KPMGでスポーツビジネスを立ち上げてから、まもなく4年。このタイミングで、KPMGのスポーツイノベーションチームのスポーツビジネスに対する想いや、目指している未来、そしてどのような価値を提供できるプレイヤーなのかを紹介します。
なお、本稿は2025年8月にnoteに掲載した記事を加筆・修正のうえ転載しています。文中の数値等は、note執筆時のものであることをお断りします。
1.はじめに
スポンサーやイベント支援にとどまらず、スポーツを起点に社会課題を解決し、地域や企業の持続可能な成長を支える――そのような視点で、KPMGのスポーツイノベーションチームはコンサルティングファームとしての知見とネットワークを活かした新たな取組みを進めています。
背景には、スポーツが持つ「共感」「巻き込み」「地域とのつながり」といった独自の力があります。これを、デジタル・サステナビリティ・ガバナンスといったKPMGの強みと掛け合わせることで、スポーツの可能性を最大化し、社会に新たな価値を提供できると考えたのです。
2.スポーツチームで掲げた目標やビジョンと現在地
スポーツイノベーションチームは、立ち上げ当初から次の3つのビジョンを掲げてきました
- スポーツを通じて社会課題を解決する
- スポーツの価値を再定義し、産業としての成長を支援する
- 地域・企業・ファンを巻き込んだ共創型のエコシステムを構築する
このビジョンを実現するために、次のようなサイクルを大切にしています。
「示唆に富むインサイトを発信し、マーケットを揺さぶる」 → 「言うだけでなく、現場で実践して見せる」 → 「創り上げたソリューションを多くのステークホルダーに活用してもらう」このサイクルを回し続けることに、強いこだわりを持っています。
立ち上げから4年が経とうとする今、JリーグやWEリーグとの共創プロジェクトを皮切りに、プロ野球、バスケットボール、eスポーツ、さらには地方自治体や教育機関との連携へと広がりを見せています。スポーツイノベーションチームの取組みは、単なるコンサルティングにとどまらず、スポーツを起点とした社会変革の実践へと進化しています。
当初は2人からのスタートでしたが、現在、チームは20人を超えるメンバーで構成されており、公認会計士、クラブスタッフ、広告会社出身者、企業のスポーツ担当、金融・戦略コンサルタント、SIerなど、多様な専門性とバックグラウンドを持つプロフェッショナルが集まっています。共通しているのは、「スポーツを通じて社会を良くしたい」という強い想い。
KPMGの柔軟な働き方を活かしながら、現場主義と共創を大切にし、クライアントや地域とともに未来を描くプロジェクトを推進しています。
【KPMGが取り組む領域マップ】
「社会課題」「先進テクノロジー」を起点とする価値創造をメインに展開しています。社会課題解決のキードライバーに“スポーツ”も位置付けており、湘南ベルマーレや神戸ストークス、Jリーグ、行政機関等との取組みを中心に事業モデルの開発を進めています。
【スポーツイノベーションチームのVisionと戦略】
Business Innovation Unitに属するスポーツイノベーションチームは、「スポーツの価値を再定義し、従来と異なるお金の流れ・産業構造への転換に向けたゲームチェンジャーになる」ことをVisionに、さまざまなステークホルダーとの共創を促進しています。
3.プロジェクト事例紹介
<3-1:湘南ベルマーレとの共創>
Jリーグクラブ・湘南ベルマーレとのプロジェクトでは、ファンエンゲージメントの向上と地域共創型のデジタルプラットフォーム構築を支援しています。湘南ベルマーレとの取組みでは、クラブの原点である「地域に支えられてきた」という想いを軸に、スポーツを通じた地域社会・地域経済の活性化に取り組んでいます。ベルマーレとの共創はスポーツイノベーションチームの原点であり、未来を切り拓く核となる挑戦なのです。
その取組みの一例として、私たちは、デジタルを活用した地域競争型プラットフォーム「SDGs engine」*¹の構築・運用を支援しています。これは、クラブのホームタウンである9市11町の自治体、パートナー企業、大学などが連携し、地域課題の解決に向けたアクションを共創するための仕組みです。このプラットフォームでは、企業や団体がSDGsに基づくアイデアを投稿し、他のステークホルダーが共感・連携することで、単独では実現が難しい取組みをスケールアップさせます。地域の課題を“みんなごと”として捉え、解決に向けた動きを加速させています。
さらに、活動の成果は社会価値として定量評価され、企業のIRやCSR、マーケティングにも活用可能です。スポーツクラブが持つ共感力と発信力を活かし、地域と企業をつなぐ“課題解決のハブ”としての役割を果たしています。
この取組みは、単なるデジタル化や地域連携にとどまらず、スポーツが地域の課題を解決し、人と人、企業と社会をつなぐ力を持っていることを、実際に“かたち”にしている証です。
湘南の地で芽吹いたこの共創の種は、今、確かな実を結びつつあります。
<3-2:長野市との共創「スポーツの力で未来をつくるまち」へ>
長野市は、1998年の冬季五輪のレガシーを受け継ぎ、スポーツをまちづくりの核として活用する挑戦を続けています。KPMGはそのパートナーとして、「スポーツの力で未来をつくるまちNAGANO」の実現に向けて伴走しています。
このプロジェクトでは、スポーツ施設の利活用方針の策定、プロスポーツチームとの連携強化、スポーツツーリズムの推進、そして経営人材の育成など、地域全体を巻き込んだ包括的な取組みが進行中です。スポーツを通じて、地域の魅力を再発見し、経済や文化の循環を生み出す。そんな“まちの未来”を、行政・チーム・市民とともに描いていくプロセスそのものが、私たちにとっての価値です。
この取組みを通じて実感するのは、スポーツがまちを動かす力。そしてその力は、数字ではなく、人の心のなかにこそ宿っているということです。
4.スポーツイノベーションチームの提供価値と概要
<4-1:KPMGの支援内容>
KPMGのスポーツビジネス支援は、単なるコンサルティングの枠を超え、社会にインパクトを与える実践型の共創を目指しています。強みは、以下の3つの軸に集約されます:
- 社会課題解決を起点としたプロジェクト設計
収益化だけを目的とするのではなく、地域課題やサステナビリティへの貢献を重視。スポーツを通じて社会にポジティブな変化をもたらすことを、すべてのプロジェクトの出発点としています。 - 現場に根ざした共創型アプローチ
クライアントと「一緒に考え、一緒に創る」スタイルを徹底。机上の空論ではなく、現場に入り込み、地域やファンとともに価値を生み出す実行力が私たちの強みです。 - 「守り」と「攻め」を両立する支援体制
リスクマネジメントやガバナンスといった“守り”の支援と、ビジネスモデル構築やDX推進といった“攻め”の支援を一体で提供。スポーツ組織の持続可能な成長を、あらゆる角度から支えます。
さらに、2025年に改正されたスポーツ基本法*²では、スポーツとのかかわり方として、従来の「する」「みる」「支える」に加えて、「集まる」「つながる」という新たな定義が加えられました。スタジアムやアリーナに人々が集い、スポーツを通じて交流することが、社会的価値として明確に位置付けられたのです。
KPMGが支援するスポーツビジネスも、まさにこの「集まる」「つながる」場づくりをこれまでも重視してきた自負があります。地域、企業、ファンが垣根を超えてつながり、共に未来を描く――そんな共創型エコシステムの構築こそが、私たちの目指す姿です。
<4-2:提供するサービス概要>
KPMGが提供するサービスは、以下のように多岐にわたります。
【スポーツビジネスにおけるステークホルダーとサービス全体像】
- 価値創造ストーリー策定支援
社会課題に取り組む必然性を「ありたい姿」として描き、共感・賛同を引き出す中長期ビジョン・戦略をストーリー形式で策定。 - ソーシャルバリューセールス支援
価値創造ストーリーを基にした新たな商材開発、社会価値を軸としたセールスの社内浸透と内製化支援。 - スポンサーシップ計画策定支援
スポーツを軸としたサステナビリティ推進にかかわる実行計画や態勢構築を支援。 - サステナビリティ戦略策定支援
組織の存在意義や社会的役割を起点に、事業活動と社会価値の両立を目指す中長期のサステナビリティ戦略を整理・策定。 - 社会価値算定支援
非財務価値や活動の目標・実績を定量評価し、施策前後のインパクトを可視化。継続実施や高度化に向けた意思決定を支援。 - ファンエンゲージメント戦略策定支援
“One to Oneマーケティングプラットフォーム”の導入を通じて、来場・購買行動を促進する戦略を構築。 - スポーツを軸としたまちづくり構想策定支援
スタジアム・アリーナ等を核とした都市計画や、スポーツ基本計画と整合した地域戦略を策定。 - スポーツツーリズム・合宿誘致支援
地域の観光資源とスポーツを掛け合わせた戦略立案、スポーツ合宿・キャンプ誘致に向けた調査・体制構築を支援。 - スタジアム・アリーナの社会価値定量化/事業可能性検討支援
施設がもたらす価値を可視化・定量化し、提供機能や事業性を整理・検討。
5.おわりに
スポーツは、ただの娯楽ではありません。人と人、地域と地域、企業と社会をつなぐ「共通言語」であり、未来をつくる力を秘めています。
KPMGのスポーツイノベーションチームは、スポーツの可能性を信じ、共に未来を描くパートナーとして、皆さまと新たな価値を創出していきたいと考えています。
次回は本投稿で紹介した「価値創造ストーリー」について、具体的に紹介します。
執筆者
KPMGコンサルティング
アソシエイトパートナー 笹木 亮佑