KPMGジャパン CFOサーベイ2024は、2019年の調査開始から今年で5回目となります。今回は「変革と信頼の両立を目指して」をテーマに、CFOの役割や機能に加え、CFOに求められる先端的なテクノロジーへの取組みに関する調査も実施しました。
今回の調査によれば、事業の選択と集中について果断な経営判断に対するCFOの役割の重要性が増していることがわかりました。
持続的な企業価値向上のために、さまざまなしがらみや利害関係、バイアスを乗り越えて、経営資源配分の最適化のための果断な意思決定を推進すること。これがCFOが担うべき最も重要な役割と考えられます。
一方で、CFOの責任や管掌範囲はますます広がりを見せ、経営や人事、IR、サステナビリティなどに及び、経理財務部門の責任者としての役割から、経営チームの一員としてコーポレート全般をリードすることまでが、現在のCFOには求められています。
すなわち、事業に係る計数に基づく合理的な根拠と、企業価値に影響する重要な非財務要素データを提供することで、戦略的な意思決定をサポートし、ロジカルにステークホルダーと対話すること。これを通じて、企業価値の向上に寄与することがCFOに求められています。
本調査結果の主なポイントはニュースリリースにて紹介しています。
主な調査項目
- サステナブルな企業価値の創造に向けた変革
- データドリブン経営に向けた生成AI活用
- 未来のCFO人材・組織とリスキリング
- サステナビリティ情報の信頼性の向上
- 経営課題としてのグローバル税務ガバナンス体制の構築
- 企業価値経営を支えるCFO部門への昇華
※本ページ上の紹介はレポートの一部であり、調査結果の全文はPDFをご参照ください。レポートでは、各調査項目のさらなる詳細な結果やCFOへのインタビューも掲載しています。ぜひご一読ください。
ハイライト
事業の選択と集中の判断に関するCFOの役割の重要性が増している
CFOに最も期待されているのは、「事業の選択と集中」(60%)。全社視点でのリソース配分の最適化を行い、企業価値向上の実現のために「変革」を推進する役割が期待されている。
【重要性が増しているCFOの役割】
将来を見据えた経営課題の特定は、「約3年先(中期経営計画最終年度)」と「約6年先(2030年近傍)」がそれぞれ39%と最も多くなっている。10年以上先までを見据えていると回答した企業は約17%と限定的。
業績パフォーマンス(営業利益、ROE、PBRの上昇幅)との相関を分析したところ、10年以上先までを見据えていると回答した企業の業績パフォーマンスは、他の企業と比べて高く、長期的な課題を見据えて経営に取り組む企業ほどハイパフォーマーであることが明らかになった。
【どのくらい先を見据えて経営課題の特定に取り組んでいるのか】
「事業ポートフォリオに関する方針は策定済みである」と回答した企業は32%にとどまった。「着手している」、もしくは「これからである」と回答した企業は合わせて55%に達し、事業ポートフォリオに関する方針の必要性を認めながらも、策定は完了していない企業が過半数という結果となった。
業績パフォーマンス(営業利益、ROE、PBRの上昇幅)との相関を分析したところ、事業ポートフォリオに関する方針を策定していると回答した企業は、そうでない企業と比べて業績パフォーマンスが高い傾向がみられた。
【サステナブルな企業価値創造に向けて、あるべき事業ポートフォリオ構成の方針を策定しているか】
優先度の高い取組みは「既存事業の収益性の向上」(77%)のほか、「オーガニックな成長」「インオーガニックな成長」が多く、その手段の1つとして人的資本の強化を重要視していることがうかがえる。
一方で、「不採算事業からの撤退・売却」は31%、「ノンコア事業からの撤退・売却」は15%で、事業ポートフォリオの組換えのプライオリティは相対的に低くなっている。
【最適な事業ポートフォリオ構成を実現するために優先度が高い取組み】
最適な事業ポートフォリオを実現するうえでの課題として「事業ポートフォリオ評価を踏まえた経営資源配分方針の策定と実行プロセスの構築」や「資本コストを考慮した投資案件の評価・モニタリングプロセスの構築」という回答が半数を超えている。
多くの企業において、資本コストや株価を意識した経営の実践が道半ばであることがうかがえる。
【最適な事業ポートフォリオ構成を実現するための課題】
資本収益性が低い事業が存在していることは認識しているものの、「構造改革中であり、撤退には至っていない」「基準やプロセスが設けられていない」という回答が目立ち、事業ポートフォリオの新陳代謝が進まない日本企業の特徴が現れる結果となった。
【資本収益性の低い事業から撤退しないのはなぜか】
CFOの役職は定着しつつあり、CFO管掌範囲の広がりは経歴の多様化につながっている
CFOを設置し、対外的な呼称として使用している企業の割合は年々増加傾向にあり、売上高5,000億円以上の企業では60%にまで至っている。大企業を中心に、日本企業においてCFOという役職が定着しつつあることがうかがえる。
【CFOという役職を置いているか】
CFOの管掌範囲は、伝統的な経理財務領域に加えて、「経営戦略」「経営企画」「リスクマネジメント」「サステナビリティ推進」等に広がりを見せている。「人事」「法務」「総務」を管掌しているCFOも30%を越えており、CFOがコーポレート部門を広くリードしている企業が存在している。
【CFOの管掌業務範囲】
CFOの経歴は多様化しており、伝統的な経理・財務領域のみならず、経営企画や事業部門の企画管理など、より事業に近い経験のあるCFOも多い。
一方、子会社CEOや子会社CFO、他社CFOなどのマネジメント経験については限定的という結果となった。
【CFOはどのような部署・業務を経験してきたか】
前年同様、「中期的な成長、中期経営計画の策定に対するさらなる貢献」「業務管理の精度・スピードの向上」が上位に並んだ。また、「事業ポートフォリオの見直し、ポートフォリオマネジメントの強化」の優先度が高まり、前年調査に比べ約10ポイント増加した。
【経理財務部門の業務高度化の実現において優先度の高いテーマ】
調査概要
目的:CFOの役割、経理事務機能の課題等の定点観測と生成AIやサステナビリティなどホットトピックに関連した取組みに関する調査・分析
調査対象:上場企業のCFOまたは経理財務部門責任者
調査期間:2024年6月10日~9月20日
調査方法:ウェブアンケートシステムによる回答
有効回答数:404社