必見!IFRS 18実践ポイント 第3回 純損益計算書における新たな3つの区分

IFRS適用企業はIFRS第18号の適用に向け検討を進めています。本解説シリーズではIFRS第18号の主な留意点を紹介します。第3回目の本稿では、IFRS第18号で新しく導入された3つの区分(営業区分、投資区分、財務区分)について解説します。

IFRS適用企業はIFRS第18号の適用に向け検討を進めています。本解説シリーズではIFRS第18号の主な留意点を紹介します。第3回目の本稿では、IFRS第18号で新しく導入された

IFRS適用企業では、2024年4月に国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」の適用に向けて、検討が進み始めています。IFRS第18号は、2027年1月1日以後開始する事業年度から適用され、早期適用も認められます。本解説シリーズでは、「IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」を参照し、IFRS第18号の主な留意点を紹介していきます。

第3回目の本稿では、IFRS第18号で新しく導入された3つの区分(営業区分、投資区分、財務区分)について解説します。

Q-1:営業区分にはどのような収益及び費用が含まれますか?

A:営業区分(つまり、営業利益)には、通常、企業の主要な事業活動からの収益及び費用が含まれます。(IFRS18.B42)。

ただし、営業区分に含まれる収益及び費用は、企業の主要な事業活動から生じた収益及び費用だけに限定されるわけではありません。IFRS第18号では、その他の区分(投資、財務、法人所得税または非継続事業)に分類されないすべての収益及び費用を営業区分に分類することが求められます。したがって、変動性が高い、通例でない、または経常的でない収益及び費用であっても、営業区分に分類されます(IFRS18.B42, BC89)。

なお、「特定の主要な事業活動」を有する企業(例: 銀行、保険会社や投資不動産会社)は、「特定の主要な事業活動」がなければ投資または財務区分に分類されていたであろう一部の収益及び費用を、営業区分に分類します(第2回 特定の主要な事業活動の評価方法参照)。

IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」のセクション2.1.2.1では、営業区分に含まれる収益及び費用の具体例を紹介しています。

Q-2:投資区分にはどのような収益及び費用が含まれますか?

A:IFRS第18号は、企業が次の「非営業資産」から生じる特定の収益及び費用を投資区分に分類することを要求しています(IFRS18.53, B43-B46)。

  • 関連会社、共同支配企業及び非連結子会社に対する投資
  • 現金及び現金同等物
  • その他の「非営業資産」(例:負債性投資又は資本性投資、投資不動産、及び当該不動産が生み出す賃料に係る債権)

図表1は、資産から生じる収益及び費用がどのように営業区分または投資区分に分類されるかを、資産の種類別に要約したものです。

図表1 資産から生じる収益及び費用

第3回 純損益計算書における新たな3つの区分図表01

図表1に示されるように、持分法を用いて会計処理される投資から生じる収益及び費用は、たとえ企業が特定の主要な事業活動として投資している場合でも、常に投資区分に分類されます(IFRS18.55(a))。それ以外の「非営業資産」から生じる収益及び費用は、特定の主要な事業活動から生じるものかどうかを判断した上で、投資区分か営業区分に分類されることになります(IFRS18.54-58)。

なお、「非営業資産」から生じるすべての収益及び費用を投資区分に分類することは実務上の負担が大きいことから、IFRS第18号では「非営業資産」から生じる特定の収益及び費用のみを投資区分に分類するように要求しています(IFRS18.BC109)。

IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」のセクション2.1.2.2では、投資区分に含まれる収益及び費用の具体例を紹介しています。

Q-3:財務区分にはどのような収益及び費用が含まれますか?

A:IFRS第18号は、企業が以下の負債から生じる特定の収益及び費用を財務区分に分類することを要求します。(IFRS18.59)。

  • 資金の調達のみを伴う取引から生じる負債(以下「資金調達負債」という)
  • 資金の調達のみを伴うものではない取引から生じる負債(以下「その他の負債」という)

資金調達負債が生じる取引は、以下が該当します(IFRS18.B50)。

  • 現金等でファイナンスを受ける
  • 後日、交換として現金等を引き渡す

資金調達負債以外の負債は、その他の負債に分類されることになります(IFRS18.59)。

例えば、借入契約のように、企業が現金を受け取り、後日に元利金を返済する場合、その取引は資金調達のみを伴う取引であり、借入金は「資金調達負債」に分類されます。一方、リース契約のように、企業が現金ではなく、使用権資産を受け取る場合、その取引は資金調達のみを伴うものではない取引であり、リース負債は「その他の負債」に分類されます(IFRS18.B50-B51, B53)。

図表2は、負債から生じる収益及び費用をどのように営業区分または財務区分に分類するかを負債の種類別に要約したものです。

図表2 負債から生じる収益及び費用

第3回 純損益計算書における新たな3つの区分図表02

図表2に示されるように、「資金調達負債」から生じる収益及び費用は、顧客へのファイナンスの提供(特定の主要な事業活動)に関連するかどうか判断した上で、財務区分または営業区分に分類されます。ここでは、「資金調達負債」から生じるすべての収益及び費用が対象となります(IFRS18.60, 65(a))。

「その他の負債」については、特定の主要な事業活動から生じるものかどうかにかかわらず、利息収益及び利息費用(ならびに金利の変動から生じた収益及び費用)が財務区分に分類され、その他の収益及び費用は、営業区分に分類されます。(IFRS18.61, 65(b))。

IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」のセクション2.1.2.3では、財務区分に含まれる収益及び費用の具体例を紹介しています。

第3回の解説は以上となります。

IFRS第18号の考え方について、詳しく知りたい方はIFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」をご覧ください。

第4回では、特定の主要な事業活動を有する企業の収益及び費用の分類について解説します。

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