IASB、IFRIC解釈指針第23号「法人所得税の処理に関する不確実性」を公表
IFRSニュースフラッシュ - IASBは2017年6月7日にIFRIC解釈指針第23号「法人所得税の処理に関する不確実性」を公表しました。
IASBは2017年6月7日にIFRIC解釈指針第23号「法人所得税の処理に関する不確実性」を公表しました。
Article Posted date
13 June 2017
ハイライト
適用範囲
本解釈指針は、IAS第12号のいかなる現行の規定も変更しておりません。しかしながら、法人所得税の処理における不確実性が存在する場合、税金負債または税金資産の認識及び測定の前提となる、課税所得(損失)、課税標準、未使用の繰越欠損金、未使用の繰越税額控除及び税率の決定について、本解釈指針の内容を適用することとなります。
本解釈指針の概要
本解釈指針は、以下の事項を規定しています。
- 不確実性のある法人所得税の処理を別個に検討すべきか
- 税務当局による税務調査に関する仮定
- 課税所得(損失)、課税標準、未使用の繰越欠損金、未使用の繰越税額控除及び税率の決定
- 事実及び状況の変化に関する考慮事項
- 開示
- 適用時期及び経過措置
本適用指針の内容
- 法人所得税の処理の不確実性を別個に検討すべきかどうか
本解釈指針では、複数の法人所得税の処理の不確実性を、それぞれ別個に検討するか、集合的に検討するかについて、不確実性の解消方法をより良く予測する方法に基づいて決定します。 - 税務当局による税務調査に関する仮定
本解釈指針では、法人所得税の処理の不確実性が課税所得(損失)、課税標準、未使用の繰越欠損金、未使用の繰越税額控除及び税率の決定に影響があるかどうか、またどのように影響するかを評価するにあたり、以下を仮定することとしています。- 税務当局は、有する権限に基づき、報告された金額を調査する権限を有する
- 調査に当たっては、関連するすべての情報についての十分な知識を有する
- 課税所得(損失)、課税標準、未使用の繰越欠損金、未使用の繰越税額控除及び税率
本解釈指針では、 企業は、IAS第12号に従い、不確実性のある単独または複数の税務処理が税務当局に容認される「可能性が高い(probable)」かどうかを検討することとしています。- 可能性が高いと結論付けた場合、課税所得(損失)、課税標準、未使用の繰越欠損金、未使用の繰越税額控除及び税率は、税務申告において使用されたかまたは使用される予定の税務処理に整合するように決定します。
- 可能性が高くないと結論付けた場合、課税所得(損失)、課税標準、未使用の繰越欠損金、未使用の繰越税額控除及び税率の決定において、以下のいずれかの方法のうち、不確実性の解消方法をよりよく予想する方法により、不確実性の影響を反映します。
- 最頻値法(起こりうる結果の範囲内で、最も可能性が高い1つの数値を選択する方法)
- 期待値法(起こりうる結果の範囲内の、確率による加重平均値を算定する方法)
なお、累進確率法は認められておりません。
不確実な税務処理が繰延税金と当期税金の両方に影響を与える場合には、企業は両方について一貫した判断及び見積もりを行うこととされています。
- 事実及び状況の変化の考慮
本解釈指針では、以下のとおり規定しています。
- 本解釈指針で要求されている判断及び見積りのもととなる事実や状況の変化、あるいは判断や見積りに影響を与える新たな情報があった場合には、判断及び見積もりを再評価します。
- 事実及び状況の変化又は新たな情報による再評価の影響は、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従って反映することとなります。
- 報告期間後に発生した変化が、修正を要する後発事象か修正を要しない後発事象のどちらであるかの判断は、IAS第10号「後発事象」に従うこととなります。
- 判断及び見積りのもととなる事実や状況の変化、あるいは判断や見積りに影響を与える新たな情報には、税務当局による調査・行動、制度変更、再調査権限の期間満了等が含まれます。他方で、税務当局による同意・不同意がないこと自体は、これに該当しないとされています。
開示
本解釈指針は新たな開示要求を規定せず、現行の開示要求との関連性を強調しています。すなわち、法人所得税の処理に不確実性が存在する場合には、以下の対応する開示要求にてらし、開示すべきか否かを決定することとなります。
- 課税所得(損失)、課税標準、未使用の繰越欠損金、未使用の繰越税額控除及び税率を決定するにあたって行った判断(IAS第1号「財務諸表の表示」の第122項)。
- 課税所得(損失)、課税標準、未使用の繰越欠損金、未使用の繰越税額控除及び税率の決定にあたって使用した判断及び見積りに関する情報(IAS第1号の第125項から第129項)。
- 税務当局が不確実な税務処理を認める可能性が高いと企業が判断した場合、その潜在的な影響を偶発事象として開示するか(IAS第12号の第88項)。
適用時期及び移行措置
本解釈指針は、2019年1月1日以後開始する年次の報告年度から適用されます。早期適用する場合には、その旨を開示することとされています。
適用初年度においては、以下のいずれかの方法により本解釈指針を適用することとなります。
- 後知恵(hindsight)を使用せずに利用可能である場合、IAS第8号に従い遡及適用する。
- 適用開始時に、本解釈指針の適用による累積的影響額を期首の利益剰余金の調整により認識する。