IASB、公開草案「IFRS第19号『公的説明責任のない子会社:開示』の改訂」を公表
国際会計基準審議会(IASB)は2024年7月30日に、公開草案「IFRS第19号『公的説明責任のない子会社:開示』の改訂」を公表しました。
国際会計基準審議会(IASB)は2024年7月30日に、公開草案「IFRS第19号『公的説明責任のない子会社:開示』の改訂」を公表しました。
背景
2024年5月9日公表のIFRS第19号「公的説明責任のない子会社:開示」(以下「本基準」という )は、公的説明責任のない子会社としての要件を満たした企業について、他のIFRS®会計基準の開示要求事項に代えて適用が認められる、削減された開示要求事項を定めています。本基準は、2021年2月28日以前公表のIFRS会計基準及び2021年1月1日以前公表の公開草案(公開草案「全般的な表示及び開示」を除く)を考慮した2021年7月公表の公開草案※1(以下「2021年公開草案」という)に基づいて開発が進められました。
2021年公開草案より後に公表されたIFRS会計基準については開示要求事項の削減についての協議が未了であったことから、2021年2月28日から2024年5月1日の間に公表された新たな又は改訂IFRS会計基準の開示要求事項は削減することなく、本基準に含まれています。本基準の公表にあたり、IASBは、本基準の公表前に提案又は公表されたIFRS会計基準に関連するものの、2021年公開草案の考慮対象外となったすべての開示要求事項を取り扱う公開草案を、本基準公表後に速やかに公表することとしていました。本公開草案がこれに該当します。
本公開草案の概要
本公開草案では、2021年2月28日から2024年5月1日の間に公表された以下の新たな又は改訂IFRS会計基準を対象として、削減された開示要求事項を提案しています。※2
- IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」(「特約条項付の非流動負債」によるIAS第1号「財務諸表の表示」の改訂を含む)
- IAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」(「サプライヤー・ファイナンス契約」による改訂)
- IAS第12号「法人所得税」(「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール」による改訂)
- IAS第21号「外国為替レート変動の影響」(「交換可能性の欠如」による改訂)
なお、本基準公表後の2024年5月30日に行われた以下の改訂IFRS会計基準については、当該改訂時に本基準に追加された開示要求事項を削減しないことが本公開草案において提案されています。これは、当該改訂に関する2023年3月公表の公開草案に本基準の改訂の提案が含まれていなかったことから、当該改訂に伴って行われた本基準の改訂は公開草案に基づく協議のプロセスを経ていなかったためです。
- IFRS第9号「金融商品」及びIFRS第7号「金融商品:開示」(「金融商品の分類及び測定」の改訂)
本公開草案公表後に、IASBが新たな又は改訂IFRS会計基準の協議を行う際には、本基準の考えられる改訂についても同時に協議することを予定しています。
次のステップ
IASBは、本公開草案の提案について今後受け取るコメントを検討し、本基準の改訂を本公開草案の提案に沿って進めるかどうか判断します。本改訂案に沿って進める場合には、本基準の適用日と同一である2027年1月1日以降開始する事業年度から適用とし、本基準も早期適用していることを条件として、早期適用を認めることを提案しています。
※1 IASBは、2021年7月に公開草案「公的説明責任のない子会社:開示」を公表しました。
※2 IASBの料金規制対象活動プロジェクトから本基準の改訂が生じる場合には、同プロジェクトで公表予定のIFRS会計基準「規制資産及び規制負債」の一部として公表されることになります。なお、同プロジェクトから2021年7月に公表済みの公開草案「規制資産及び規制負債」には、本基準の改訂に関する提案は含まれておらず、現段階では開示要求事項を削減しないことが本公開草案において提案されています。同基準はIFRS第14号「規制繰延勘定」を置き換えるものとして、2025年の公表が見込まれています。
執筆者
有限責任 あずさ監査法人
会計・開示プラクティス部
マネジャー 梶原 万基乃