問題提起

この10年ほどの間、テクノロジー業界においては、米系メガプラットフォーマーの事業拡張、中国・台湾・韓国企業の台頭による競争激化が進んできました。
同時に、コンピューティング技術(AI、IoT、クラウド等)の進化により、モビリティ、メディカル、公共サービスなどさまざまな領域で新たな事業機会が生まれています。
2020年初頭からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍によるグローバルでの行動規制、新たなボーダーの出現は、リモートワーク環境の拡がりによる働き方や消費動向に多大な変化を引き起こし、デジタルトランスフォーメーション(DX)の時計の針を大きく進めたのは言うまでもありません。

テクノロジー企業は、その持てる技術優位性を発揮して、DXにより自らの企業変革を実現し、激変する環境へ早期に対応することが求められます。加えて、社内DX改革により獲得した知見を武器に、顧客とするあらゆるインダストリーにおけるDXをイネーブラーとして加速させる役割への期待が高まっています。
こうした期待に応えて事業拡張を続けている米系メガプラットフォーマーに対し、日本のテクノロジー企業は事業機会を取り込みきれているとは言えません。

事業機会を取り込めていない真因仮説

こうした現状を招いている要因を、戦略、組織・人・スキル、オペレーション、システムの側面から概観してみます。

戦略
米系メガプラットフォーマーは、データドリブン経営を体現しており、例えばあらゆるチャネルから顧客の購買の意思決定の瞬間(=事業機会)を捉え、すぐさま商品・サービスを提案するなど、DXにより最適化されたオペレーションの自動化を実現しています。一方、日本の多くのテクノロジー企業は、データ活用を通して事業機会を捉える仕組みが確立できておらず、属人的なオペレーションから脱却しきれていないと言えます。また、既に複数の巨大なエコシステムが市場に存在する中、単一企業によるプラットフォーマーとしての市場創出は難しい状況にあります。日本のテクノロジー企業は、将来の高収益領域を見定め、選択と集中に基づくリソース投下で特定領域でのニッチトップ(レイヤーマスター)を目指す、他社とのアライアンスによる新たなエコシステムを形成する、といった方向性での成長の追求が不可欠と考えられます。

組織・人・スキル
データドリブン経営の実現に向け、チーフデータオフィサー(CDO)設置による経営トップのリーダーシップ発揮、データ利活用の担い手となるデータサイエンティストの採用・育成、社内DX推進や、今後新たに必要となる業務に人材が順応するためのスキルを習得させるリスキリングといった取組みが不可欠ですが、日本のテクノロジー企業はいずれもその途上にあると言えます。

オペレーション
米系メガプラットフォーマーのオペレーションはDXによる自動化が進展しているのに対し、日本のテクノロジー企業では旧態依然とした人海戦術によるオペレーションが随所に残存しています。この要因としては、レガシーシステムにひきずられてオペレーション変革が進まないこと、自前主義によってBPOなどを積極的に活用できていないこと、日本特有の「人に仕事をつける」というメンバーシップ型雇用により業務の体系化や整理が困難であること、などが挙げられます。

システム
昨今、日本のテクノロジー企業は、モノ売りからコト売りへといったビジネスモデルの転換を図るも、その多くが製造業の出自のため、社内には未だ単品箱物の販売を目的として構築されたシステムが広範に残存しています。こうしたレガシーシステムがサイロ化することで、事業機会を捉えるためのアナリティクスに必要なデータ収集が困難になっています。これらは、新しいビジネスモデルに対応するシステム全体のアーキテクチャと、それを実現するためのロードマップが未整備なことが一因として挙げられます。

グローバルで拡張を続ける事業機会を早期に捉え成長を持続させるため、日本のテクノロジー企業は上記のような状況から脱却し、データドリブン経営実現の土台作りに取り組まねばならないでしょう。
KPMGコンサルティングでは、そのような課題を解決するためのソリューションを揃えています。お気軽にお問い合わせください。

執筆者

KPMGコンサルティング
ディレクター 東 亘平

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