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      財務におけるAI活用は「導入」から「優位性の創出」へ

      財務領域におけるAIのテーマは、もはや導入ではありません。問われているのは、いかに運用するかです。

      この2年でAIの実運用は倍以上に拡大しましたが、「期待を上回る成果を挙げている」と回答した企業は23%にとどまっています。満足度の広がりに比べると、実際に成果を出している組織は限定的です。

      先行企業は、AIの導入量を「増やしている」のではありません。
      意思決定が求められる領域にAIを活用し、信頼性を担保するガバナンスを整備し、成果を測定し、そのプロセスを機能させられる人材を確保しています。

      この一連のサイクルこそが、「意思決定の優位性(Decision Advantage)」です。

      AIは今や、財務機能における意思決定のエンジンへと進化しつつあります。
      そして、その優位性を決定づけるのは「信頼」です。AIガバナンスやコントロールを通じて担保される信頼こそが、競争優位性の源泉になっています。

      財務領域のAI:導入が拡大する一方、成果は一部企業に集中

      財務分野におけるAI活用は広がっています。
      財務計画、レポーティング、収益分析の分野で、すでに4分の3以上の企業がAIを活用しています。さらに、71%の企業が、投資対効果についても期待通り、あるいはそれ以上の成果が出ていると回答しています。

      ただし、導入の広がりが、そのまま卓越した成果につながっているわけではありません。
      期待を上回る成果を挙げていると回答した企業は23%にとどまり、その範囲は、全体的な満足度の広がりに比べて限定的です。

      つまり、導入のスピードに、それを全社的な成果へと転換する運用力が追いついていないのが現状です。

      AI in Finance:コスト削減から、意思決定のエンジンへ

      財務経理領域におけるAIの効果は、定型業務の自動化ではなく、判断が伴う領域でより大きく現れています。
      これは、従来財務機能が弱みとしてきた領域であり、同時にAIの効きどころでもあります。

      実際に、意思決定の質(70%)、スピード(71%)、予測精度(64%)で改善が見られています。さらに、エージェント型AIを活用している企業は、平均で32ポイント、予測精度やROIでは40ポイント近い差をつけています。

      先行企業は、AIを単に広く導入するのではなく、意思決定の中でも特に判断が重要な領域に戦略的に適用しています。

      信頼とAIガバナンス:運用における優位性

      ガバナンスはしばしば、AI導入のブレーキとして捉えられがちです。しかし、データはその逆を示しています。AIに関する監査証跡(エビデンス)を効率的に提示できる組織は、そうでない組織と比べて、顕著な改善を報告する割合が3〜6倍に達しています。具体的には、エラー削減では33%対6%、スケール展開に対する信頼度では42%対14%という差が見られます。 AIの信頼性確保と運用の備えは、KPIの追跡だけよりも、成果を左右するより強力な指標です。

      AIが本格的なスケール段階へと進む中で、AIガバナンス、AIリスク管理、そして人による監督を通じて培われた「信頼」が、価値を獲得できている組織と、そうでない組織とを分ける決定的な要因となっています。

      AIリテラシーと人材変革:AIの成果を左右する次の課題

      データ品質は、本調査において最も多く挙げられた障壁であると同時に、最も多く挙げられた機会でもあります。

      全体の36%の組織が、データ品質の向上、データ統合、システム間の相互運用性の改善を、財務領域におけるAIからより多くの価値を引き出すための最大の機会と捉えています。一方で、これらは最も頻繁に指摘される脆弱性の一つでもあります。

      制約となっているのは技術そのものではありません。AIが依存するデータの整備状況こそが課題なのです。

      多くの組織は、既存のチームを前提に育成を進めており、誰がそのチームに必要かを根本から見直すまでには至っていません。

      38%の組織が既存の財務チームのスキル向上に取り組んでいる一方で、異なるスキルセットを持つ人材を新たに採用しているのは28%にとどまっています。

      人材の能力は、データ品質とは異なる独立した制約要因であり、それ自体に対する対応が求められます。

      最も重要な能力要件はデータ・フルエンシーです。これは、データ品質を評価し、アウトプットを解釈し、事業が行動に移せる形で示唆を伝える力を指します。

      これは、財務の専門性とAIリテラシーが交差する領域に位置づけられる、専門的なスキルです。

      先進的な組織は、チームのスキル向上に取り組むと同時に、データに対する異なる志向性を持つ人材の採用も進めています。


      2026年に財務領域のリーダーが注力すべき、4つのAI優先課題

      本調査は、AIの導入を持続的な成果へとつなげようとする財務・意思決定領域のリーダーにとって、4つの優先課題があることを示しています。

      • AIを「タスク」ではなく「価値」を起点に再定義する
      • AIガバナンスを前提条件(参入条件)として位置づける
      • 実行プロセスに測定を組み込む
      • 研修にとどまらず、人材・組織全体を設計する

      これら4つの優先課題は、単なるチェックリストではなく、成果を生み出す好循環です。意思決定を起点としたAIはガバナンスと組み合わさることで効果を高め、ガバナンスは測定によってスケールし、測定は適切な人材がいてはじめて行動へとつながります。これらを一体として構築することで、「Decision Advantage(意思決定の優位性)」が生まれます。


      財務領域におけるAIをめぐる議論は、すでに次の段階へと移っています。 2年前に問われていたのは、AIが本当に成果を出せるのか、という点でした。 いま問われているのは、AIを何に使うべきか、という問いです。 成果を上げている組織は、AIを単なる効率化のためではなく、判断力を磨くために活用しています。

      Sebastian Stöckle

      Global Head of Audit Innovation and AI, KPMG International

      財務領域におけるAI活用:KPMGグローバル調査2026 について

      「財務領域におけるAI活用:KPMGグローバル調査2026」は、年商2億5,000万米ドル以上の企業に所属する、20カ国・13セクターの財務・意思決定領域のシニアリーダー1,013名を対象に、2026年3月に実施した調査に基づいています。

      財務領域におけるAI活用:KPMGグローバル調査2026(英語)

      「財務領域におけるAI活用:KPMGグローバル調査2026」の全文をダウンロードして、詳細なデータと分析をご確認ください。

      財務領域におけるAI活用:KPMGグローバル調査2026 Executive Summary(英語)

      「財務領域におけるAI活用:KPMGグローバル調査2026」のExecutive Summaryをダウンロードして、データと分析の概要をご確認ください。


      AIの導入そのものは、もはや差別化要因ではありません。 先進的なリーダーは、ガバナンス、測定、そしてAIのアウトプットを行動につなげられる人材という、AIを機能させるための運用条件を構築しています。 成果創出のプロセスそのものに組み込まれた「信頼」こそが、価値を獲得できている組織と、そうでない組織とを分けています。

      Nikki McAllen

      Global Head of Finance Advisory, KPMG Australia

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      KPMGは、生成AIと財務経理の深い業務知見を融合し、財務経理領域の高度化・効率化を包括的に支援します。急速に進化する生成AIを財務経理業務に適切に組み込むことで、従来は人手に依存していた業務や、属人化・非効率が課題となっていた領域においても、大幅な生産性向上と業務品質の向上を実現します。

      生成AI活用を前提としたデータマネジメントにフォーカスし、ルール・プロセス・ノウハウ等を言語化(形式知化)して、その意義・実践ポイント・取組み方法を現場起点で導入・定着へつなげる支援を行います。さらに、現場での取組みを起点としたボトムアップによる全社展開を通じて、人材育成やガバナンスの強化にも貢献することを目指します。

      AI活用が新時代の経理財務機能への変革をもたらす

      KPMGジャパンが提供する、AIに関するナレッジや取組み、最新の技術を活用したAI関連サービスをご紹介します。

      KPMGはAIで構想を実装へ、実装を成果へと繋げています。その実例をご紹介します。

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      城戸口 甚平

      アドバイザリー統轄事業部 ディレクター

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