今、SAPを取り巻く環境は、クラウド化の進展、データ活用ニーズの拡大、AIの進化、そして事業環境変化の加速により、大きな転換点を迎えています。
KPMGは、SAPを「導入すること」自体を目的にせず、構想策定から導入、稼働後の定着・利活用、拡張までをワンストップで伴走し、クライアントの変革と成長を実現することにこだわり続けています。
本稿では、KPMGが考えるSAPの役割の変化と、これからの支援のあり方について、部門リードとしてのメッセージとしてお伝えします。
(左から)KPMGコンサルティング パートナー 黒木、真下
SAPの役割は「守りのSoR」から「経営判断を支えるSoI」へ
私たちは、SAPに期待される役割は以前と比べて大きく変化してきたと捉えています。かつてのSAPは、いわゆるSoR(System of Record)として、正確に・早く記録すること、業務を効率化しコストを下げることが主な役割でした。BPR(Business Process Reengineering)も人員削減やコスト削減を主眼とするケースが多く、SAPは「守りのシステム」として位置付けられていました。
しかし現在は、クラウド化の進展、データ活用ニーズの増加、AIの進化、そしてビジネス環境変化のスピードが加速するなかで、SAPはSoI(System of Insight)としての役割をより強く求められています。
つまり、単に記録するためのシステムではなく、データを基に「どう意思決定するのか」「どの事業に投資するのか」「どのように成長していくのか」といった経営判断を支える仕組みへと進化してきています。BPRも本来の目的である、成長を前提とした業務改革へと主眼が移りつつあります。
その結果、SAPの役割は「守り」だけではなく「攻め」と「守り」の両輪になりました。ここでいう「守り」も、単なる効率化にとどまらず、コンプライアンスやガバナンスといった“成長の土台”を支える観点がこれまで以上に重要になっています。一方の「攻め」では、データに基づく意思決定や戦略立案、変化への機動的な対応が鍵になります。
「成長を止めないための守り」と「成長を加速させるための攻め」を同時に成立させることは簡単ではありません。だからこそ私たちは、経営・業務・IT・データを一体で捉え、クライアントの意思決定と実行を支えることに挑み続けています。
最大の変化は、クラウド化とAIを前提にした「Fit to Standard/Clean Core」への転換
私たちが捉えているSAP領域で起きている大きな変化の1つは、Fit to StandardやClean Coreが「単なる標準化」ではなく、将来の拡張性やAI活用まで見据えた戦略的な取組みへと進化している点です。改めて、自社の強みとなる業務・データは何かを見極め、標準化すべき領域と差別化すべき領域を判断することがこれまで以上に重要になっています。
業務は常に変化します。だからこそ、業務変化に追随できるシステムであること、またシステムの進化を業務側へフィードバックし、より高度化していくことが欠かせません。業務とシステムが相互に高め合う“正の循環”をつくることが、今強く求められています。
もちろん「予定どおり稼働させること」「高品質で導入する」ことは大前提です。しかしそれだけでは評価されにくくなりました。今クライアントから求められているのは、変革の目的を実現し、成果が創出される状態まで導いていくことです。
ITの観点からみると、SAP領域の変化を大きく駆動しているのは「クラウド化」と「AI」です。クラウド化により、SAPは“作り込むもの”から“標準機能をどう使いこなすか”へと発想が転換しました。標準化されたプロセス・アプリケーション・データを前提に、どこまでを標準に合わせ、どこで差別化するのかを見極めることが不可欠であり、これを実現するためのチェンジマネジメントの重要性も高まっています。
またAIは、分析ツールにとどまらず、クライアントが行う受注・購買・経理など日常業務のプロセスに組み込まれ、人の判断を代替・支援する存在になりつつあります。さらに、コンサルタントが支援する設計・開発・テスト・運用といったデリバリーのあり方そのものにも影響を与え、単なる知識量や作業量ではなく、「何を考え、どう判断し、どう価値につなげるか」が問われる時代になっています。つまり、今のSAPプロジェクトは、単なるシステム導入ではなく、テクノロジー・業務・データで企業の成長と変革を実現する仕事へと進化しています。
KPMGの強み:SAP導入をゴールにせず、「稼働後の成果」まで伴走する
KPMGの特長は、SAP導入そのものをゴールにしていないことです。構想策定から導入、稼働、そして稼働後の定着化まで、いわゆるE2Eでクライアントを支援します。「稼働してからが本当のスタート」という考えのもと、SAPはあくまで手段であり、目的は業務改革とその先にある企業の成長だと捉えています。
だからこそ私たちは、「どう使えば業務が変わるのか」「どう意思決定が変わるのか」まで踏み込み、クライアントと長期的なパートナーシップを築きながら、成果が持続的に創出されるまで責任をもってやり切ることを大切にしています。
もう1つの強みは、AI活用を前提にしたデリバリーモデルの進化です。効率性と品質を両立させながら、コンサルタントの役割も“作る人”から“クライアントとともに汗をかき、変革を推進する人”へとシフトさせています。こうした取組みの一例として、AIを活用して効率的なデリバリーを行ったプロジェクトが、SAPジャパンからProject Excellenceに選出されました。
さらに、国内外のメンバーファームとのコラボレーションも私たちの特長です。自社だけで完結させるのではなく、それぞれの知見・経験や強みを掛け合わせることで、より高い価値を提供します。
ビジネスとテクノロジーの知見を掛け合わせ、クライアントの変革と成長に本気で向き合い続ける——それが私たちが一貫して大切にしているアプローチです。
「SAP導入のパートナー」ではなく、「変革をやり切る伴走者」
私たちは、クライアントにとって「SAPを導入するパートナー」ではなく、「変革をやり切る伴走者」であり続けたいと考えています。構想だけを描くチームでも、導入だけを請け負うチームでもありません。同じチーム・メンバーが、構想策定から導入、稼働後の定着・利活用、さらには拡張まで、変革に最後まで伴走する——それが私たちのスタンスです。
変革は、システムの切替えだけでは終わりません。現場の行動や意思決定、運用の定着まで含めて初めて“変わった”と言えます。成果は稼働後にこそ生まれる——私たちはそう考えています。
そのため私たちは最初に「何を実現したいのか」というゴールを見据え、ブレないように「目標達成のために何をするか」「なぜやるのか」を言語化しながら進めます。ときにブレーキ役として本当に必要なことだけを提案し、変革を実行しきるまで責任を持つ存在でありたいと考えています。
SAPは「継続的に成長できる状態」を実現するつくるための基盤づくり
KPMGではSAP案件を「システム導入」ではなく、クライアントが成長を“継続的に実現できる状態”をつくるための、業務と人の基盤づくりとして捉えています。業務の標準化・一元化によって生産性を高め、データに基づくKPI管理やレポーティングで意思決定サイクルを加速させ、環境変化に柔軟に対応しながら事業運営が回り続ける状態を目指します。稼働後も、目指す姿の実現に向けて継続的に支援し、総合コンサルティングファームとして他部門とも連携しながら、必要な課題解決を後押しします。
また、プロジェクトはクライアントの皆さまの成長の機会でもあります。全社改革を実現する取組みに参画することで、業務領域を横断した理解が深まり、ITリテラシーやプロジェクトマネジメントのスキルが磨かれます。私たちは対話を重ねながら新たな気づきを提供し、組織としても個人としても成長につながる変革を、共に実現していきます。
変化が常態化する時代において、SAPは業務基盤であると同時に、データとAIを原動力として成長を加速させるプラットフォームへと進化しています。私たちは、クライアントの目指す姿に寄り添いながら、構想から稼働後の成果創出まで、変革を最後までやり切る伴走者として支援し続けます。