会計・監査ダイジェスト 会計及び監査を巡る動向 2020年3月号
会計・監査ダイジェストは、日本基準、国際基準、修正国際基準及び米国基準の会計及び監査の主な動向についての概要を記載したものです。※本号には、新型コロナウイルス関連情報が含まれています。
日本基準、国際基準、修正国際基準及び米国基準の会計及び監査の主な動向についての概要を記載したものです。※本号には、新型コロナウイルス関連情報が含まれています。
ハイライト
今月は、主に以下のような留意すべき情報のほか、新型コロナウイルス関連情報 についてもまとめています。
- IFRS移行企業の継続的な差異開示を廃止する「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」
差異開示について、継続的な開示を廃止し、初年度のみとする改正が行われている。 - 改正企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」等
2018年に公表された「収益認識に関する会計基準」等に、表示・注記事項に関する要求事項等を追加する改正が行われている。 - 実務対応報告第39号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い」
改正法人税法において創設されたグループ通算制度へ移行する場合であっても、繰延税金資産及び繰延税金負債の算定は改正前の税法の規定に基づくことができるとされている。
目次
日本基準
国際基準
新型コロナウイルス関連情報
1.日本基準
法令等の改正
【最終基準】
(1)IFRS移行企業の継続的な差異開示を廃止する「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」
金融庁は2020年3月6日、「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(以下、「本改正府令」))を公布した。なお、コメントを受けて、規定の一部について修正が行われているが、改正前の要求内容を変更するものではない。
本改正府令は、企業会計審議会における議論等を踏まえ、IFRS任意適用の拡大促進の観点から、指定国際会計基準を適用する企業の開示負担の軽減等を図るため、企業内容等の開示に関する内閣府令について所要の改正を行うものである。具体的には、日本基準の適用企業が指定国際会計基準(IFRS)の適用に移行した場合、従来は差異開示が移行後も継続的に要求されていたが、これを廃止し、初年度のみの開示とする改正が行われている。
本改正府令は、公布の日(2020年3月6日)から施行されている。
あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年3月9日発行)
(2)時価の算定に関する会計基準等に対応した「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」等
金融庁は2020年3月6日、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」等(以下、「本改正府令等」)を公布した。なお、改正案から重要な変更はない。
本改正府令等は、企業会計基準委員会(ASBJ)が企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」を公表、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」を改正し金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項の注記を導入したこと等に伴い、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等について所要の改正を行うものである。
本改正府令等は、公布の日(2020年3月6日)から施行されている。
あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年3月6日発行)
(3)時価の算定に関する会計基準等の公表を受けた「会社計算規則の一部を改正する省令」
法務省は2020年3月31日、「会社計算規則の一部を改正する省令」(以下、「本省令」)を公布した。省令案からの変更はない。
本省令は、2019年7月4日に企業会計基準委員会(ASBJ)から公表された「時価の算定に関する会計基準」等、及び2020年3月6日に金融庁から公表された「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」等を受け、会社計算規則の改正を行うものである。
改正の概要
会社計算規則の主な改正内容は、以下のとおりである。
- 金融商品に関する注記として表示すべき事項に「金融商品の時価の適切な区分ごとの内訳等に関する事項」が追加された(第109条第1項第3号)。
- ただし、有価証券報告書の提出義務がある大会社以外の株式会社は、当該注記事項の省略が認められる(第109条第1項ただし書)
「金融商品の時価の適切な区分ごとの内訳等に関する事項」の内容、範囲等
金融商品の時価等の開示に関する適用指針において「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」として注記を求められる事項であったとしても、各株式会社の実情を踏まえ、計算書類においては当該事項の注記を要しないと合理的に判断される場合には、計算書類において当該事項について注記しないことも許容されることが、法務省の考え方として示されている(「会社計算規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集の結果について 4.)。
施行期日及び経過措置
公布の日(2020年3月31日)から施行されている。
なお、本省令による改正後の会社計算規則(以下、「新会社計算規則」)の規定は、2021年4月1日以後に開始する事業年度に係る計算書類及び連結計算書類について適用し、同日前に開始する事業年度に係るものについては、なお従前の例によるものとする。
ただし、2020年3月31日以後に終了する事業年度に係るものについては、新会社計算規則の規定を適用することができるものとする。
あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年4月1日発行)
会計基準等の公表(企業会計基準委員会(ASBJ))
【最終基準】
(1)改正企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」等
ASBJは2020年3月31日、改正企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」等(以下、「本会計基準等」)を公表した。
本会計基準等は、早期適用時に必要な最低限の注記のみを定めることとした、2018年公表の「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、「2018年会計基準」)を改正したものであり、収益認識に係る表示及び注記事項の定めを2018年会計基準に追加するとともに、設例・開示例の追加・見直しなど所要の修正を反映したものである。
本会計基準等は、注記事項の基本的な方針として、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下、「IFRS第15号」)と同様の開示目的及び重要性の定めを含めるとともに、原則としてIFRS第15号の注記事項のすべての項目を含めることとしている。
しかしながら、収益認識に関する注記の開示目的は、顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示することとされており、どの注記事項にどの程度の重点をおき、どの程度詳細に記載するべきかを判断するにあたっては、この開示目的に照らして判断するとされている。したがって、企業は重要性に乏しい詳細な情報を大量に記載したり、特徴が大きく異なる項目を合算したりすることにより有用な情報が不明瞭とならないように、注記を集約又は分解することが求められる。
本会計基準等の主なポイントは以下の通りである。
表示について追加された主な定め
- 損益計算書上及び貸借対照表上の表示科目
- 顧客との契約から生じる収益の区分表示又は注記
- 重要な金融要素が含まれる場合の取扱い
注記について追加された主な定め
- 重要な会計方針の注記
- 収益認識に関する注記
(1)収益の分解情報
(2)収益を理解するための基礎となる情報
(3)当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報
なお、本会計基準が適用される時に廃止されることとなる企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」において求められていた工事契約等から損失が見込まれる場合の注記も引き継いで定められている。
本会計基準等は、原則として2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、別途早期適用の定めが設けられている。また、適用初年度の取扱いに関する定めがある。
あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年4月7日発行)
(2)実務対応報告第39号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い」
ASBJは2020年3月31日、実務対応報告第39号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い」(以下、「本実務対応報告」)を公表した。
本実務対応報告において、2020年3月27日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第8号)において創設されたグループ通算制度について、2020年3月27日(以下、「改正法人税法の成立日」)以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む。)に係る税効果会計の適用に関して、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」第44項の定めを適用せず、改正前の税法の規定に基づくことができるとされている。
これは、同項は決算日において国会で成立している税法の規定に基づき繰延税金資産及び繰延税金負債を算定することを要求しているが、グループ通算制度に関する税効果会計の取扱いについては、繰延税金資産の回収可能性の判断に関する考え方が必ずしも明らかではなく、グループ通算制度の適用を前提とした税効果会計の適用を行うことが実務的に困難であることから、特例的な取扱いが定められたものである。そのため、本実務対応報告の会計処理が適用されるのは、「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」及び「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」に関してASBJによる必要な改廃が行われるまでの間とされている。
本実務対応報告の範囲は、改正法人税法の成立日の属する事業年度において連結納税制度を適用している企業及び改正法人税法の成立日より後に開始する事業年度から連結納税制度を適用する企業とされている。また、本実務対応報告の会計処理の対象は以下の項目とされている。
- グループ通算制度への移行
- グループ通算制度への移行にあわせて単体納税制度の見直しが行われた項目
なお、本実務対応報告は、公表日(2020年3月31日)以後適用されている。
あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2019年4月6日発行)
(3)企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」
ASBJは2020年3月31日、企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」(以下、「本会計基準」)を公表した。
本会計基準では、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目における会計上の見積りの内容について、識別した項目ごとに以下の事項を注記することを定めている。
- 項目名
- 当年度の財務諸表に計上した金額
- 会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
本会計基準は、2021年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用すること(早期適用可)とされている。
あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年4月7日発行)
(4)改正企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」
ASBJは2020年3月31日、改正企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下、「本改正基準」)を公表した。本改正基準の主な内容は次のとおりである。
関連する会計基準等の定めが明らかでない場合であっても、採用した会計処理の原則及び手続の概要を開示することが要求される。
未適用の会計基準等に関する注記の定めが、専ら表示及び注記事項を定めた会計基準も含めた会計基準全般に適用されることが明確化された。
本改正基準は、2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用すること(早期適用可)とされている。
あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年4月7日発行)
(5)「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件」等の一部改正
金融庁は2020年3月19日、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件」等の一部改正(以下、「本改正」)を公表した。
本改正により、ASBJが2019年12月31日までに公表した次の会計基準について、連結財務諸表規則第1条第3項及び財務諸表等規則第1条第3項に規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に追加指定された。
・企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」(2019年7月4日公表)
・企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(2019年7月4日公表)
・企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(2019年7月4日公表)
本改正は、公布の日(2020年3月19日)から適用されている。
あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年3月23日発行)
監査関連
【最終基準】
(1)内部統制監査基準等の改訂を受けた「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」
金融庁は2020年3月23日、「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(以下、「本改正府令」)を公布した。
これは、2019年12月に実施された「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(以下、「内部統制監査基準等」)の改訂を踏まえ、関連する内閣府令等において、内部統制監査報告書の記載事項の改正(新設された記載区分の追加、及び記載順序の変更への対応)を行ったものである。
本改正府令は公布の日(2020年3月23日)から施行するものの、改正後の財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令の規定については、2020年3月31日以後終了する事業年度及び連結会計年度に係る財務諸表、財務書類及び連結財務諸表の内部統制監査について適用し、同日前に終了する事業年度等に係る財務諸表等の内部統制監査については、なお従前の例によるとされている。
あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年3月24日発行)
【公開草案】
(1)監査報告書への「その他の記載内容」の記載及びリスク・アプローチの強化を含む監査基準及び中間監査基準の改訂案
金融庁は2020年3月23日、企業会計審議会が取りまとめた監査基準及び中間監査基準の改訂に関する公開草案(以下、「本公開草案」)を公表した。
本公開草案では、企業内容等に関する情報の開示について、経営者による財務諸表以外の情報の開示の充実が進んでおり、今後さらなる充実が期待される中、監査した財務諸表を含む開示書類のうち財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容である「その他の記載内容」について、監査人が実施すべき実施する手続を明示し、監査報告書の必要な記載を求めることで、監査人によるその他の記載内容に対する役割を明確化することが提案されている。
また、近年の公認会計士・監査審査会の検査結果における指摘事項への対応や、国際的な監査基準との整合性を確保しつつ、監査の質の向上を図ることを目的として、リスク・アプローチに基づく監査の実施にあたって、固有リスクと統制リスクを分けて評価することを求めることが提案されている。また、特別な検討を必要とするリスクの定義を固有リスクの評価を踏まえたものとすること、会計上の見積りについて適切に評価されたリスクに対応した深度ある監査手続が実施されるよう明確化することも提案されている。
本公開草案では、実施時期等について以下のように提案されている。
- 「その他の記載内容」に関する改訂については、2022年3月決算に係る財務諸表の監査から実施する。ただし、2021年3月決算に係る財務諸表の監査から実施することができる。(注:「その他の記載内容」に関する改訂については、中間監査基準に対する改訂は提案されていない。)
- リスク・アプローチの強化に向けた改訂については、2023年3月決算に係る財務諸表の監査及び2022年9月に終了する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から実施する。ただし、それ以前の決算に係る財務諸表の監査及び中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から実施することを妨げない。
また、監査基準及び中間監査基準の実施にあたり関係法令において所要の整備を行うことが適当とされているほか、これらの基準の実務への適用に関して、日本公認会計士協会において実務の指針を早急に作成することが要請されている。
コメントの締切りは2020年4月21日である。
あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年3月25日発行)
INFORMATION
金融庁は2020年3月24日、「「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~」の再改訂版(以下、「本再改訂版」)を公表した。本再改訂版は、金融庁に設置された「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」(令和元年度)(以下、「本検討会」)におけるコード改訂に向けた議論を踏まえ、取りまとめられたものである。
主な改訂内容
- 日本の上場株式以外の資産に投資する機関投資家への本コードの適用拡大
- サステナビリティに関する課題の考慮
- 企業年金等のアセットオーナーによるスチュワードシップ活動の後押し
- 議決権行使に係る賛否の理由の公表
- 機関投資家向けサービス提供者に関する原則
適用時期
本検討会は、現在コードを受け入れている機関投資家等に対して、本再改訂版公表の遅くとも6ヶ月後(2020年9月末)までに、改訂内容に対応した公表項目の更新(及び更新を行った旨の公表と金融庁への通知)を行うことを期待するとしている。
あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年3月26日発行)
(2)「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(令和2年度)」
金融庁は2020年3月27日、「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(令和2年度)」を公表した。
主なポイントは以下のとおりである。
- 2020年3月期以降の有価証券報告書の作成・提出に際しての留意事項として、開示府令の改正点(「経営方針・経営戦略等」、「事業等のリスク」、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」及び「監査の状況」)を挙げており、これらを対象に有価証券報告書レビューの法令改正関係審査を実施する。
- 有価証券報告書レビューの重点テーマ審査については、セグメント情報、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に着目して対象会社を選定する。
- 前年度の有価証券報告書レビューの審査結果として、法令改正関係審査及び重点テーマ審査に関する「適切ではないと考えられる事例」が指摘されている。
あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年4月2日発行)
日本基準についての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(日本基準)へ
2.国際基準
我が国の任意適用制度に関する諸法令等(金融庁)
【最終基準】
(1)「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件」等の一部改正
金融庁は2020年3月19日、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件」等の一部改正(以下、「本改正」)を公表した。
本改正により、国際会計基準審議会(IASB)が2019年12月31日までに公表した次の国際会計基準について、連結財務諸表規則第93条に規定する指定国際会計基準に追加指定された。
- 国際財務報告基準(IFRS)第9号「金融商品」の改訂(2019年9月26日公表)
- 国際会計基準(IAS)第39号「金融商品:認識及び測定」の改訂(2019年9月26日公表)
- 国際財務報告基準(IFRS)第7号「金融商品:開示」の改訂(2019年9月26日公表)
本改正は、公布の日(2020年3月19日)から適用されている。
あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年3月23日発行)
会計基準等の公表(国際会計基準審議会(IASB)、IFRS解釈指針委員会)
【討議資料】
(1)討議資料「企業結合 - 開示、のれん及び減損」
IASBは2020年3月19日、討議資料「企業結合ー開示、のれん及び減損」(以下、「本討議資料」)を公表した。
IASBは、IFRS第3号「企業結合」の適用後レビューにより識別された論点について、2015年から開始された「のれんと減損」リサーチプロジェクトの中で審議を行ってきた。本討議資料において議論されている論点は、企業結合に関する開示の拡充、のれんの減損テストの有効性の向上及び簡略化、のれんの償却の再導入の可否等である。
IASBは、その予備的見解において、企業結合における開示の拡充、特に、当初設定した企業結合の目的がその後どの程度達成されているかについて、企業の経営者がモニターしている情報を開示することを提案している。また、のれんの減損損失をより早期に認識するため、のれんの減損テストモデルの変更を検討したものの、適切な改善案は見つからなかったとしている。一方、複雑でコストがかかりすぎるとの指摘を従来から受けていた減損テストの簡略化についてはのれんや耐用年数が不確定な無形資産等について要求される年次減損テストを廃止し兆候がある場合にのみ減損テストを行うこと、また、使用価値算定における一部の要求事項の弾力化を提案している。
なお、のれんの償却については、のれんの償却を再導入すべきとする明確な証拠がないとして、現行の会計処理を変更しないことが提案されている。また、企業結合時における無形資産の識別・認識の変更を望む意見については、見直しをしないことを提案している。
本討議資料に対するコメントの締切りは2020年9月15日である。IASBは、受け取ったコメントを踏まえて、次のステップを検討する予定としている。
あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年3月30日公表)
INFORMATION
(1)「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(令和2年度)」
金融庁は2020年3月27日、「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(令和2年度)」を公表した。有価証券報告書レビューの重点テーマ審査には、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」が含まれている。
本件については、1.日本基準 INFORMATION(2)を参照のこと。
IFRSについての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(IFRS)へ
3.修正国際基準
4.米国基準
会計基準等の公表(米国財務会計基準審議会(FASB))
【最終基準(会計基準更新書(Accounting Standards Update; ASU))】
(1)ASU 第2020-03号「ASCの改訂:金融商品」の公表(2020年3月9日 FASB)
本ASUは、金融商品に関する現行規定を限定的に改訂するものである。FASBは、意図しない形で適用されること等を回避するために会計基準を改善・明確化するプロジェクトを進めており、本ASUの公表もその一環として行われたものである。当該プロジェクトで取り扱われている事項は、基本的には、現在の会計実務に重要な影響を与えたり、その適用にあたって多くの企業にコストをかけさせたりすることは想定されていない。なお、本ASUは、利害関係者の認識を高めるために、同プロジェクトの下での他のASCの改訂とは別に公表されている。
本ASUは全部で7つの項目から成り、リースの貸手はリース期間に基づき正味リース投資未回収額に対する信用損失引当金を計上する旨がASU第2016-13号「金融商品 - 信用損失(トピック326)」に関して明確化されたほか、ASC内の相互参照の追加などが行われている。
本ASUの適用時期は取り扱われている項目によって異なっており、公開営利企業については一部の改訂は基準公表により即時適用される。ASU第2016-13号に関連する改訂は、同ASUをすでに適用している企業の場合、2019年12月15日より後に開始する事業年度及び期中期間から適用が開始され、ASU第2016-13号を初めて適用した期の期首剰余金を遡及的に調整する。ASU第2016-13号をまだ適用していない企業については、本ASUをASU第2016-13号と同時に適用する。
(2)ASU 第2020-04号「参照金利改革(トピック848) - 財務報告へ及ぼす影響に対する軽減措置」の公表(2020年3月12日 FASB)
現在進行中の参照金利改革によりLIBOR等に代表される参照金利の公表が将来において中止されることが予想されており、当該金利指標を参照している契約は、今後契約変更等を迫られることになる。また、参照金利の消滅はヘッジ会計にも影響を及ぼすこととなる。
本ASUは、関連する契約または取引を有している全ての企業に対し、参照金利改革から生じる潜在的な会計処理上の負荷を軽減するための選択可能なガイダンスを提供するものである。
契約変更に関する軽減措置の概要は以下のとおりである。
- 軽減措置の対象となる契約変更は、参照金利改革により参照金利を別の参照金利に代替するもの、もしくはこれと同時に行われるその他の契約条項の変更であって、上記の参照金利変更に関連するものに限られる。
- 軽減措置の適用を選択した場合、契約変更は既存契約の継続として会計処理される。組込デリバティブの区分処理要否に関する従前の評価の見直しは要求されない。
- なお、本軽減措置を適用する場合は、措置の対象となる全ての契約変更に対して、首尾一貫して適用する必要がある。
ヘッジ会計に関する軽減措置は複数設けられているが、いずれも契約変更に関する軽減措置とは異なり個別のヘッジ関係ごとの選択適用が可能であり、その主なものの概要は以下のとおりである。
全般 |
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公正価値ヘッジ |
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キャッシュフロー・ヘッジ |
|
その他、2020年1月1日より前に満期保有目的に分類していた債券が参照金利改革の影響を受ける金利を参照している場合に、本ASUの発行日以降1回に限り、売却、分類変更等を行うことができるとしている。
本ASUに含まれる契約変更及びヘッジ会計の規定は、2020年3月12日(本ASUの発行日)が含まれる期中報告期間の期首日から、もしくはそれ以降の任意の日から、将来に向かって適用することができる。これらの軽減措置は限定された期間においてのみ適用可能であり、原則として2022年12月31日を超えては適用できない。
米国基準についての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(米国基準)へ
新型コロナウイルス関連情報
COVID-19(コロナウイルス)の感染拡大を受けて、会計・開示・監査の様々な局面において懸念や論点が生じている。
この問題については、様々な当局や団体から会計処理の検討にあたっての留意事項や、開示要求の緩和等の対応情報が公表されており、以下では4月14日時点で公表済みとなっているものの中からその主なものへのリンクを掲載している。
日本基準関連
日本公認会計士協会
日本取引所グループ
企業会計基準委員会
国際財務報告基準(IFRS)関連
米国会計基準(USGAAP)関連(英語)
KPMGジャパン
執筆者
有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部