現在、一定規模以上の企業においては、自社製品・サービスの製造(資材等の調達を含む)、販売、提供が全て自国内に留まっている企業は無いに等しいと言っても過言ではありません。あらゆる企業が何らかの形で国際的な取引を行っています。国際的な取引は、海外企業との直接取引や海外支店、海外子会社を通じた取引等あらゆる形態が想定されますが、それぞれの取引形態においてどのようなリスク管理方法が望ましいのかは、多くの企業で暗中模索の状況と考えられます。

ビジネス規模の拡大に応じ、社内規定・法令を遵守して業務を遂行する体制の構築・運用、また実際の遂行状態のモニタリングもより難しくなりますが、国際的な取引を前提としたビジネス環境においては、これに加え下記要素についての検討が必要となります。

遠隔地に存在する拠点の管理

海外にある関係会社、ビジネスパートナー等による業務遂行状況を適時適切に管理することは一般的に容易ではなく、高コストでもあります。子会社には日本本社より社員を出向させることも可能ですが、実際の業務を遂行するのは主に海外拠点スタッフです。

海外市場における情報収集

新たな市場に自ら進出する場合、または提携先・買収先企業を海外に求める場合、事前の情報収集・バックグラウンド調査が必要不可欠となります。

日本とは異なるビジネス習慣・法令

国が変われば商習慣も法的環境も異なります。一方、グローバル企業は自社が事業を展開する国々に、ある程度、自社と共通の規則や運営方法を設定する必要もあり、このバランスを取ることが重要です。

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海外拠点の不正・不祥事の調査

近年、大規模なグローバル展開を行っている企業においては、海外取引先との取引や海外拠点における不正が多発しており、これらの不正による損害が企業に対して大きな影響を与えることも珍しくありません。このような不正が発覚した場合、企業として説明責任を果たすためには適切な不正調査、危機対応が強く求められます。こうした海外関連不正の場合、国内で不正が発覚した場合と比較して、調査チーム組成時および調査実施時において、下記のような点がポイントになると考えられます。

1. 現地調査チームの組成(現地の不正調査専門家、現地の弁護士)

  • チーム組成に当たっては、言語の障壁のみを考えがちですが、言語の障壁のみならず、現地の習慣に基づく不正手口の理解、実施手続の決定、インタビューやメ ール分析における隠語の理解や、微妙なニュアンスの把握に関しては、現地における不正調査経験の有無が重要となります。
  • 現地法令に基づく訴訟戦略、懲戒処分時の理由の伝え方、手切れ金を払わざるを得ない場合の相場観や交渉術、解雇後のリスクヘッジ手法等は、現地で活躍している弁護士がたけています。
     

2. 日本チームと現地チームとの連携

  • 事実解明にあたり必要と考える情報が、現地と日本とでは異なることがあります。そのため、意思決定や開示を行う主体が日本である場合、現地に調査を一任するのではなく、日本サイドと現地サイドが連携した上で、調査手続・範囲を検討するのが望ましいと考えられます。
  • 調査過程における情報開示上の制約にも留意する必要があります。
  • 対象拠点が複数者の出資を受けている場合には、報告経路(主担当を決める、もしくは同時に報告)、報告言語を決定する必要があります。
     

3. 法的、文化的背景の相違

クロスボーダーの調査においては、内部調査ガイドラインの主旨に反しない範囲で、文化的背景の相違点等を考慮すべきです。同じ結果を導き出すにも、文化等が異なれば、異なる手法が求められます。クロスボーダー調査において、特に言語、各国の商慣習、対象国の法律が重要なファクターとなりますが、これらを十分に考慮しない調査が行われると、適切な効果は期待できません。


4. データ収集の困難性

電子データのタイムリーな入手は、クロスボーダー調査の成功にとって非常に重要です。そのためにも、データの収集・保管・移転に関する法律と規制を十分に理解することが必要です。しかし、多くの企業で電子データ収集の困難性に直面しています。これは、データの収集・保管・移転に関わる法律や規制が国によって異なるという点のみならず、データ収集のためのデータの移管方法が企業内で統一されていないという点にも起因しているようです。

 

クロスボーダー不正・不祥事調査支援サービス

KPMGでは前述のようなクロスボーダー調査のポイントを踏まえた上で、世界143の国と地域にまたがるグローバルネットワークを活用し、かつ必要に応じて現地法規制や商慣習に熟知した現地弁護士等のプロフェッショナルと協力し、多くの地域にまたがるクロスボーダー案件について効果的な支援を実施します。

調査支援の具体例(イメージ)

  1. 調査における目的、ニーズの確認、調査方法等に関する調整を行います。
  2. クライアント日本本社における調査のニーズを共有するとともに、現地拠点における調査方法の検討、指示をします。必要に応じて現地法規制や商慣習に熟知した現地弁護士等を活用します。
  3. 現地拠点における調査を実施します。
  4. 調査の経過および結果について随時報告し、 KPMG海外拠点チームへ適宜、フィードバックします。
海外法人に対する不正調査



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