本人なのか代理人なのか - ソフトウェア再販売事業者(IFRS第15号に関連)-IFRS-ICニュース

IFRS解釈指針委員会ニュース -「本人なのか代理人なのか-ソフトウェア再販売事業者(IFRS第15号に関連)」については、2022年5月のIASB会議において審議された内容を更新しています。

「本人なのか代理人なのか-ソフトウェア再販売事業者(IFRS第15号に関連)」については、2022年5月のIASB会議において審議された内容を更新しています。

関連基準

IFRS第15号「顧客との契約から生じた収益」

概要

IFRS-ICは、次のような状況において、IFRS第15号の適用にあたり、ソフトウェア・ライセンスの再販売業者が本人なのか代理人なのかを尋ねる質問を受け取りました。

  • 再販売業者は、ソフトウェア製造業者と以下の販売契約を締結している。
    • ソフトウェア再販売業者(以下「再販売業者」という。)は、ソフトウェア製造業者の標準的なソフトウェア・ライセンスを顧客に付与(販売)する権利を有する。
    • 再販売業者は、顧客のニーズを満たすソフトウェア・ライセンスの種類と数を見極めるべく、ソフトウェア・ライセンスの販売に先立ち各顧客に対して助言を行うことが求められる。
    • 再販売業者は、顧客に販売するソフトウェア・ライセンスの価格設定について裁量権を有する。
  • 顧客がソフトウェア・ライセンスを購入しない場合、顧客と再販売業者との間に契約は成立せず、顧客は何も対価を支払わない。顧客が特定の種類と数のソフトウェア・ライセンスを購入する場合、再販売業者は顧客と販売価格の交渉を行い、顧客に代わってソフトウェア製造業者に発注、支払を行い、顧客に対しては交渉で合意した価格を請求する。
  • ソフトウェア製造業者は、発注されたソフトウェア・ライセンスを、顧客の名前で発行し、ソフトウェア・ポータルを通じてライセンス認証に必要なキーと共に提供する。ソフトウェア製造業者は、顧客との間で、ソフトウェアを使用する顧客の権利、ソフトウェアの機能についての保証及びライセンス有効期間について定めた契約を締結する。
  • 再販売業者が顧客に誤った種類又は数のソフトウェア・ライセンスを注文するよう助言し、したがってそれが顧客のニーズを満たさないものであった場合、顧客はライセンスを受領しないかもしれない。再販売業者は、受領されなかったライセンスをソフトウェア製造業者に返品したり、他の顧客に販売したりすることができない。

ステータス

IFRS-ICの決定

本人・代理人の検討にあたっては、契約の下での「約束の性質」が、特定された財又はサービスを「自ら提供する」履行義務であるのか、それとも「他の当事者によって提供されるように手配する」履行義務なのかの判断が求められます(IFRS15.B34)。この判断は、顧客に約束した特定された財又はサービスのそれぞれについて行います。このため、ソフトウェア・ライセンスの再販売業者が本人なのか代理人なのかを判断するには、「約束の性質」が何にあたるのかにつき次の2つの点の検討が必要です。

(a)顧客に提供される、財又はサービスの識別
(b)再販売業者は、標準ソフトウェア・ライセンスを顧客に移転する前に、それらを支配しているかどうかの評価

再販売業者の顧客との契約は、特定された種類及び数の標準ソフトウェア・ライセンスを顧客に対して提供する明示的な約束を含んでいます。

IFRS-ICの観察に拠れば、ソフトウェア製造業者と再販売業者の間で締結された販売契約において、再販売業者が顧客に提供する販売前の助言は黙示的な約束には該当しません。顧客との契約時点で再販売業者による助言の提供はすでに終了しており、すでに提供された助言が契約開始後に顧客に移転されることはなく、また、再販売業者が追加的な助言を提供することもありません。したがって、顧客との契約が締結された時点において、標準ソフトウェア・ライセンス以外の財又はサービスを再販売業者が顧客に対して移転することを、顧客は期待しているわけではありません。

このため、IFRS-ICは、質問に記載された前提において、顧客と再販売業者との間の契約で約束された財は、標準ソフトウェア・ライセンスのみであると結論付けました。よって、次のステップとして、この「特定された財」としての標準ソフトウェア・ライセンスを、再販売業者が、顧客に移転する前に支配しているかどうかを評価します。

顧客に移転する前に、再販売業者は標準ソフトウェア・ライセンスを支配しているかどうかの評価
標準ソフトウェア・ライセンスを顧客に移転する前に再販売業者が支配しているかどうかを評価するには、再販売業者と顧客の契約、再販売業者とソフトウェア製造業者の契約及びソフトウェア製造業者と顧客の契約の契約条件の検討を含む事実と状況の判断が必要です。

「支配」についてのIFRS第15号の原則及び要求事項を適用した結果、再販売業者が本人なのか代理人なのかが明らかではない場合には、IFRS第15号B37項の指標に基づき、再販売業者が標準ソフトウェア・ライセンスを顧客に移転する前に支配しているかどうかを評価します。IFRS-ICは、以下の点に着目しました。

  • 約束の履行に主たる責任を有するのは誰か(IFRS第15号B37項(a)):顧客に提供されたソフトウェア・ライセンスは、再販売業者がソフトウェア製造業者に発注し、ソフトウェア製造業者が顧客の名前でソフトウェア・ライセンスを発行して初めて存在する。ライセンスの発行及び認証、さらにソフトウェアの機能に対して責任を有しているのはソフトウェア製造業者であり、顧客にライセンスを提供するという約束を履行する責任をこれらの点において有しているのはソフトウェア製造業者である。
    一方、顧客にソフトウェア・ライセンスが提供される前後において顧客と相対する当事者であり、ライセンスが受け入れられなかった場合についての責任を負っているのは再販売業者であり、顧客にライセンスを提供するという約束を履行する責任をこれらの点において有しているのは再販売業者である。
  • 在庫リスクを有しているのは誰か(IFRS第15号B37項(b)):再販売業者は、顧客との契約締結前にソフトウェア・ライセンスを獲得しておらず、ソフトウェア・ライセンスを他の顧客に仕向けたりすることができない。したがって、再販売業者は、ライセンスが顧客に提供される前は在庫リスクを負わない。
    しかし、再販売業者は、顧客にライセンスが提供される前の、顧客がライセンスを受け入れるまでの間は在庫リスクを負っている。
  • 価格の設定に裁量権を有しているのは誰か(IFRS第15号B37項(c)):再販売業者は、ライセンスの価格設定に裁量権を持っている。しかし、例えば、ソフトウェア・ライセンスの市場が、事実上、再販売業者に価格設定について限定的な裁量しか与えない場合、価格設定の裁量は支配の評価にそれほど関連しない可能性がある。

IFRS-ICは、再販売業者が本人なのか代理人なのかに関する結論は関連する契約の契約条件を含む特定の事実及び状況に依存すると考えました。IFRS第15号の適用指針の「本人なのか代理人なのかの検討」のセクション(B34項~B38項)に規定されたフレームワークと要求事項の内容に基づいた判断が必要であり、その際、支配の評価に際してその指標はどの程度関連性があるのか、標準ソフトウェア・ライセンスが顧客に移転される前に再販売業者が支配しているという証拠をそれらがどの程度提供するのかを考慮することが求められます。

また、IFRS-ICは、再販売業者は、次の情報を開示することになるであろうと考えました。

  • 重要な会計方針に関する情報(IAS第1号「財務諸表の表示」)
  • IFRS第15号が要求する情報。ここには、履行義務に関する開示要求事項(IFRS第15号第119項)及びIFRS第15号を適用する際に行った、顧客との契約から生じる収益の金額及び時期の決定に著しく影響を与える判断(IFRS第15号第123項)が含まれる。

IFRS-ICは、2022年4月のIFRS-IC会議で、現状のIFRS基準の原則及び要求事項は、前提の状況において再販事業者が顧客に提供される標準ソフトウェア・ライセンスについて本人なのか代理人なのかを決定するための十分な基礎を示していると判断し、本件を基準設定プロジェクトの作業計画に追加しないことを決定しました。

本アジェンダ決定の内容は、IASB審議会の2022年5月の会議で検討され、反対されなかったため、アジェンダ決定として確定し、IFRIC Update(2022年4月)の追補として公表されました。

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