RS会計基準のデュー・プロセスにおいては、利害関係者は基準についての適用上の疑問についてIFRS解釈指針委員会(IFRS-IC)に質問を提出することができます。審議の結果、基準設定プロジェクトとしてワークプランに追加する必要はないと決定されると、その理由がアジェンダ決定の中で説明されます。

アジェンダ決定はIFRS基準書を構成するものではありませんが、実務に直結するテーマを取り上げることが多く、なかには実務に非常に大きな影響を与えるものもあります。

IFRS会計基準の適用企業や専門家にとっては要チェックです。

暫定的なアジェンダ決定等

Status 暫定決定
2025年11月25日までコメントを募集
論点 為替差額を生じさせた項目から生じる収益及び費用と同じ区分に為替差額を分類するというB65項の規定を、連結上相殺消去されているグループ内の貨幣性項目から生じる為替差額にどのように適用するか。
アジェンダ決定の要約

見解1:

相殺消去後の連結上は、分類すべき「同じ区分」が存在しないため、デフォルト区分である営業区分に分類

見解2:
相殺消去前に分類されていたであろう区分と「同じ区分」に分類(過大なコストまたは労力を伴う場合は営業区分に分類)

全委員(14名)が見解1を支持、7名の委員が見解2も支持。

対象となる企業 機能通貨が異なるグループ会社間での債権債務がある企業
Status 暫定決定
2025年11月25日までコメントを募集
論点 蓄電池オフテイク契約において、特定された資産(蓄電池)の使用から生じる経済的便益のほとんどすべてを得る権利を顧客が有しているかをどのように判断するか。
アジェンダ決定の要約
蓄電池の使用から生じる経済的便益は、電力をグリッドに出力し売却する時点で生じるのではなく、蓄電自体から生じると整理、充電・放電を指図する独占的権利を有することで電力小売業者は蓄電池の使用から生じる経済的便益のほとんどすべてを得る権利を有しているとした。
対象となる企業 蓄電池オフテイク契約の当事者となる企業
Status 暫定決定
2025年10月6日までコメントを募集
論点 金融商品の組成に直接起因するものの、契約を締結する前に発生したコストが取引コストの定義を満たすかどうか
アジェンダ決定の要約
当該事項による広範な影響は想定されない(企業は通常、金融商品が認識され、取引コストとして当該金融商品(負債)の償却原価に含めるまで、当該コストを前払金等として繰り延べている)
対象となる企業 金融商品を発行・組成する契約の当事者となる企業
Status 暫定決定
2025年10月6日までコメントを募集
論点 負債の早期償還オプションが区分処理するデリバティブに該当するか否かを貸手に対する金利補填の観点から説明するIFRS第9号B4.3.5項(e)(ii)において、補填の程度を評価する際に参照される「企業が受け取るであろう実効金利」の「企業」が「貸手」を指すのか、「報告企業」(すなわち借手)を指すのか
アジェンダ決定の要約
当該事項による広範な影響は想定されない(B4.3.5項(e)(ii)における「企業」は貸手を意味する)。
対象となる企業 早期償還オプションのある金融負債を発行する企業
Status ドラフト
2025年10月6日までコメントを募集
論点 IAS第1号「財務諸表の表示」を参照するアジェンダ決定10件について、IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」に継承された要求事項への参照に置き換えるなどしてて存続させる。
アジェンダ決定の要約
財務諸表における情報の表示、重要性及び集約に関する全般的な要求事項に言及している9件のアジェンダ決定の参照先をIAS第1号からIFRS第18号の新規または修正後の要求事項に置き換えるとともに、アジェンダ決定「サプライチェーン・ファイナンス契約―リバース・ファクタリング」(2020年12月)の事例に対するIFRS第18号の適用を提示する。
対象となる企業 IAS第1号を参照するアジェンダ決定を参照する企業

2025年1月以降に最終化したアジェンダ決定

論点 超インフレの指標となる、国の経済環境の特徴とは何か
アジェンダ決定の要約

どのような場合に超インフレ経済となるかの評価に関する要求事項の理解に不統一の兆候はほとんどなく、利害関係者はIAS29.3における指標を評価するにあたって判断を用いて、それらの指標又は他の指標に異なるウェイトを割り当てる場合がある

対象となる企業 超インフレ認定される可能性がある経済環境下にある企業
論点 他の企業の義務に対して保証を行う場合に、どの基準書が適用されるか
アジェンダ決定の要約

すべての契約条件を分析して判断を適用したうえで、IFRS第9号の金融保証契約、IFRS第17号の保険契約に該当 するか検討し、該当しない場合は他の基準書の要求事項を考慮する

対象となる企業 他の企業の義務に対して保証を発行する企業
論点 教育機関の夏休みを考慮して、授業料から生じる収益を認識する期間をどのように決定するか
アジェンダ決定の要約

当該事項による広範な影響は想定されない(収益を認識する期間の相違は事実と状況による)

対象となる企業 授業料から生じる収益認識がある企業
論点 カーボンクレジットおよび研究・開発活動に係る企業の支出が無形資産の認識要件を満たすか
アジェンダ決定の要約

研究・開発活動に対する支出の会計処理に、重要性のある不統一はない(カーボンクレジットは別プロジェクトで検討)

対象となる企業 カーボンクレジットおよび研究・開発活動に支出を行う企業