交換可能性が長期的に欠如している場合の為替レートの決定(IAS第21号に関連) - IFRICニュース2018年9月 - アジェンダ却下確定
IFRS解釈指針委員会ニュース(2018年9月) - 交換可能性が長期的に欠如している場合の為替レートの決定(IAS第21号に関連)については、2018年9月のIFRS-IC会議で審議された内容を更新しています。
交換可能性が長期的に欠如している場合の為替レートの決定(IAS第21号に関連)については、2018年9月のIFRS-IC会議で審議された内容を更新しています。
関連IFRS
IAS第21号「外国為替レート変動の影響」
概要
ベネズエラでは、自国通貨を他国通貨に交換する外国為替取引が長期間制限されている。そのため、公的な為替交換レートは自国通貨の減価を反映しておらず、その実勢から著しくかけ離れたものとなっている。財務報告を行う企業が、ベネズエラにおける在外営業活動体の財務諸表を表示通貨に換算し、連結する際に、どのような為替レートを用いるべきか。
本件は2014年11月のIFRS-IC会議でも審議されており、当時はアジェンダに取り上げないこととされたが、その後状況はさらに悪化しているとして、再度検討すべきかが取り上げられたものである。
ステータス
IFRS-ICの決定
IFRS-ICは、2018年6月のIFRS-IC会議で、この問題を以下の状況を前提として検討した。
- 在外営業活動体の機能通貨を他国通貨に交換することが、その国の公的な管理下にあり、公的な為替交換レートが設定されている。
- 在外営業活動体の機能通貨を他国通貨に交換する外国為替取引が長期間制限されている。すなわち、IAS第21号第26項に記載されているように一時的にのみ制限されているわけではなく、かつ、報告期間末後もその状況は解消していない。
- 外国為替取引の長期間の制限により、公的な為替交換レートによっても在外営業活動体の機能通貨を他国通貨に交換することができない。
現在のベネズエラは上記が該当する状況にある。IFRS-ICは、2018年6月のIFRS-IC会議で、上記の状況において、IAS第21号の適用において公的な為替交換レートを用いることが要求されるかどうかについて審議し、以下の通り指摘した。
- 企業は、IAS第21号第39項及び第42項に基づき、在外営業活動体の業績及び財政状態を以下のように換算することとなっている。
- 在外営業活動体の資産及び負債を決算日レートで換算する。
- 在外営業活動体の収益及び費用を取引日レートで換算する(ただし、在外営業活動体の機能通貨が超インフレ経済下における通貨である場合は決算日レートで換算する)。
- IAS第21号第8項において、決算日レートとは、報告期間の末日における直物為替レートと定義されており、ここで直物為替レートとは即時の受渡しに係る為替レートを言う。IFRS-ICは、これは、法的な為替交換メカニズムを通して、企業が報告期間の末日にアクセスできる為替交換レートを指すと結論付けた。よって、公的な為替交換レートが決算日レートの定義を満たすかどうか(すなわち、企業によりアクセスできる為替交換レートであるかどうか)、また、IAS第21号第39項を適用する上での取引日レートと言えるかどうかを評価する必要がある。
- 経済環境は刻々と変化するので、各決算日において公的な為替交換レートが決算日レート(及び、該当がある場合には、取引日現在の為替レート)の定義を満たすかどうかを再評価することが重要である。
- 財務諸表利用者の理解に資するため、以下の開示規定を参考に、このような状況下における関連情報を開示することが重要である。
- 重要な会計方針、及び、当該会計方針のうち財務諸表上の認識額に最も重要な影響を与えるものにつき、その適用においてどのような判断が要求されるかについての開示(IAS第1号第117項~第124項)
- 見積りの不確実性の発生要因のうち、翌年度中に資産及び負債の帳簿価額に重要性のある修正を生じるリスクがあるものに関する情報(感応度分析を含む)の開示(IAS第1号第125項~第133項)
- 企業集団、共同支配企業及び関連会社の資産へのアクセス又はこれらの利用、及び負債の決済を行う能力に関する重大な制限の内容及び程度(IFRS第12号第10項、第13項、第20項、第22項)
IFRS-ICは、2018年9月のIFRS-IC会議で、どのような場合に公的な為替交換レートを換算に用いるべきかについて、現状のIFRS基準書の要求事項は十分な判断の基礎を示していると判断し、アジェンダに追加しないことを決定した。
一方で、IFRS-ICは、直物為替レートが観察可能ではない場合に、在外営業活動体の業績及び財政状態を表示通貨に換算する上で報告企業がどのような為替レートを使用すべきかに関する明確な規定が存在しないことに留意し、上記の決定に加え、限定的な基準開発の可能性について調査・分析を進めることとした。
今後のIFRS-IC会議にて、上記の調査・分析について引き続き審議する予定である。