日本企業のDXに「世界基準」を―。グローバルで事業を展開する強みを生かし、長年蓄積したノウハウを集約した標準業務モデルをベースに、独自のDXソリューションを通じて企業を支援しているのがKPMGコンサルティングだ。不透明な時代において確かな方向性を示し、変化に強い企業への変革を成し遂げるサービスに求められるものとは。同社のDX・事業変革組織を牽引する3人へのインタビューからひもといていく。
激変するビジネス環境に「即応」する経営のカギ
「VUCA(ブーカ)」という言葉に代表されるように、先の読めない不確実性が高まる現代社会。企業の戦略立案、実行にも従来とは異なる視点が求められている。
KPMGコンサルティング副代表執行役員パートナーの宮坂修司は次のように語る。
「世界情勢の不安定さを背景に、ビジネスの根本にかかわる環境が劇的に変化しています。またテクノロジーの進歩も著しく、ある日突然、予想もしないところから競合企業が登場する、といったことも現実に起こりうるかもしれません。企業はこれまで政治や経済、業界の長期安定を前提にした戦略(中期経営計画に代表される事業戦略)を立ててきましたが、もはやその前提は成り立たなくなっています。何が起こるかわからない環境下で、変化に対して迅速に対応しなければいけない時代になりました」
KPMGコンサルティング 宮坂
企業経営におけるこれまでのスタンダードが通用しなくなりつつあるなか、これからの経営戦略に求められるのは、「環境変化に即応できる経営」の体制づくりだ。そのために不可欠なピースがデジタルテクノロジーだが、日本企業においては、このデジタルを用いた企業変革、いわゆるDXの取組みがガラパゴス化していると宮坂は話す。
「その原因の1つに、DXについてテクノロジー先行の意識がある点が挙げられます。たとえばAIを導入すればDXが進む、あるいはERP(統合業務システム)を更新すれば業務改革ができるという考えは誤りです。環境変化に適応するために、膨大な開発投資がつぎ込まれているソフトウェア・テクノロジーの設計思想やアーキテクチャーの標準をいかに最大限使いこなし、その上で環境変化に対してアジリティー(機敏性)を持った変革を実装できるかがカギを握ります」
また、日本企業が本来備えている長所を、構築した経営基盤上にいかに実装し強みに変えていけるかが、世界で戦うために必要だという。
「日本企業のサービスレベルの高さは海外と比較しても突出しており、特に製造業におけるすり合わせ技術の高さは、世界屈指といえます。こうしたよさはさらに伸ばすべきです。しかし顧客や事業環境は、日々変化します。日本のこれまでの能力では対応できない部分は、先行事例に学ぶなど、改善を続けなければいけません。当社ではそれを実現する『永続的な変革文化』を根付かせる支援を行っています」(宮坂)
主要業務の標準化をクラウドサービスで実現
KPMGコンサルティングは、監査、税務、アドバイザリーサービスをグローバルに展開するKPMGインターナショナルのメンバーファームであり、グローバル企業の経営戦略と実行の支援も手がけている。それらをバックボーンとしたDX支援サービスにおける独自の強みについて、同社のPowered Enterpriseをリードする執行役員パートナーの立川智也は次のように語る。
「当社のグローバルネットワークのもと、それぞれの業務において目指すべきオペレーションモデルを定義した『ターゲットオペレーティングモデル(TOM)』を構築しています。この膨大なアセットに記された標準業務モデルが、当社ならではのコンサルティング能力の源泉になっています」
KPMGコンサルティング 立川
このTOMによる標準業務モデルは、バックオフィス、ミドルオフィスを中心に、企業における各業務の推進を幅広くカバーしており、継続的に最新の形に更新されている。製造業向けやライフサイエンス業界向けなど、業界別にカスタマイズされたTOMも拡充されている。
「当社は、従来からこの標準業務モデルによる企業変革の絵姿を示す支援を行ってきましたが、DXの重要性が高まるなかで、このモデルをより具現化できるクラウドサービスが登場しました。それらを活用し、戦略立案からテクノロジーの実装までエンドツーエンドのサービスを提供し、企業のDXを伴走支援するソリューションに拡大、発展させました」(立川)
同社が提供するDX支援は、企業の経営課題の掘り起こしからスタートする。次にその課題に対して、業務をどう変えればいいかを議論し、TOMを活用した解決策を提案する。その上で、それを実現するためのツールとして最適なクラウドサービスを定め、実装していく。
「最初に細かい仕様まで決め、すぐにツールの導入を始めると、個社の業務の都合に合わせて追加開発(アドオン)が多く発生します。カスタマイズを重ねたシステムは、最初はよくても改修のたびに影響範囲を確認する必要があり、時間もコストもかかります。それに対して標準業務モデルは、クラウドサービスが提供する技術のアップデートをそのまま利用できるため、AIなどの日進月歩のテクノロジーをいち早く活用することが可能です。当社は、最初に業務の進め方を標準化するようにお客様に働きかけることで、アドオンを極力減らしてコストの増大を防ぎ、変化に対応する俊敏なIT環境を手に入れられるようにしています」(宮坂)
【KPMG Target Operating Model(TOM)~模範解答となる標準業務モデル】
| 業務プロセス | 先進事例・内部統制などを考慮して最適化された業務機能一覧やプロセスフロー |
| 人材 | 目指すべき業務プロセスを運用するうえで必要となる従業員のスキルセット、責任と権限など |
| サービス提供モデル | 業務プロセスを最適に運用するための組織の構造や役割定義など |
| テクノロジー | TOMを具現化するための、あるべきテクノロジーの全体構成など |
| パフォーマンス・インサイト&データ | KPIと、それらをモニタリングするために必要なレポートやダッシュボード |
| ガバナンス | 業務プロセスに存在するリスクとそれらに対する統制活動(規程・承認ルールなど) |
KPMGコンサルティングでは、DXソリューションを、「Connected.(コネクテッド)」「Powered.(パワード)」「Trusted.(トラステッド)」の3つの領域に対して提供している。コネクテッドは、企業の顧客や従業員のExperience(経験)最適化をValue Stream(価値の流れ)と定義し、フロント業務のトランスフォーメーションを、社内の各部門を横断して実装することをテクノロジーの活用を含めて実現し、パワードは社内のバックオフィス、ミドルオフィスを中心とした業務変革(いわゆる狭義のDX領域)、そしてトラステッドは、デジタル時代において企業がリスクと規制に向き合うためのセキュリティやガバナンスなどの態勢を強化するソリューションである。
これら3つを組み合わせ、企業がDX全体のどの過程にあっても、どのような価値創造が必要なのかを特定し、継続的な変革の実現に向けて「攻め」と「守り」の両面から全社的に支援する。大きな変革の方向性を見極めながら、個別の課題解決にも寄り添うことができる。同社執行役員パートナーの黒木真人は、そのメリットをこう語る。
「当社の強みの1つは、お客様の支援にあたり、専門性の高い社内の各部門が常に連携して取り組むことです。私と立川は、『パワード』領域を担当するエンタープライズソリューションの部門に所属していますが、社内の会計・財務、あるいはサプライチェーンなど、あらゆる業務の専門家とチームを組み、業界別の専門家たちと連携しながら仕事をしています。当社の持てる力を総動員して、お客様のビジネス価値を高めることに集中している点が特徴です」
KPMGコンサルティング 黒木
単に決まった要件をクリアするだけでなく、クライアントと共にあるべき姿を描きながら、場合によっては必要のないサービスは取り下げることもある。こうした姿勢が、多くの企業から支持されている。
【Connected. Powered. Trusted.】
Connected.で顧客を起点とした全社横断的な事業変革のロードマップを策定したうえで、業務領域の業務変革・DXをPowered.で実行するとともに、Trusted.でリスク・規制対応を実行し、攻めと守りの両面から変革を推進。
出所:KPMGコンサルティング
標準業務モデルだからこそ成しうる「スピード感」
たとえば、ある大手電子部品メーカーでは、顧客からのさまざまな仕様の部品の要求にスピーディーに応えるため、KPMGコンサルティングのパワードエンタープライズのソリューションを活用して販売管理業務の標準化を推進。サプライチェーン全体の大幅な効率化に取り組んでいる。
「日本の製造業では、生産現場の技術を磨き、効率化も極限まで追求していますが、ミドルオフィス・バックオフィスの業務変革があまり進んでいない印象です。協調領域でもあるミドルオフィス・バックオフィスの業務こそ、徹底的に標準化を進めることで、迅速で効率的な経営を実現する余地があると考えています」(黒木)
ただし、システムを刷新するだけではミドルオフィス・バックオフィスの変革は難しい。
「KPMGコンサルティングでは、標準化による業務改革を進めるために、現場組織のチェンジマネジメントを同時に支援しています。その全体像が、当社が目指すパワードエンタープライズの世界です」(立川)。
次世代の支援のカタチ「AIコンサルティング」を加速
企業のDXや事業変革をエンドツーエンドで支援するKPMGコンサルティング自身も、社内の業務プロセスを変革させようとしている。そのハイライトが、グローバルで導入が進むAIプラットフォームの「KPMG Velocity(ベロシティ)」だ。
「AIによって目指すのは、業務の高度化です。当社は常に、世界に広がるKPMGの知見を参照して提案を行っています。AIプラットフォームの活用によって、各国、地域の言語で書かれた膨大なアセットの中から最適な情報をピックアップし、秘匿すべき情報を避けながら、提案資料に落とし込む。そうした業務を圧倒的にスピーディーに進めることができます。これは一例ですが、AIのイノベーションを生かし、お客様を支援する能力を高めていきたいと考えています」と、宮坂は強調する。
企業経営に変化への対応力が求められる時代だからこそ、経営の根幹にはしっかりした軸を持つことが重要だ。KPMGコンサルティングが提供する標準業務モデルは、DXの王道を示す拠り所として注目されている。
※本記事は、『週刊東洋経済』2025年5月24日号に掲載された記事広告を、許可を得て転載したものです。
※制作:東洋経済企画広告制作チーム