KPMGは、自然言語処理を活用した人材配置ソリューション“Kc-HERO®※”を、よりスケールの大きなケースで活用できるものへと進化させました。自然言語処理AIのポテンシャルを最大限に引き出し、時代の変化に追随可能なテクノロジードリブンの人事機能の改革を支援します。
HRテクノロジーの進化
人事部門を改革する術としてHRテクノロジーの活用が注目されています。日常のオペレーションの効率化・自動化や、人事データに基づくハイパフォーマー分析・離職者予測など、企業のインフラとしての役割を強化することが中心であったこれまでのHRテクノロジーを、人事を戦略人事にシフトさせていくものへと進化させることが重要です。この新たな役割を果たすためには、激変する外部環境と自社ビジネス・人材を関連付けて把握し、俊敏かつ柔軟に対応することが不可欠であり、KPMGではHRテクノロジー進化のキーポイントを以下の3つと捉えています。
・外部環境の変化を捉えるための社外データの活用
・自社の人材やビジネスを細かく把握するための人事の枠を超えた社内データのフル活用
・ビジネスの変化に追随可能な俊敏性と柔軟性
KPMGのアプローチ
多様なデータへのアクセシビリティ
KPMGは、2017年に自然言語処理AIを活用した人材配置ソリューションである“Kc-HERO”の提供を開始し、非構造化データである自然文データの活用を可能にしています。このソリューションを応用することで、人事の枠を超えた社内外の自然文データを分析し、外部環境と自社を関連付けた示唆を抽出するといった対応も可能です。こうした示唆を活用することが、競合他社との差別化や優位性を生み出す人事戦略の立案等につながり、人事部門を戦略人事中心の存在へとシフトさせていくものと考えられます。
スケーラビリティ
Kc-HEROは、増加し続ける社内外のビッグデータの処理を可能とするべく、オープンソースの分散処理フレームワークであるApache Spark、およびコンテナ化されたアプリケーションのデプロイやスケーリングなどを管理するKubernetes(k8s)に対応しました。これにより、処理の負荷状況に応じたリソースを動的に追加することができます。伸縮自在のスケーラビリティを実現することで、社内外の膨大な自然文データを高速に処理することが可能となりました。
アジリティを備えたアプリケーション
Kc-HEROは、マイクロサービス指向と可搬性の高さによりアジリティの高いアプリケーションであり、ビジネス要件の変更・追加に伴う分析軸や機能追加を、既存機能への影響を極小化しながら容易に行うことができます。さらに、テスト済みのコンテナをテスト環境から本番環境にそのまま移植するといったスピード感のあるリリースが可能です。このように、Kc-HEROではビジネス要件の変更発生から、それに伴う機能改修、本番環境へのリリースまでの一連の流れを柔軟かつ迅速に行うことができます。
Azureを活用した実現例(Kc-HERO on Azure)
マイクロソフト社が提供するAzureのサービスを利用したケースでは、k8sの仕組みとして、Azureで提供されているAzure Kubernetes Service(AKS)と呼ばれるマネージドサービスを利用しており、AKSの管理下で分散処理に対応したKc-HEROが動作します。負荷状況に応じて、AKSの機能によって分散処理を行うPodの追加やPodが実行される仮想サーバの追加が動的に行われます。また、ビジネス要件に応じて、例えばAzureのその他サービスと連携するコンテナアプリケーションを構成し、Kc-HEROの既存部分には影響のない形で連携させる等の柔軟な対応が可能です。
活用シナリオ ~経営に深く絡む戦略人事を実現し、スピーディに全社展開~
1. 外部環境と自社事業を関連付けて把握
社内外に存在する膨大な自然文データを自然言語処理AIで分析し、自社の注力事業と関連の深いトピック(単語の意味の近さに基づく)をグラフ構造で可視化することで、業界のトレンドや競合他社/自社の強みといったトピックを網羅的に把握することができます。これらのトピック情報と自社で保有する様々な自然文データをKc-HEROで分析し、各トピックに対する適合度を算出することで、組織の総合力が可視化できます。これにより、外部動向を踏まえた自社の改善すべきポイントを把握し、その強化を目的とした戦略的な取組み(例:新会社設立による全社横断的な機能の構築や事業の役割集約など)につなげることが可能です。
2. 経営戦略に直結する人材の網羅的な把握
スケーラビリティという特徴を最大限に活用し、関連会社を含めた全人材情報(人材ビッグデータ)を分析することで、経営の重点トピックに適合する人材を効率的、かつ網羅的に把握することができます。これにより、新会社設立や事業の集約などの戦略的な取組みに対して、人材の観点から深く関与する戦略人事という役割を果たすことができます。
3. アーキテクチャの特性を活かした柔軟、かつスピーディな全社展開
こうした全社横断的な取組みを推進する際に、Kc-HERO on Azureは大変有効です。可搬性という特徴により、PoCで実績をあげた仕組みをスピーディに本番環境へ展開することができ、全社展開に伴う処理すべきデータ量の増加にはスケーラビリティで対応します。さらに、マイクロサービスの特徴を活かし、本番運用に耐え得る個別要件を柔軟に取り込んでいくことで、PoCから全社展開までの流れを柔軟、かつスピーディに推進していくことが可能です。
HRテクノロジーからHRエコシステムへ
ここで紹介した内容を本格的に実現していくためには、AIやコンテナ技術といった高度なITを扱うことが不可欠です。しかしながら、日本においてこれらの技術を扱える人材は圧倒的に不足しています。また、外部環境の変化を捉えるために外部データの活用が重要なポイントとなり、実現手段としてデータコープ(複数のステークホルダー間でデータを共同利用し、データの量や多様性を強化することで、データから得られる価値を高めようとする概念)などの方法が必要となります。これらの観点から、こうした取組みは企業個別ではなく、横断的なプラットフォームとして整備することが重要です。様々なデータや技術、人材を結集させたHRエコシステムを形成し、あらゆる情報を活用可能にすることで、多くの企業に真の戦略人事と呼べる存在をもたらすことができると考えられます。
さらに、ここで述べているエッセンスは、人事の領域に限らずあらゆる業界・業種における共通項とも言えます。KPMGは、AIやそれを支えるIT基盤技術など先端ITに対する高度な知見とコンサルティングファームとしてのビジネスの専門性を融合させることで、激動の時代におけるクライアント企業の競争力維持・向上を支援します。
※Kc-HEROはKPMGコンサルティング株式会社の日本における登録商標です。
※本文中に記載されている会社名・製品名は各社の登録商標または商標です。