収益認識基準とは、企業の収益に関して、「いつ」「いくらで」「どのように」計上するかのルールを定めるものです。収益は、本業の収入の金額となり、企業の経営成績を分析する際に非常に重要になります。3月決算の場合、2021年4月からは収益認識基準の適用開始が予定されております。

収益認識基準とは

企業の財務諸表を利用する利害関係者が最も注目する財務指標の一つは、売上高ではないでしょうか。売上高は、いわば本業から稼がれた収入の金額であり、企業の経営成績を分析する際に非常に重要な指標です。収益認識基準は、その売上高に関して、「いつ」「いくらで」「どのように」計上するかのルールを定めるものです。IFRS®基準においては「顧客との契約から生じる収益(以下、IFRS第15号)」、米国会計基準においては「顧客との契約から生じる収益(以下、Topic606)」、日本基準においては「収益認識に関する会計基準(以下、基準第29号)」がそれにあたります。

収益認識基準は、特定の企業・業種に限定するのではなく、様々な営業形態を含むすべての会社へ適用されることが想定されています。そのため、細かい個別の取引や状況に対応する会計処理が定められているわけではなく、ある程度抽象的に会計処理が定められています。それがゆえに、収益認識基準は実務への適用が難しく判断が必要になるという意見がよく聞こえてきますが、重要なのは収益認識基準の背後にある考え方を正しく理解し、適切な判断を行うことです。当法人では、理解に役立つオンライン解説動画や概要解説記事等を公表していますので、ご利用ください。

収益認識基準が開発された背景

収益認識基準が導入されることになった理由は多岐にわたりますが、主には、米国基準には業種別又は取引別のガイダンス間の不整合があったこと、IFRS基準は理解が難しく原則に一貫性がなかったことなどの問題が挙げられます。これらを解消すべく、IASBとFASBの共同プロジェクトとして収益認識基準が開発された経緯があります。また、日本においても包括的な収益認識の会計基準はなかったため、IFRS第15号をふまえた包括的な収益認識基準の開発が必要となった背景があります。

収益認識基準の導入のポイント

まず、収益認識基準を導入するにあたっては、収益認識基準を導入することによって、財務諸表にどれだけの影響があるか、言い換えれば、どれだけ会計処理や開示を変更しなければならないのかを分析する必要があります。分析を行うにあたっては、例えば、企業が行う取引を性質の類似する商流に分類して、商流毎に分析することが考えられます。このように影響の概要を分析してスクリーニングしたうえで、影響が見込まれる論点について詳細に分析を行っていくことが、分析を効果的・効率的に進める上でポイントになると考えられます。
また、収益認識基準の導入により、新たに内部統制を確認することが必要になる場合も考えられるため、この観点でも影響を分析することが重要です。

収益認識基準の最新動向

前述の通り、収益認識基準の適用は世界的に進められています。IFRS基準及び日本基準における最新動向は下記の通りです。

IFRS第15号の動向

IFRS第15号は、3月決算会社であれば2019年3月期から適用されており、導入期における分析が一巡し、継続適用していく中で実務上の問題点や新たな論点が検討されている段階にあります。あずさ監査法人では、IFRS第15号の適用において生じたこれらの論点について、詳細な解説を盛り込んだ小冊子を公表しています。
図と設例による解説 - IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(2016年改訂版)

また、IFRS第15号の特徴の1つとして、表示・開示の要求事項が多岐にわたることが挙げられます。あずさ監査法人では、IFRS基準適用財務諸表における一般的なIFRS第15号の開示例を公表していますので、是非ご参考にして下さい。
IFRS基準財務諸表開示例・ガイド

基準第29号の動向

日本における収益認識基準である基準第29号も、一部独自の定めを置きつつ、IFRS第15号がベースとなっています。基準第29号の強制適用時期は、3月決算会社であれば2022年3月期からであり、IFRS第15号やTopic606の適用より3年ほど強制適用のタイミングが遅い状況にあります。したがって、IFRS第15号において検討された論点は、日本基準適用会社においても同じように検討事項となる可能性があります。
もちろん、IFRS第15号での検討結果が、そのまま日本基準において適切となるかどうかは慎重に判断する必要がありますが、検討のスタートとして、上述のIFRS基準の小冊子をご覧いただくことは有用と考えられます。
また、基準第29号では、IFRS第15号の要求事項をベースにしつつ、必要な注記事項の開示の要否を企業の実態に応じて企業自身で判断することを求める方針となっています。そのため、上記同様、IFRS第15号の開示例を参考にすることも有用と考えられます。
基準第29号の解説記事は下記をご覧ください。
ASBJ、「収益認識に関する会計基準(改正企業会計基準第29号)」等を公表

基準第29号の適用に向けて

特に日本基準適用会社の実務担当者の方々は、基準第29号の強制適用時期に備えて、業務への影響や実務的な適用方法の検討など、日々準備を進められているものと思います。通常業務もある中で、新基準対応を行わなければならないことは、実務担当者にとって大きな負担になることは想像に難くありません。あずさ監査法人では上述のコンテンツをはじめとして、基準第29号の一助となるような情報をFacebookTwitterにて配信しておりますので、是非ご利用ください。

まとめ

ここまで、収益認識基準の概要と動向を見てきました。基準第29号を今後適用する必要がある多くの日本企業にとって、基準対応は負担が大きいと感じるかもしれません。確かに、通常業務もある中で、新基準対応を行わなければならないことが、実務担当者にとって負担になることは想像に難くありません。しかしながら、収益認識基準に限らず、新基準導入を機会に、今まで気づかなかった側面に気付くことも少なくありません。単なる基準対応に終えてしまうのではなく、新しい視点で取引や業務プロセス等を見つめる1つの機会として捉えてみてはいかがでしょうか。

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