取適法の執行強化動向
近年、公正取引委員会は取適法(旧下請法)の執行を強化しており、勧告・指導件数が増加傾向にあります。この背景には、原材料費やエネルギーコストの高騰により、委託事業者(下請法での旧称、親事業者)が中小受託事業者(下請法での旧称、下請事業者)に対して不当な経済上の利益の提供を要請するなどの行為を助長する土壌があること、政府が推進する「構造的な賃上げ」の実現に向けて取適法執行強化の政策方針が挙げられます。
取適法違反時には公正取引委員会による指導や勧告が行われます。勧告を受けた企業は、改善報告書の提出や罰金が課される可能性があるほか、企業名の開示によるレピュテーションの低下も懸念されます。
取適法と一体となって取り組むべき法令の整備
取適法に加え、フリーランス法や物流効率化法、改正貨物自動車運送事業法など、適正取引の実現を目的とし、規制手法にも共通性のある法令の整備が進んでいます。これらを「適正な取引ルール」として一体的に整備・運用することが、効率的かつ確実な法令遵守につながります。
【取適法とフリーランス法の概要】
項目 | フリーランス法 | 取適法 |
義務主体(発注者) | 業務委託事業者(従業員の有無は問わない) | 委託事業者(資本金規模または従業員基準で定義) |
適用対象(受注者) | 特定受託事業者(従業員を使用しない個人等) | 中小受託事業者(資本金規模または従業員基準で定義) |
対象取引 | 事業者間の業務委託全般 | 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託 |
発注書面等交付義務 | 書面等による明示義務 | 書面等による明示・記録保存義務 |
支払期日の制限 | 給付等受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間内 | 給付等受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間内 |
禁止事項 | 買いたたき、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直し等の7項目 | フリーランス法の7項目を含む全11項目 |
【取適法と物流関連法の概要】
義務項目 | 取適法(特定運送委託等の場合) | 物流効率化法・貨物自動車運送事業法 |
取引条件の明確化と書面等の交付・保存 |
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附帯業務(荷役等)や待機時間への対応 |
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適正な価格決定と不当な取扱いの禁止 |
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| 社内体制の整備と管理者の選任 (物流2法においては一定規模以上の事業者に対する義務である場合あり) |
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社内管理体制構築の重要性
取適法等対応は、現場の実行力だけではなく、組織全体での統制・監視が不可欠です。事業部門・管理部門・内部監査部門の3ラインモデルの視点から役割とリスクを整理することにより、潜在的な違反を早期に把握し、公正な取引を実現する体制の基盤を築くことが可能となります。
業務オペレーション見直しの必要性
取適法等の法律は、発注時の書面交付、支払管理、記録の保存、社内体制の整備など、企業に多面的な対応を求めています。他方で、実務ではチェックリストによる確認に依拠しがちで、運用が形式化し、違反防止に十分つながっていないケースも見られます。
そのため、法令遵守を実効的なものとするには、チェックリストの整備にとどまらず、業務オペレーションや社内体制そのものを見直すことが必要です。また、必要に応じ社内システムを改修することで、確実な違反防止・対応負荷軽減につなげることが可能です。
【業務オペレーションに関して求められる対応】
【取引先管理、契約書、注文書発注業務フローの見直しステップ例】
KPMGによる取適法対応支援
KPMGでは、国内外の弁護士有資格者や官公庁出身者を中心に、蓄積された経験や知見を活用し、企業が取適法を中心とした取引関連対応で直面する実情やニーズに沿った実効性のある支援を行っています。お気軽にお問い合わせください。