多様化・複雑化する顧客ニーズを迅速に製品・サービスへ反映させて市場に投入するために、組織は業務機能ごとに細分化・最適化されています。加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は企業・個人に対して働き方の変革を促し、リモートワークや在宅勤務といった、分散した環境での業務が今後も定着することが予想されます。この細分化・分散した組織の連携を強化することは、今後企業の競争力を保つうえで重要です。一方、多くの企業では以前から情報の連携が希薄化することにより、事業所・部門・工程といった単位で組織がサイロ化され、非効率な業務の発生による生産性の低下が課題となっています。
KPMGの提供する情報連携高度化AIソリューションは、自然言語処理等のAI技術を活用し、業務の過程で発生するあらゆる文書を統合・分析・可視化することで、各人の情報獲得スタイルを変革します。企業内の情報流通・コミュニケーションを活性化させることで組織の壁を破壊し、企業全体の生産性向上・組織力強化を実現します。
企業内の情報連携が、より重要な時代に
かつて企業の成長を支えてきた大量消費・大量生産の時代は終焉を迎え、顧客は個人に合った体験価値を求めるようになりました。この多様化・複雑化するニーズに対応し、素早く製品・サービスを市場に投入するため、企業の業務は機能ごとに細分化・最適化され、拠点・部門・プロジェクトは増加しています。また、COVID-19の影響により、多くの従業員はリモートワークを余儀なくされ、企業は物理的に隔離された環境において、どのようにコミュニケーションを活性化させるかを模索しています。この働き方の変化は一過性のものではなく、企業はリモートワーク、サテライトオフィスといった分散した環境での業務がアフターコロナ時代にも続くことを前提とし、多様な組織・個人を連携させる仕組みの構築が求められます。
現場では組織がサイロ化し生産性が低下
現場では以前から、営業・生産といった業務機能ごとの文化の壁、事業所・工場といった拠点の壁、異なるシステム・データ保有形式等を要因として組織がサイロ化され、隣の組織の動向・関係者の把握すら困難となっています。その結果、業務の重複・乱立する施策・課題解決の長期化が発生し、企業全体における生産性の低下が問題となっています。
ソリューション活用シナリオ
実際の企画・研究、調達、生産、販売、サービス部門の現場でよくある課題とソリューション活用による変化のイメージを以下に示します。
【よくある課題とソリューション活用による変化のイメージ】
よくある課題 | ソリューション活用による変化 | 効果 |
---|---|---|
研究開発プロジェクト(PJ)の重複 • 国内R&D部門と海外R&D部門で研究内容が重複する • システム開発部門と先端技術研究チームで同様のアルゴリズム研究のプロジェクトが存在する |
類似研究・担当者の把握 社内文書・担当者情報を可視化することで、類似する研究とその担当者を事前に把握 |
重複PJの防止、課題解決の時間削減 |
事業部・拠点ごとに発注先を選定 • 同一部品にも関わらず、高価格帯で発注する部門が存在 ノウハウが蓄積されない • 仕訳履歴や発注書といった結果のみでは、交渉等のノウハウが得られず、若手の育成に反映できない |
過去発注の経緯把握 事業部・拠点横断で過去に発注した経緯を把握、必要に応じて担当者とコミュニケーション |
発注先・価格交渉の最適化/交渉ノウハウの伝承 |
現場トラブル発生時の解決長期化 • 過去に発生したものと同様のトラブルが隣の工場で再度発生しても、過去の解決策や関係者の特定が困難 組織課題が把握できない • 現場マネジメント層が工場全体において今何がクリティカルな課題かを把握できていない |
過去トラブル履歴・有識者への迅速なアクセス トラブル発生時、システムログやアラートの文字列から対応履歴を検索し、過去に対応したことのある人物や解決策を参照 組織横断の課題把握 日報・週報から手を打つべきクリティカルな課題を把握、また他組織で類似課題が発生していないかを把握 |
トラブル解決の時間短縮/課題把握の漏れ防止 |
営業先の競合 • 各営業拠点ごとに個別にクライアントにアプローチすることによる社内競合の発生 |
営業情報の一元管理 各営業所に存在する営業日報より、顧客管理情報を一元化 |
営業活動の競合防止/顧客ニーズ全貌の理解 |
クレームの傾向・本質が理解できない • 営業部門・サービス部門が独自にクレームを収集・蓄積することにより、全体の視点から真に解決すべき問題を特定ができない |
クレームの重要度・傾向把握 自然文で記載されたクレーム情報を分類し、重要度を算出することで課題の本質を把握 |
顧客ニーズ全貌の理解/顧客満足度の向上 |
問い合わせがどの部署の管轄か不明 • 顧客からの問い合わせがどの部署の管轄かわからず、複数の部署にたらいまわしにされる |
対応部署・担当者の迅速な把握 過去事例から、類似の問い合わせおよびその担当者情報を参照することで顧客への回答時間を短縮 |
回答時間の短縮/顧客満足度の向上 |
さらなる情報連携の高度化 ~顧客体験の最大化に向けて~
上記では各部門内での情報連携シナリオを紹介しましたが、同様の仕組みは各部門内の連携だけに留まりません。顧客志向が多様化し、頻繁に変化する中で、(1)志向の把握、(2)製品(サービス)の改善、(3)市場投入、以上のサイクルを短期化することは企業の競争力を保つうえで重要です。しかし、従来のような企画・研究・設計・生産・販売といった縦割りに流れる業務プロセスでは、顧客志向の変化に十分に対応できません。
本ソリューションの活用をきっかけに、機能間の強固な関係を構築することで、市場投入サイクルの短期化に加えて、企画・構想段階において、顧客が今どのような体験・価値観を求めているか、志向にあった製品(サービス)は何か、その最適な販売経路やアフターサービスは何か、調達先は環境に十分に配慮しているか、といったトータルの満足度を最大化する製品・サービスの設計が可能となります。
ソリューション概要 ~自然言語処理等のAI技術により、拠点・組織のサイロを破壊~
企業内には日々の業務から生み出される貴重な情報(日報、週報、コミュニケーション履歴、各種報告書、トラブル履歴等)が大量に存在します。しかし、これらの情報の大部分はテキストといった非構造データとして存在するため、体系化された整理がされておらず、情報へのアクセス・理解が困難でした。
KPMGが開発した情報連携高度化AIソリューションは、各部門より日々生み出される情報をAIにより統合・分析し、組織内外の情報を横断的かつ体系的に可視化する仕組みを構築します。これにより、拠点・組織を問わずヒトのコミュニケーションを活性化し、組織の壁を破壊します。
企業個別の要件に対応することで効果を最大化
情報連携高度化AIソリューションは機械学習・深層学習といった分析系の機能から可視化機能まで、全てオープンソースを利用して構築されています。そのためデータ形式による制限や、可視化画面等の制約、AIのブラックボックス化といった既存のAIソリューションに多く見られる制約を受けずに、各企業の業務課題に即した要件の追加や効果検証、導入を迅速に行うことが可能です。