デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が叫ばれて久しいですが、その取組みは必ずしも企業の競争力強化に結びついていないのが現状です。業務効率化を目的としたITソリューションの実装は進んでいるものの、新規ビジネスの創出をはじめ、企業成長に寄与する成功事例はまだまだ乏しいようです。

こうしたテクノロジー活用の課題が残るなか、ServiceNowとKPMGコンサルティングは2011年に締結したグローバルアライアンスで培った関係性のもと、日本企業に向けてもDX推進と競争力強化に向けた新たなアプローチを提案しています。

ServiceNow Japan合同会社  常務執行役員  渡部洋史氏とKPMGコンサルティング  執行役員  パートナー  宮坂修司氏は、日本企業が直面する課題とその解決に向けたビジョンについて、対談を行いました。

【インタビュイー】

渡部 洋史氏
ServiceNow Japan   常務執行役員 グローバル・パートナーシップ Japan統括

宮坂 修司
KPMGジャパン   コンサルティング統轄パートナー/ビジネストランスフォーメーションユニット統括長
KPMGコンサルティング    執行役員 コンサルティング統轄パートナー

「真のDX」を日本企業はどのように実現すべきか?_写真1

左から ServiceNow Japan 渡部氏、KPMG 宮坂

日本企業に不足しているのは、「変化対応力」と「全体最適」

-国内外の多くの事例に携わるなか、日本企業のITソリューション活用の現状をどのように見ていますか。

宮坂:日本企業の現場重視の姿勢や課題を改善する文化は、世界に誇るべき強みです。しかし、その反面、システムを細かく作り込みすぎるあまり、変化への対応に時間がかかってしまうという課題があります。グローバル競争が激化するなか、この「変化対応力」の欠如が日本企業の競争力低下につながっているのではないかと考えています。

また、日本企業は長年、独自のシステム開発にこだわってきました。これは品質の高さにつながる一方、グローバルスタンダードのプラットフォームの活用という面では遅れをとっています。今後は、グローバルのテクノロジープラットフォームをうまく活用しながら、日本企業の強みを生かす方向性が重要になるでしょう。

渡部氏:同感です。日本企業は2000年代初頭ごろからERPの導入を進めてきましたが、多くの場合、既存の業務プロセスとの整合性を重視するあまり、パッケージの大幅なカスタマイズを行ってきました。これは日本企業の品質へのこだわりや、きめ細かなサービス提供への意欲の表れでもありますが、結果として、システムの更改に時間とコストがかかるようになってしまいました。最近では、パッケージに業務を合わせるという考え方も浸透してきていますが、それでも業務の最適化が進んでおらず、現場の業務量はあまり減っていないのが実情です。

特に、部門をまたぐ業務プロセスの自動化や効率化には、まだ大きな余地が残されています。たとえば、RPAの導入では、日本は一時期、世界と比べて先進的でした。しかし、その多くが個別最適にとどまり、全社的な効果を生み出せていないのが現状です。

宮坂:こうした課題が生じる1つの要因として、日本企業の意思決定プロセスの特徴が挙げられます。

オペレーション現場を尊重するあまり、ときに経営レベルでの大胆な意思決定や変革を遅らせてしまうことがあるのです。たとえば、「100%の生産性向上」といった大胆な目標を掲げて全社的なDXを推進する、という、全体最適を目指した動きが少ないように感じます。

「真のDX」を日本企業はどのように実現すべきか?_写真2

KPMG 宮坂

部門をまたぐデジタルワークフローの提供で、企業の変革を支援

-日本企業が抱える課題に対して、両社はどのようなアプローチで解決を図ろうとしているのでしょうか。

宮坂:KPMGでは、「Connected. Powered. Trusted.」というフレームワークを用いて、企業のDXを支援しています。「Connected」は顧客や従業員体験を中心に据えた事業再構築、「Powered」は最新テクノロジーを活用した業務プロセスの最適化、「Trusted」はリスクやコンプライアンスを考慮した責任ある成長戦略をそれぞれ意味します。

特に重要なのが「Connected」の視点です。部門ごとに最適化するのではなく、顧客や従業員の視点から全体を見直し、シームレスな体験を提供することを目指しています。たとえば、従来は部門ごとに異なるシステムで管理していた業務を1つのプラットフォームで統合的に管理することで、業務の効率化と顧客満足度の向上を実現できます。

この点で、ServiceNowのプラットフォームは非常に親和性が高いです。部門をまたぐワークフローのデジタル化と自動化を実現することで、企業全体の変革を支援できるからです。

KPMGのDXソリューション

T r a n s f o r m a t i o n J o u r n e y エンド・ツー・エンドで ビジネスの再構築を 支援します。 Connected 成果重視の業務 改革を支援します。 Powered ステークホルダー の信頼獲得を 支援します。 Trusted Scalable Managed Services E l e v a t e U n l o c k fi n a n c i a l v a l u e q u i c k l y a n d c o n d e n t l y .
Rebuild your business, end to end, around your customers. Connected Drive outcome- driven functional transformation. Powered ステークホルダーの 信頼獲得を 支援します。 Trusted T r a n s f o r m a t i o n J o u r n e y Scalable Managed Services E l e v a t e U n l o c k fi n a n c i a l v a l u e q u i c k l y a n d c o n d e n t l y .

渡部氏:ServiceNowが提供する「Now Platform」は創業当初、IT部門を支える業界標準のプラットフォームでしたが、現在では幅広い業務領域にデジタルワークフローを提供し、全社横断的に活用できるプラットフォームへと深化してきました。

加えてServiceNowでは、Systems of Engagement(SoE)という概念を重視しています。従来の基幹システムが担ってきたSystem of Record(SoR)の領域の上に、柔軟で変化に強いレイヤーを設けることで、市場の変化に迅速に対応できる環境を構築します。

具体的には、部門をまたぐワークフローのデジタル化と自動化を支援します。たとえば、カスタマーサービス部門への問い合わせが、関連する他部門へスムーズにエスカレーションされ、迅速に解決されるようなプロセスを構築できます。これにより、従業員は付加価値の高い業務に集中でき、顧客満足度も向上するでしょう。

「真のDX」を日本企業はどのように実現すべきか?_図表1

-KPMGとServiceNowがタッグを組むことで、どのような効果が期待できますか。

渡部氏:ServiceNowは強力なプラットフォームを提供していますが、それを各企業の業務プロセスに最適な形で適用するには、業界固有の知識や変革管理のノウハウが不可欠です。KPMGの豊富な経験と知見は、我々のプラットフォームの価値を最大化する上で極めて重要な要素となります。

宮坂:ServiceNowのプラットフォームは、我々が提唱する「Connected」の概念、つまり部門間の壁を取り払ったシームレスな業務プロセスの実現に非常にマッチしています。そのため、KPMGの「Connected. Powered. Trusted.」のフレームワークに基づいて策定した変革戦略を、ServiceNowのプラットフォーム上で迅速に実装することが可能になります。これにより、戦略立案から実装、そして継続的な改善までを一貫してサポートできます。

日本企業ならではの強みを、最新のプラットフォーム活用で磨き上げる

-近年注目度が高まる生成AIの活用について、どのように考えていますか。

宮坂:生成AIは大きな可能性を秘めていますが、同時に責任ある活用が求められます。
KPMGでは、AIガバナンスの構築支援にも力を入れています。どの業務にどの生成AIを活用し、どのような責任体制で運用するのか。こうしたルール作りを通じて、効果的で安全な生成AIの活用を支援しています。

「真のDX」を日本企業はどのように実現すべきか?_写真3

ServiceNow Japan 渡部氏

渡部氏:ServiceNowは「Put AI to work for people/AI を、あなたの役に立つものへ」という考え方を重視しています。つまり、生成AIを社員個人が単独で使うのではなく、業務プロセスに組み込んで活用するアプローチです。たとえば、カスタマーサービスにおいて、AIが問い合わせ内容を理解し、適切な部門に振り分け、さらに回答案を提示します。そうしたAI活用を、セキュアな環境で実現できるのが我々のプラットフォームの強みです。

そして、2024年9月にXanaduリリースというServiceNowソリューションの多数の新機能を発表しました。そこでServiceNow史上最大規模のAIの新機能も発表され、大規模言語モデルの日本語対応も強化されました。これにより、日本企業でもAIを活用したワークフローの最適化がより容易になると期待しています。

-最後に、日本企業の競争力強化に向けたビジョンをお聞かせください。

宮坂:日本企業の強みである、きめ細やかさや高品質を、最新のテクノロジープラットフォームを活用してさらに磨き上げていくことが重要だと考えます。そのためにKPMGとしては、グローバルの知見を日本の文脈に合わせて翻訳し、最適なソリューションを提案していきたいと思います。

また同時に、我々は「Trusted Transformationパートナー」として、企業の変革を長期的に支援していく存在でありたいと考えています。今後はマネージドサービスの提供にも力を入れていく予定です。単なる業務のアウトソーシングではなく、継続的な改革を支援するサービスを提供することで、クライアントの長期的な競争力強化に貢献していきます。

渡部氏:日本企業が再び世界で存在感を高めるためには、変化対応力とビジネススピードの向上が不可欠です。かつて日本は、検索エンジンや暗号化技術など、多くの先進的な技術を生み出していました。しかし、標準化を重視するあまり、市場でのディファクトスタンダードを獲得できなかった経緯があります。今後は、グローバル市場を見据えたスピーディーな展開と、変化に強い柔軟なシステム構築が重要になるでしょう。

ServiceNowは、そのためのプラットフォームを提供し続けます。同時に、KPMGのような強力なパートナーと協力し、日本企業のニーズに合わせたソリューションをいち早く実装していくことで、日本企業の競争力強化に貢献していきたいです。

 

「真のDX」を日本企業はどのように実現すべきか?_写真4

左から ServiceNow Japan 渡部氏、KPMG 宮坂

<話者紹介>

渡部 洋史氏
ServiceNow Japan 常務執行役員 グローバル・パートナーシップ Japan統括
NTTグループでは公共系の基幹システム構築やグローバルアカウントマネジメントの立ち上げを担当。DELL TechnologiesでのEMCとDELLの統合プロジェクト、サイバーセキュリティ企業であるCybereasonの日本法人立ち上げのほか、RPA企業のUiPathでも経験を積むなど、30年以上に及ぶITビジネスにおけるキャリアを築く。
2024年にServiceNow Japanに参画し、現在は日本企業のDX支援に向けたソリューション提供とパートナーエコシステムの構築に取り組む。日本企業の変化対応力を高めるため、柔軟性の高いSaaSプラットフォーム「Now Platform」を活用したシステム構築を支援。

宮坂 修司
KPMGジャパン   コンサルティング統轄パートナー/ビジネストランスフォーメーションユニット統括長
KPMGコンサルティング    執行役員  コンサルティング統轄パートナー

総合商社のIT部門からキャリアをスタートし、メインフレームを使った会計システムなど、業務アプリケーションの開発・サポート、企業間データ伝送システムの構築など、ITを活用した商圏確保の戦略に携わる。その後、コンサルティング業界に転身。アクセンチュアやIBMで電力業界向けのコンサルティングを担当し、IoTやビッグデータを活用したビジネス変革支援に取り組む。
KPMGコンサルティングに入社後は、エネルギー・インフラ部門の立ち上げを担当。現在はDX領域のチーム拡大を主導し、約2000名規模のコンサルティング部隊を率いる。

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