本シリーズは、社会課題を解決するであろうさまざまな技術と、その可能性について語ります。これらの技術は学術的興味だけでなく、事業戦略に直結する情報源となります。日本の技術が世界に与える影響を一緒に探り、革新的なビジネスモデルや新たな市場の創出への門を開く旅を始めましょう。

なお、動画は、筆者からのメッセージを収録したイントロダクション動画となっています。

電動航空機

電動航空機は、電気エネルギーを使用して飛行する航空機のことを指します。現代社会で求められている環境に優しい持続可能な技術として、電動航空機はその開発が急速に進んでいます。しかし、まだ多くの課題が存在します。モーターやバッテリーの軽量化と高性能化は、特に重要な課題となっています。電動航空機の社会実装は時間と費用がかかりますが、環境保全と騒音軽減という大きな利点があります。また、IoT技術の活用により、新たなビジネスモデルやソリューションが提供される可能性もあります。

半導体先端パッケージ

半導体先端パッケージは、複数の半導体を1つのパッケージにまとめて機能を最適化する技術です。これにより、より高速で効率的な情報伝達が可能となります。AIが普及する現在、微細化だけでは対応できなくなってきた半導体技術の進化に対する解決策として、先端パッケージ技術が期待されています。この技術の新たな展開として、データセンターサーバ、モバイルデバイスだけでなく、ヒューマンサイエンス・量子技術・車載・5G等の分野への応用が進んでいます。

シミュレーション技術

シミュレーション技術は、プロセスの変更や仮定シナリオの影響を検証するために視覚的表示を利用することで意思決定を容易にするエビデンスベースのアプローチです。特定の分野だけでなく、日常生活に至るまでの多種多様な分野でその効果が注目されています。シミュレーション技術は、現実の問題解決だけでなく、新たな可能性を模索し、業界の未来を切り開くための「コンパス」となるでしょう。

産業用ドローン

産業用ドローンは、建設現場監視や農業モニタリング、災害調査、物流等で使用される無人航空機であり、ホビーや空撮用の一般向けドローンとは異なり、業務用途に特化した機能が搭載されています。警備や物流、農業、建築などの分野での活用が期待されています。現在の課題は、飛行時間の延長や安全性の確保、運行管理システムの開発等です。しかし、近年の技術進歩や法改正の進展により、社会実装の現実味がますます高まっています。産業用ドローンは、グローバルレベルの社会インフラ課題への対応や産業変革の推進において、大きな可能性を秘めています。

POE照明

POE照明はPower Over Ethernetという、電力とデータを一本のケーブルで伝送する技術です。これにより、イーサネット上で電力供給が可能となり、照明だけでなく、センサーやカメラなどの接続も容易になります。一方で、制御や消費電力の削減などの観点から、電力効率が重要な課題となっています。新たな技術として双方向送電が期待されており、これにより災害時の避難誘導やスマートグリッドへの貢献など、より広範な用途での活用が可能となると考えられています。

BIM

BIM(Building Information Modeling)は、コンピューター上に現実と同じ建物の立体(3D)モデルを再現する技術です。立体モデルを活用することで実際の完成イメージを視覚的に把握でき、建築面における効率化や、エネルギー消費量の削減が期待できる。しかし、BIMの全面的な活用には、設計・施工・維持管理における情報の統一や共有が重要で、それにはデータフォーマットの標準化などが課題となります。その解決のための新技術として、公共プロジェクトでのBIM活用の義務化などが執行されています。

3Dプリンター

3Dプリンターは、3次元(Three Dimension)の設計データを基に、材料の層を積み重ね、硬化・焼結といった工程により、立体造形物を出力する技術で、従来不可能だった高度なデザインの実現し、高速プロトタイピングといったメリットが注目されています。解像度・精度の向上、材料の多様化、印刷速度の向上など、新たな技術課題への挑戦も進んでいます。それらの課題を解決する新技術として、HPS(Hybrid Photosynthesis)技術とHTCP(High-Throughput Combination Printing)技術が登場しており、未来のさらなる進化が期待されています。 

パワー半導体

パワー半導体は、電力の供給と変換という心臓のような役割を果たし、さまざまな産業領域で活用が期待されています。従来のSiベースのパワー半導体は低・中耐圧で低・中波領域に位置し、開発途上のため今後の発展が求められます。その一例としてワイドバンドギャップ半導体が注目され、その一つであるSiC(炭化ケイ素)を基材としたSiC-MOSFETは、Siベースのものより低オン抵抗・高耐圧・高速といった3つの機能を持つことから、新たな半導体の可能性を示しています。この新素材の開発と適用は、さらなるパワー半導体の普及と発展に繋がると期待されています。

量子コンピュータ

量子コンピュータは、0と1の両方の状態を同時に取りうる量子ビット(キュービット)を用い、多数の計算を一度に行うことが可能な先端技術です。しかし、現時点ではハードウェアの4ビットや5ビットの量子コンピュータしか実現していないため、さらなる発展が望まれています。特に、「超伝導回路方式」が注目されていますが、量子ビットのエラー訂正技術や超低温環境の実現など、まだ解決すべき課題があります。将来的には、化学反応や金融計算、機械学習などでの活用が期待されているため、その実現に向けての取り組みが重要となります。

核融合発電技術

核融合発電は、プラズマ状態の原子核同士を融合させることでエネルギーを発生させる、近年注目される技術です。資源がほぼ無尽蔵で、エネルギー効率が高く、安全性も特長としています。しかし、技術の確立には、高エネルギーを得る効率の向上や円滑な核反応の維持など、いくつかの課題を克服する必要があります。そのため、先端工学やスタートアップの取組みが重要となります。成功すれば、深刻なエネルギー問題を克服する大きな一歩となり、日本の技術蓄積が世界に示す大きな可能性となります。

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