ビジネスプロセスアウトソーシングを取り巻く状況

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を契機に市場の不確実性がさらに増している中、BPOの検討が加速しています。一方でDXの社内浸透による業務の変革も進んできており、「DXなのか、BPOなのか?」といった議論が多くの場面でなされています。

従来型BPOからDX-BPOへ高度化させることの必要性

「DXか、BPOか」との議論において、両者は組み合わせるべきとKPMGは考えます。業務プロセスのDXとBPOをハイブリッドに組み合わせて「DX-BPO」化することにより、従来型の労働集約的BPOと比較して、QCD(Quality・Cost・Delivery)すべての面でメリットを享受でき、企業の競争力を一層高めることが可能です。

比較 従来型BPO DX-BPO
Quality

・人手によるダブルチェック、トリプルチェック

・ベンダー独自の品質改善活動(可視化、標準化、課題改善PDCA、等)

左記に加え、以下の追加効果

RPAによるミス削減、AIによる判断の高度化・チェックの網羅性向上、等

Cost

・オフショア/ニアショア等の地理的要素を原資としたコスト削減

・ベンダー独自のコスト削減活動

左記に加え、以下の追加効果

人による業務(入力、チェック、判断等)の自動化・高度化・省力化によるコスト削減

Delivery ・人手や地理的要素を原資としたベンダー独自のサービスレベル向上活動(応対可能時間、受付率、処理件数、リードタイム、等)

左記に加え、以下の追加効果

AIやクラウドDXを用いた革新的なサービスレベル(時間、体験、処理能力)の享受

DX-BPO成功のポイント

プロセスの変革(DX)とオペレーション体制の変革(BPO)は別軸であるため、分離並行して検討・推進すべきです。業務プロセスの全体DX構想を描き、自社資産として取り組むDXを識別した上で、ベンダー選定時のDX力量と投資コストの妥当性を見極める必要があります。DX-BPOを成功させるためには、下記のとおり前提を主軸として3つのポイントに沿って実施することが重要です。

Point1:ベンダーへのDX期待値整理
プロセスの変革(DX)とオペレーション体制の変革(BPO)の一切を受託できるBPOベンダーも存在していますが、以下の点について留意が必要です。
BPOベンダーにてDXを推進した場合、そのベンダーが作成したDX資産の著作権はBPOベンダー側に帰属します。これにより、(1)DXのノウハウが社内に蓄積されず、(2)BPOを止める、または他のBPOベンダーに変更する際にDX資産の流用が難しくなります。
したがって、BPOベンダーへの期待値(DX構想から委託するか、DXの実装から委託するか、業務の運用だけ委託するか、等)を事業戦略や業務戦略に基づき整理しておくことが重要です。

Point2:委託側の適切なジャッジ
通常、アウトソーシング検討の際には複数社での比較検討を行うことが一般的ですが、委託側はBPOとDXの提案の両面を考慮し、適切なジャッジメントを行う必要があります。
特にDXの提案については、ToBeの実現性および実績、サービス提供者への影響、さらには自社のビジネスモデルへのインパクト等を判断軸に、著作権問題やコストの妥当性も加味します。
これに従来のオペレーションBPOの提案内容(立地条件、人材採用、品質向上、改善ノウハウ、実績等)を掛け合わせて、総合的に判定しなければなりません。

Point3:BPO企画段階での準備
どのような業務であってもDX-BPO化のメリットはあるため、自社でDXに取り組むかBPOベンダーに任せるかに関わらず、DXを盛り込んだToBeを設計することが推奨されます。ToBeの設計により、取り組むテーマごとに自社かベンダーかを判断するための事前準備ができ、また実際にBPOベンダーからDXの提案を受けた際の力量判断のベンチマークにもなります。
BPOの企画段階で十分な準備想定を行うことが、DX-BPOの成功につながります。

DX-BPO後の絵姿(入金消込ユースケース)

入金消込業務における従来型BPOとDX-BPOの比較:
BPOと合わせてDXを実現することにより、従来型BPOで実現される効率化と比較し、さらに 「大量に/正確に/迅速に/低コストで」 業務を運用することが可能です。

【人手による標準化やマルチタスク化等により実現するQCDの向上】

DX-BPO支援_図表1

【RPA・AI等を用いたDX化とBPOの融合による大幅なQCD向上】

DX-BPO支援_図表2

アウトソーシング目的整理の重要性

DX-BPOを用いることにより、従来型BPOと比較してQCDすべての側面についてメリットを享受することが可能です。従って、アウトソーシングの目的として着目されがちなコスト側面以外にも、ビジネス(事業)の目線から品質(Quality)、サービスレベル(Delivery)およびその他固有の目標を明確に設定し、あらかじめマネジメントと合意しておくことが推奨されます。

業務の品質に係る目標

・ミス率の低減

・トラブル件数の低減

・プロセスの標準化

・属人化の可視化と排除 等

金額に係る目標

・現状対比XX%削減(X年総額)

・固定費の変動費化 等

サービスレベルに係る目標

・サービス時間の拡大(平日9-17 ⇒ 24/365)

・受付率、呼応率、回答率、リードタイム等の向上

・長期的な業務の拡縮、または通年での繁閑差への弾力性人材の安定確保(労働人口減少、採用競争力維持) 等

個社特有の目標(期待)

・さらなる業務の高度化や、自社に新しい変革を持ち込むパートナーの選定

・ビジネス拡大可能性のあるパートナーの選定(相互契約/JV、等)

・コア業務/コアコンピタンスへの社内人材集中 等

ハイレベルDX-BPOジャーニー

アウトソーシングを効果的に実現するためには、DX-BPOを考慮した戦略の策定、BPO計画の作成、ToBeプロセスの準備、PFRの作成やベンダー選定時の評価などの一式を関連させて推進することが不可欠です。
KPMGは、DX-BPOの実現に必要な戦略策定からベンダーの選定、ならびに移行や運用・改善に係るフレームワークを有しており、一連の活動において統合的な支援が可能です。

DX-BPO支援_図表3

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