フリーランス法の執行強化:企業名公表リスクにどう備えるか
フリーランス法は、もはや「施行されたばかりの新しいルール」ではありません。公正取引委員会は、令和6年度と令和7年度上半期の累計で、勧告4件・指導441件、合計445件の措置実績を公表しています。さらに、勧告一覧では、令和8年3月16日現在で9件の勧告が掲載されており、執行は着実に積み上がっています。
特に留意すべきなのは、「指導」より重い処分である勧告です。公正取引委員会は、勧告を行った場合、事業者名、違反事実の概要、勧告の概要等を公表すると明示しています。企業名公表は、法務・コンプライアンス上の問題にとどまらず、採用、取引先対応、ブランド毀損、株主・親会社対応にも波及し得ます。
いま企業に求められているのは、平時の予防だけではありません。調査着手後の初動、事実整理、不利益回復、再発防止策の設計までを短期間でやり切る「有事対応力」が、ダメージ最小化の鍵になります。
【フリーランス法の概要】
目的・背景 |
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規制内容 |
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罰則 |
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【義務項目のポイント】
義務項目 | ポイント |
契約条件明示 |
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報酬支払期限 |
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各種禁止行為 |
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募集情報の的確表示 |
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妊娠出産育児介護配慮 |
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ハラスメント対策に係る体制整備 |
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中途解除等の事前予告・理由開⽰ |
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企業名公表を伴う「勧告」回避の要件
公正取引委員会は、フリーランス法違反について、発注事業者による自発的申出の制度を設けています。そして、勧告対象行為について自発的申出がなされ、一定の事由が認められた場合には「勧告するまでの必要はない」と明言しています。
もっとも勧告回避のハードルは低くありません。具体的な要件は、以下の5点です。
(1)公正取引委員会が調査に着手する前に自発的に申し出ていること
(2)違反行為をすでに取りやめていること
(3)不利益回復に必要な措置をすでに講じていること
(4)再発防止策を講ずることとしていること
(5)公正取引委員会の調査・指導に全面的に協力していること
出典:「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び取適法との適用関係等の考え方」(公正取引委員会)
ここで特に重要なのが、「公正取引委員会が調査に着手する前」という要件です。ここでいう調査着手とは、業務委託事業者に調査実施の連絡を行った時点とされています。つまり、公正取引委員会からの連絡を受けてから社内検討を始めるのでは、(1)の要件を満たせないおそれがあります。
また、不利益回復や再発防止策も抽象論では足りません。不利益回復措置として減額した報酬の支払い、再発防止策として取締役会決議、社内周知、研修、社内体制の改善などが公正取引委員会によって例示されています。したがって、公正取引委員会からの調査があった場合には、当局対応に加え、実効的な不利益回復措置や再発防止策の策定を短期間で進める必要があります。
KPMGの支援
当局対応
公正取引委員会対応では、初動の良し悪しがその後の展開を左右します。
KPMGでは、公正取引委員会対応方針の助言、公正取引委員会に提出する資料の作成補助および事前レビュー、さらに必要に応じて公正取引委員会対応全体の進捗管理を支援します。
具体的には、調査対象行為の切り分け、論点整理、提出資料の構成および説明方法の設計、提出前レビュー、並びに想定問答の整理まで、短期間での対応に伴走します。資料作成のみならず、勧告リスクの見立てを踏まえた対応方針策定についても助言します。
違反行為の特定と被害回復措置
有事対応では、まずどの行為が、どの条文との関係で問題となるのかを正確に捉える必要があります。
KPMGでは、法令知見を踏まえ、違反行為を特定するための全数調査を設計します。調査のなかで、違反行為を特定し、公正取引委員会宛て報告書における事実整理および原因分析を行います。
また、実効的な不利益回復措置のためには、対象者・対象期間・対象金額の特定が重要です。契約書、発注書、請求書、支払いデータなどを突合し、返金・追加支払・条件修正の要否を整理しながら、説明可能な形での証跡整備を設計します。
【違反行為の特定プロセス(例)】
再発防止策の設計・実装
有事対応のゴールは、「当面の火消し」ではなく、再発防止策として、実効性ある体制整備が求められています。KPMGでは、業務プロセス可視化・要求事項整理、業務プロセス再設計、モニタリング体制構築を通じて、再発防止策を策定します。
具体的には、発注時の条件明示、支払期日管理、変更・やり直し依頼、証跡管理、承認フローの見直し等を踏まえ、実務対応マニュアルの作成や周知・教育の方針検討等の支援を通じ、現場での運用に落とし込みます。
【実務対応マニュアル(例)】
業務プロセス再設計にあたっては、法的に重要なプロセスを6段階に区分し、区分ごとに関連する規定や想定論点を当てはめます。そして、それぞれの論点について求められる対応を特定のうえ、現状の運用を踏まえた対応方針を策定し、フロー図に落とし込みます。
【業務プロセス再設計方針】
【業務フロー図(イメージ)】
ステークホルダー対応
勧告が避けられなかったとしても、取引先、投資家、世論一般に対し、上記取組みの内容・結果を適切に発信することにより、レピュテーションリスクを最小限に抑えることができます。
KPMGは、取引先・投資家対応、危機管理広報等のステークホルダーとのコミュニケーションを全面的に支援します。
KPMGの強み
有事対応と再発防止を一体で支援
当局対応だけ、規程整備だけ、研修だけなど、単発的・一時的な対応のみでは、十分な解決に至らないケースが少なくありません。
KPMGでは、当局対応、違反行為の特定と被害回復措置、再発防止策の設計・実装を一体で支援し、有事の局面を平時の体制づくりにつなげることで、当局にも「説明責任を果たせる」取組みを目指します。
支援後も見据えた納品物
KPMGでは、支援後にも継続的にご活用いただける納品物を提供します。そのため、クライアントとのコミュニケーションを重視し、各社の実情を踏まえながら、実務への浸透を後押しします。納品物の一例としては、現場のご担当者が日々の業務で参照できるような実務対応マニュアルや業務フローが挙げられます。
豊富な支援実績
KPMGでは、国内外の弁護士有資格者や官公庁出身者を中心に、さまざまな分野の危機対応を通じて蓄積された経験や知見を活用した支援を行っています。必要に応じて、フリーランス法に精通する外部弁護士事務所と即時に連携することも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。