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      1.内部監査の重要性

      取適法は、適用対象と違反行為の類型を具体的に定めており、違反行為の認定は、取引条件や発注・受領・支払の記録など、客観的資料に基づき行われます。「違反のつもりはなかった」といった主観的な事情は違反の認定において考慮されません。このため第三者の目線で外形をチェックし、リスクを先回りして是正しておくことがきわめて重要です。

      前回の記事では、取適法遵守体制をスリーラインモデルの考え方で整理しました。事業部門(第1線)が発注・支払の適正を確保し、管理部門(第2線)が規程やシステムを通じて統制を支えるだけでは、仕組みが本当に機能しているかを客観的に保証することはできません。

      そこで、内部監査部門(第3線)による有効性検証が重要となります。経営から独立した立場で体制の有効性を検証し、リスクの早期発見と改善を促すことで、企業全体の公正取引が守られます。

      2.形骸化を可視化する「第3線」監査の重点チェックポイント

      2026年1月1日に施行された取適法では、従来の「買いたたき」「支払遅延」に加え、「協議に応じない一方的な代金決定」の禁止、手形払等の禁止、特定運送委託の追加、資本金基準が適用されない場合に用いられる従業員基準の追加などにより、取適法違反の有無を確認すべき論点と対象取引が広がっています。

      このため内部監査(第3線)は、発注・価格協議・支払・物流取引の実態について、契約書面や協議記録、発注・支払データ等の外形的な証拠に基づき、違反が発生していないかを客観的に点検・検証する役割を担います。特に、次の4点は重点的にチェックすべき項目です。

      • 第4条の明示(旧3条書面)と第7条記録
        発注内容等が「ただちに」書面または適法な電磁的方法で明示されているか。電磁的方法で明示した場合に、中小受託事業者から書面交付を求められた際の対応手順があるか。あわせて、取引記録が書類または電磁的記録として作成され、2年間保存されているか。
      • 価格協議の実効性(協議に応じない一方的な代金決定の防止)
        費用の変動その他の事情が生じた場合に、中小受託事業者からの協議申入れが書面・電子メール等の形に残る方法で受け付けられ、協議経過や説明・情報提供の内容が議事録やメール等で記録化されているかを確認する。
      • 支払手段の適法性
        手形払を用いていないか、また電子記録債権等を用いる場合でも、支払期日までに代金相当額満額を得ることが困難な手段となっていないかを確認する。
      • 支払期日・遅延利息
        受領日から60日以内のできる限り短い期間で支払期日が設定されているか。支払遅延や減額等が生じた場合の遅延利息(年率14.6%)が適正に計算・支払されているか。
      • 適用範囲の更新状況
        運送委託や従業員基準の導入を反映し、どの取引が取適法の対象となるかの判定ロジックが最新化されているか。新規事業・新スキームが「抜け漏れ」になっていないか。

      このように、第3線はかたちだけ整った体制を鵜呑みにせず、交渉プロセス・支払手段・適用範囲の設計を含めて、体制と実務のギャップを可視化する役割を担います。

      Japanese alt text:取適法対応における内部監査の実務ポイント_図表1 出所:KPMG作成

      3.実効性を高めるための専門支援

      KPMGでは、こうした内部監査を支援するために、取適法・競争法領域に特化した「コソース/アウトソース」サービスを提供しています。監査部門のリソースや専門性を補完し、次のステップで企業価値の向上を支援します。

      (1)競争法の専門家による監査設計
      独占禁止法・取適法に精通する専門家が、リスク評価や監査計画の策定段階から参画します。違反の疑いが生じた場合には、自主申告制度(リニエンシー)の適用判断も含めて支援します。

      (2)デジタル技術を用いた違反兆候の検知
      購買・支払データやメールログ等を活用し、シナリオ分析により違反の疑いがある取引を自動抽出します。膨大なデータを対象とした定量的リスク特定を可能にします。

      (3)取引先アンケートによる実態把握
      取引先への匿名アンケート調査を通じて「本音」を引き出し、隠ぺいや無自覚による違反を早期に発見します。形式上見えないリスクの顕在化を支援します。

      (4)改善・モニタリング支援
      監査結果に基づき、第1線・第2線が主体となる改善活動を伴走支援します。単発の是正にとどめず、継続的なモニタリング体制やデジタルダッシュボード化を通じて、リスクの常時監視を実現します。

      4.まとめと提言

      内部監査は、第1線・第2線の取組みを客観的に補完し、外形的な証拠に基づいて違反が判断される取適法のもとで、実効性ある遵守体制を維持するための要です。

      重要なのは「見て終わり」の形式的チェックにとどめず、データ分析、証跡確認、現場ヒアリングを組み合わせて、発注・価格協議・支払・物流取引等の運用実態を立体的に検証し、是正と再発防止が組織として回る状態をつくることです。内部監査がこの役割を果たすことで、違反兆候の早期発見と是正の迅速化が進むだけでなく、全社の取引慣行が継続的に見直され、公正取引を前提とした業務文化の定着につながります。

      執筆者

      KPMGコンサルティング
      シニアマネジャー 荒尾 宗明
      マネジャー 吉田 愛子
      シニアコンサルタント 中畑 良丞

      「取適法(旧下請法)コンプライアンス体制構築の要点」第2回

      取適法遵守体制の構築に向け、スリーラインモデルと各部門のリスク、実効性を高めるポイントについて解説します。

      取適法・フリーランス法・物流関連法に対応し、適正取引と統合運用の構築を通じて企業の業務・システム改革を支援します。

      下請法違反時の初動対応から公正取引委員会への報告・再発防止策の策定までを支援し、企業の信頼回復とリスク低減をサポートします。

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      KPMGコンサルティング

      戦略策定、組織・人事マネジメント、デジタルトランスフォーメーション、ガバナンス、リスクマネジメントなどの専門知識と豊富な経験から、幅広いコンサルティングサービスを提供しています。

      Japanese alt text: KPMGコンサルティング