を株式数に応じて比例的に配当し子会社株式に該当しなくなった場合の現物配当実施会社における会計処理の取扱いを示すことを目的として公表されました。本適用指針等では、以下の3つの論点に関する会計処理が定められています。

  • 子会社株式の一部を現物配当実施会社の株主に現物配当する場合の、現物配当実施会社の個別財務諸表上の取扱い
  • 子会社株式の一部を現物配当実施会社の株主に現物配当する場合の、現物配当実施会社の連結財務諸表上の取扱い
  • 配当対象となる子会社株式に関する連結税効果の取扱い

本適用指針等は公表日(2024年3月22日)以後適用されます。また、本適用指針適用日前に行われた保有する完全子会社株式の一部を株式数に応じて比例的に配当し子会社株式に該当しなくなる取引並びに本実務指針適用日前に行われた保有する完全子会社株式の一部を株式数に応じて比例的に配当し子会社株式に該当しなくなる取引及び保有する子会社株式のすべてを株式数に応じて比例的に配当する取引については、適用日において会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わないこととされています。

あずさ監査法人解説資料:ポイント解説速報(2024年4月8日)


【最終基準】

実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」等の公表

本実務対応報告は、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等(当期税金)の会計処理及び開示に関する取扱いを示すことを目的として公表されました。また、本実務対応報告を適用する場合の実務に資する情報提供を目的として、補足文書「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等に関する見積りについて」が公表されています。

本実務対応報告では、当該法人税等の計上時期及び見積りの取扱い、貸借対照表及び損益計算書における表示及び注記、四半期財務諸表及び中間財務諸表における取扱い及び注記について規定されています。本実務対応報告は、2024年4月1日以降開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。

なお、四半期財務諸表及び中間財務諸表における注記の定めについては、上記に関わらず、2025年4月1日以降開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。

あずさ監査法人解説資料:ポイント解説速報(2024年3月29日)


【最終基準】

改正実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱い」の公表

本実務対応報告では、グローバル・ミニマム課税制度における所得合算ルール(Income Inclusion Rule(IIR))に係る取扱いのみならず、今後の税制改正により法制化される予定の軽課税所得ルール(Undertaxed Profits Rule(UTPR))及び国内ミニマム課税(Qualified Domestic Minimum Top-up Tax(QDMTT))等の取扱いも含めて、国際的な動向等に変化が生じない限り、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」の定めにかかわらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないこととする当面の取扱いを継続することとされています。

また、上記取扱いは、四半期決算並びに中間決算においても適用することとされています。

本実務対応報告は、公表日(2024年3月22日)以後適用されます。

あずさ監査法人解説資料:ポイント解説速報(2024年3月29日)


【最終基準】

企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」等の公表

本会計基準等は、改正後の金融商品取引法に従って新たに半期報告書において開示される中間財務諸表に係る会計処理及び開示を定めており、基本的な方針として、企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」の会計処理及び開示を引き継ぐこととしています。また、この方針の下、四半期決算の会計期間(3ヵ月)と中間会計期間(6ヵ月)の相違により会計処理に差異が生じる可能性がある特定の項目について、従来の四半期での実務が継続して適用可能であるとされています。

本会計基準等は、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)の附則第3条に基づき、改正後の金融商品取引法第24条の5第1項の規定による半期報告書の提出が求められる最初の中間会計期間から適用されます。

あずさ監査法人解説資料:ポイント解説速報(2024年4月2日)


【公開草案】

サステナビリティ開示基準公開草案

2024年3月29日、SSBJは日本において適用されるサステナビリティ開示基準の公開草案を公表しました。

本公開草案は、以下の3つのサステナビリティ開示基準案で構成されています。

  • サステナビリティ開示ユニバーサル基準公開草案「サステナビリティ開示基準の適用(案)」
  • サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第1号「一般開示基準(案)」
  • サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第2号「気候関連開示基準(案)」

基準案の特徴は以下のとおりです。

  • プライム上場企業が適用すること、また、SSBJ基準案に基づく開示が有価証券報告書に含められることを想定して、基準の開発が行われています。
  • 国際的な比較可能性の確保のため、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が公表するIFRS®サステナビリティ開示基準(以下、「ISSB™基準」という)の要求事項を基本的にすべて取り入れています。そのうえで、一部の定めについては、ISSB基準の要求事項に代えて、SSBJ基準独自の取扱いを選択することを認めており、また、一部の定めについてはISSB基準に追加して要求しています。

公開草案に対するコメントの締切りは、2024年7月31日です。

あずさ監査法人解説資料(会員サイト):KPMGジャパン Insight Plus

2. 東京証券取引所

【改正】

金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直し等に係る有価証券上場規程等の一部改正について

金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直しに関する上場制度の見直し等について

2024年3月28日、東京証券取引所は「金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直し等に係る有価証券上場規程等の一部改正について」等を公表しました。

本改正の主な内容は以下のとおりです。

(1)第1・第3四半期決算短信の取扱い
(2)第2四半期・通期決算短信の取扱い
(3)上場規則の実効性の確保

本改正は、改正金商法の施行日(2024年4月1日)から施行されます。上記(1)「第1・第3四半期決算短信の取扱い」については、2024年4月1日以後に開始する四半期会計期間に係る第1・第3四半期決算短信から適用されます。

あずさ監査法人解説資料:ポイント解説速報(2024年4月4日)

3. 金融庁

【改正】

「令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令」等の公表

2024年3月27日、金融庁は「令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令」等を公表しました。本改正等の主な内容は以下のとおりです。

  • 上場会社等が提出する半期報告書に関する規定の整備
  • 半期報告書に含まれる中間(連結)財務諸表に関する規定の整備

本改正等は、2024年4月1日から施行・適用されます。なお、改正後の規定のうち、有価証券報告書等の様式に係る規定の適用については、別途の定めがあります。

あずさ監査法人解説資料:ポイント解説速報(2024年4月1日)


【改正】

「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件」等の公表

2024年3月29日、金融庁は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件」等を公表しました。改正の概要は以下のとおりであり、2024年2月8日に公表された改正案からの変更点はありません。

1.一般に公正妥当と認められる企業会計の基準の指定について

・追加:企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」
・削除:企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」

2.指定国際会計基準の指定について
3.財務諸表等規則等の改正に伴う改正について

本改正は、2024年4月1日から施行されます。

あずさ監査法人解説資料:ポイント解説速報(2024年4月1日)


【Information】

「記述情報の開示の好事例集2023」の更新

2023年1月に改正された「企業内容等の開示に関する開示府令」において、有価証券報告書等にサステナビリティに関する考え方及び取組の記載欄が新設され、どのような開示が投資判断にとって有益と考えられるかについて、投資家・アナリスト・有識者及び企業を構成員とする勉強会で検討が行われました。2023年12月27日に公表された本事例集では、勉強会で議論された内容を踏まえて、「投資家・アナリスト・有識者が期待する主な開示のポイント」及び「好事例として取り上げた企業の主な取組み」を掲載しています。今般、新たに「コーポレート・ガバナンスの状況等」及び「経営上の重要な契約等」に関する開示の好事例や、「投資家・アナリスト・有識者が期待する開示を充実化されるための取組み」「中堅中小上場企業の開示例」が追加されています。

あずさ監査法人解説資料:ポイント解説速報(2024年3月12日)


【Information】

有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項等(サステナビリティ開示等の課題対応にあたって参考となる開示例集を含む)及び有価証券報告書レビューの実施について(令和6年度)

金融庁は2024年3月29日に、「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項等(サステナビリティ開示等の課題対応にあたって参考となる開示例集を含む)及び有価証券報告書レビューの実施について(令和6年度)」を公表しました。主な内容は以下のとおりです。

  • 前年度の有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項
  • 識別された課題への対応にあたり、参考となる開示例集
  • 2024年3月期以降の事業年度に係る有価証券報告書のレビュー(審査)の実施概要

(法令改正関係審査)
・2023年1月に施行された企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(「従業員の状況」における女性管理職比率並びに「コーポレート・ガバナンスの状況等」における取締役会・監査役会等の活動状況及び政策保有株式に関連した開示を含む。)

(重点テーマ審査)
・サステナビリティに関する企業の取組の開示

あずさ監査法人解説資料:ポイント解説速報(2024年4月9日)

4. 法務省

今月、特にお知らせする事項はありません。

5. 国際会計基準審議会(IASB)、IFRS解釈指針委員会(委員会)及び国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)

【公開草案】

公開草案「企業結合 - 開示、のれん及び減損」

本公開草案は、企業が企業結合に関する有用な情報を合理的なコストで提供し、その情報により財務諸表の利用者が当該企業結合のパフォーマンスを直接評価できるようにすることを目的として、主として以下の点を中心に、IFRS第3号「企業結合」の開示要求事項の改訂を提案しています。

  • 企業結合により期待されるシナジーに関する情報開示の追加
  • 戦略的企業結合に関する情報開示の追加

また、主として減損損失の認識タイミングが時に遅すぎるのではないかとの指摘や、減損テストのコストや複雑さに関する懸念に対応するため、主に以下の点につき、IAS第36号「資産の減損」の改訂を提案しています。

  • のれんのCGU又はCGUグループへの配分方法に関するガイダンスの追加
  • のれんが配分されたCGUがどの報告セグメントに含まれるのかの開示の追加
  • 使用価値の算定方法の改訂

公開草案に対するコメントの締切りは、2024年7月15日です。

あずさ監査法人解説資料:ポイント解説速報(2024年4月5日)

6.米国財務会計基準審議会(FASB)

【最終基準(会計基準更新書(Accounting standards update; ASU))】

ASU第2024-01号「報酬 - 株式に基づく報酬(トピック718)」

本ASUは、従業員への報酬として利益持分及び類似の報奨(利益持分型報奨(Profits interest awards))を提供している企業に対して、利益持分型報奨が「報酬 - 株式に基づく報酬(トピック718)」の適用範囲に含まれるか、あるいは現金賞与や利益分配型の報酬と同様に「報酬 - 全般(トピック710)」又は他の基準に従って処理されるかを判断するためのガイダンスを提供する4つの例示を提供しています。

本ASUは、2024年12月16日以降開始する事業年度(非公開企業においては2025年12月16日以降開始する事業年度)から将来に向かって適用され、早期適用が認められています。

KPMG関連資料:Defining Issues(英語)

7.米国証券取引委員会(SEC)

【最終規則】

気候変動開示の最終規則の公表

SECは2024年3月6日に、気候関連開示に関する最終規則を採択しました。

本規則は、非財務情報及び財務情報において気候関連開示を要求するものです。本規則の主な開示要求事項は以下の通りです。

(非財務情報)

  • ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標に関する情報
  • スコープ1、2のGHG排出量に関する情報(Large Accelerated Filer又はAccelerated Filerに該当し、重要性がある場合)(※)
  • 気候関連リスクの緩和や適応のための活動において発生した重要な支出額、及び移行計画等によって直接生じると評価した財務上の見積りや仮定に対する重要な影響について、定量的及び定性的な情報

(※)2029年度以降段階的に、保証業務提供者による限定的保証業務を受けることが求められる。なお、Large Accelerated Filerに該当する企業は、2033年度から合理的保証業務を受けることが求められる。

(財務情報)
財務諸表の注記による以下に関する開示

  • 深刻な天候事象及びその他の自然条件を踏まえて費用又は損失計上された支出額及び関連する回収額(例:保険金受領額)
  • カーボンオフセット及び再生可能エネルギークレジット・証書
  • 深刻な天候事象及びその他の自然条件に関するリスクや不確実性又は知られることになった影響、もしくは企業が開示した気候関連の目標や移行計画によって重要な影響を受けた見積り及び仮定

本規則は、開示要求を企業の規模及び開示情報の内容等に応じて、2025年開始会計年度以降、段階的に適用することとされています。

KPMG関連資料:SEC on Climate(英語)

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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