必見!IFRS 18実践ポイント 第2回 特定の主要な事業活動の評価方法

IFRS適用企業はIFRS第18号の適用に向け検討を進めています。本解説シリーズではIFRS第18号の主な留意点を紹介します。 第2回目の本稿では、「特定の主要な事業活動」を有する企業について解説します。

IFRS適用企業はIFRS第18号の適用に向け検討を進めています。本解説シリーズではIFRS第18号の主な留意点を紹介します。 第2回目の本稿では、「特定の主要な事業活動」を有する

IFRS適用企業では、2024年4月に国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」の適用に向けて、検討が進み始めています。IFRS第18号は、2027年1月1日以後開始する事業年度から適用され、早期適用も認められます。本解説シリーズでは、「IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」を参照し、IFRS第18号の主な留意点を紹介していきます。

第2回目の本稿では、「特定の主要な事業活動」を有する企業について解説します。

Q-1:「特定の主要な事業活動」とは何ですか?

A:「特定の主要な事業活動」は、「特定の種類の資産への投資」(以下、「資産への投資」という)及び「顧客へのファイナンスの提供」を指します。IFRS第18号の大前提は、営業利益が企業の営業活動の全体像を示すことです。そのために、これらが企業の主要な事業活動であるかどうかを判定する必要があります(IFRS18.49)。

「特定の主要な事業活動」を有する企業(例:銀行、保険会社や投資不動産会社)は、「特定の主要な事業活動」がなければ投資または財務区分に分類されていたであろう一部の収益及び費用を、営業区分に分類します(IFRS18.50)。

企業が複数の主要な事業活動を有する場合もあります。例えば、製品を製造するとともに顧客にファイナンスも提供する企業は、製造活動と顧客へのファイナンスを提供する活動の両方が主要な事業活動であると判断する場合があります(IFRS18.B30)。

Q-2:「特定の主要な事業活動」を有するかどうかについて、どのように評価しますか?

A:企業が、売上総利益に類似した小計を営業業績の重要な指標として用いている場合、資産への投資または顧客へのファイナンスの提供が企業の主要な事業活動である可能性が高いとされています(IFRS18.B34)。また、セグメントに関する情報が、企業が特定の主要な事業活動を有しているかを評価する際の考慮事項になる場合があります(IFRS18.B36)。

売上総利益に類似した小計の例示(IFRS18.B123)
(a)正味利息収益
(b)正味報酬及び手数料収益
(c)保険サービス損益
(d)正味金融損益(投資収益から保険金融収益及び費用を差し引いたもの)
(e)正味賃貸収益

特定の主要な事業活動に該当するか否かは、単なる主張ではなく、企業の個々の事実と状況に基づく判断が求められ、証拠によって裏付けられる必要があります(IFRS18.B33)。

企業の評価を裏付ける証拠の例として、以下が挙げられます。

  • 営業業績の社外向け説明、または社内評価・モニタリングに使用する小計(IFRS18.B35)

例えば、投資不動産からの賃貸収益を含む売上総利益に類似した小計を用いて、企業が営業業績を投資家に説明する場合、その小計は企業の営業業績の重要な指標であるという証拠になります。この場合、不動産への投資が企業の主要な事業活動である可能性が高くなります。

  • IFRS第8号「事業セグメント」のセグメント注記で提供される情報(IFRS18.B36)

報告セグメントが単一の事業活動で構成される場合、その事業活動は企業の主要な事業活動であることを示唆します。

一方、事業セグメントが単一の事業活動で構成されていても、必ずしもその事業活動が主要な事業活動であることを示唆するわけではありません。ただし、その事業セグメントの業績が企業の営業業績の重要な指標である場合、それが主要な事業活動であることを示唆する場合があります。「IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」のセクション2.1.1では、特定の主要な事業活動と事業セグメントとの関係を示した設例を紹介しています。

Q-3:連結グループにおいて、特定の主要な事業活動はどのように評価しますか?

A:特定の主要な事業活動を有しているかどうかの評価は、報告企業の視点から行いますので、連結財務諸表においては、連結グループ全体の視点で評価を行うことになります(IFRS18.B37、BC98-BC99)。連結グループにおける評価は、親会社の個別財務諸表における評価や子会社の財務諸表における評価とは異なる場合があることに留意が必要です。

つまり、連結グループ、親会社及び子会社は、それぞれ異なる主要な事業活動を有する場合があるため、収益及び費用の分類が異なる可能性があります。これにより、連結純損益計算書を作成する場合に追加的な連結修正が求められる場合があります。

第2回の解説は以上となります。

IFRS第18号の考え方について、詳しく知りたい方はIFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」をご覧ください。

第3回では、IFRS第18号で新しく導入された3つの区分(営業区分、投資区分、財務区分)について解説します。

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執筆者

あずさ監査法人
会計・開示プラクティス部
マネージャー 梶原 万基乃 

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