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      この記事は、「週刊 経営財務 No.3715」に掲載したものです。発行元である税務研究会の許可を得て、あずさ監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。

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      第3回

      第1回第2回と、リースの識別と少額リースについてご説明してきました。「今までリースだと思っていなかった取引が、実際にはリースなのか?」というのは非常に難しい検討です。しかし少額リースに該当すれば、契約がリースを含むかどうかの判断も実質的に不要であること、少額リースにおける5000米ドル基準と300万円基準の違いなどご説明しました。
      さて、今回はよく現場から受ける質問として、リースの識別の設例、及び契約の対価とリース料の関係などについて取り上げたいと思います。
      以下、意見に係る部分は筆者の個人的な見解であることをお断りしておきます。


      Q1

      リースの識別についてはIFRS会計基準の考えを取り入れたとされますが、一方、IFRS第16号のリースの識別に関する設例がそのまま取り入れられなかったのはなぜですか?大幅に改変されていたり、そもそも取り入れられていないものもあります。

      A1

      ASBJがIFRS第16号の設例を導入しなかったからと言って、それはASBJがIFRS第16号の設例に異を唱えているということではありません。
      まず、読み手の理解しやすさのために変更されたものも多くあります。例えば「資産の稼働能力部分」に関する設例が光ファイバー・ケーブルからガスタンクに変更されていますが、これは一般の会社にとって光ファイバーの事例はなじみがないとの指摘があったためです。そのほか、表現の見直しや、論点を明確にするための修正なども行われています。
      とはいえ、一部の設例が取り入れられなかった最も大きな理由は、IFRS第16号に含まれるガイダンスの一部を「簡素で利便性が高い会計基準」を目指すうえで新基準に取入れなかったためです。ガイダンスを基準に取り入れられなかったものについては、そのガイダンスに関連する設例も取入れが見送られました。
      では、どのようなガイダンスが見送られたかのでしょうか。 具体的には以下となります。

      • 「資産は特定されているか」に関連して、取入れが見送られた事項
        • リースの対象となる資産が契約に明記されなくとも、黙示的に定められることによって対象資産は「特定」され得るとの定め
          契約上に明記がなくても、ある資産の使用を顧客が支配していてリースが含まれることが事実と状況に照らして明らかであれば、リースとしての適切に判断されると考えられました。
        • サプライヤーが対象資産に関する「実質的な代替権」を持つ場合、当該資産は特定されていないとされるが、ここでの「実質的な代替権」についてのガイダンス
          ガイダンスがなくても、各企業の判断に基づき経済実態を表す会計処理を行うことは可能とされました。
      • 「資産の使用を指図する権利を誰が有しているか」に関連して、取入れが見送られた事項
        • 「使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る意思決定」とはどのようなものを指すかについての例示
          どのような意思決定に着目すべきかは、資産の性質及び契約の条件に応じて、契約によって異なる可能性が高いとIFRS第16号も述べているにもかかわらず、例示を示すことで限定的に解釈されることが懸念されました。

      上記のとおり、一部事項の取入れが見送られた結果、例えば、以下の設例の取入れが見送られています。

      • 「特定の種類、品質及び数量のシャツを購入する契約を製造業者と締結し、当該業者には顧客のニーズを満たすことができる工場が1つしかないケース」の設例
        当該設例では、契約上の明記はなくとも外套の向上が1つしかないことで「資産は特定されている」とされています(そのうえで、「この工場は他の顧客の注文のためにも使われるので、契約にリースは含まれない」と分析)。
      • 船舶や航空機を例に使用の指図をどう判断するかの設例
        特定のケースを前提とした分析の例示にすぎないのですが、結論だけが独り歩きするリスクのほうが高いと判断されました。

      このような背景を踏まえると、取入れが見送られた設例であっても、新リース基準の適用に際し参考にするという観点からは役に立つ点もあるように思います。

      Q2

      契約の対価をリースとリース以外に原則として配分する、とある一方で、借手はリース負債を計上するとき、借手のリース料を割引計算します。対価を配分するということと、借手のリース料の関係が分かりにくいです。

      A2

      収益認識の基準では、契約に複数の履行義務が含まれている場合、各履行義務に取引価格を配分します。それと同じで、契約に使用権の移転(リースを構成する部分、以下「リース要素」)と、その他の財・サービスの提供(リースを構成しない部分、以下「非リース要素」)が含まれている場合には、契約の対価をそれぞれの要素に配分することになります。
      契約の対価のうち、「リース要素」に配分されたものが「リースの対価」と呼べるものですが、会計基準上の用語としての「借手のリース料」や「貸手のリース料」は、この「リースの対価」のうちの一部、例えば借手のリース料であればリース負債の計上対象に含まれるものだけを指します。どの「一部」が「リース料」とされるかは、借手のリース料には明記がありますが、貸手のリース料は現行基準の実務の踏襲を優先したので詳細な規定はなく、借手のリース料とは必ずしも一致しないと思われます。
      この辺り、若干紛らわしいところですが、一般的に「リース料」というと、リース契約で借手が貸手に支払う金額を漠然と指すと思いますが、会計用語としての「借手のリース料」「貸手のリース料」は特定の意味で使われているので、注意が必要ということです。

      【図表】「契約の対価」と借手のリース料・貸手のリース料
      「契約の対価」と借り手のリース料・貸し手のリース料の図表

      KPMG作成


      Q3

      借手について、現行基準のファイナンス・リース取引における「リース料総額」と、新基準での使用権資産やリース負債の計上の対象となる「借手のリース料」は、何が違うのでしょうか?

      A3

      重要な残価保証がなく、借手のリース期間が解約不能期間と一致するようなケースでは、現行基準における「リース料総額」と新基準における「借手のリース料」は、それほど大きな違いはないと思われます。現行基準のファイナンス・リース取引についての新基準移行時の経過措置で、残価保証額の修正についてのみ言及があるのはそのためです。現行基準では残価保証は保証額全体がリース料総額に含まれますが、新リース基準では借手が支払いを見込んでいる金額のみが「借手のリース料」に含まれリース負債の計上対象になります。
      新リース基準導入による「オンバランス化」での最も大きなポイントは(1)オンバランスの対象か(つまり、リースに該当するか)、(2)対象期間はどの程度か(つまり、借手のリース期間は何年か)です。もちろん契約によっては複雑なものもありますが、一般的によくあるリースで「何が『借手のリース料』に含まれるかで悩む」ということはそれほど懸念しなくてよいと思います。
      ただ、現行基準ではリース資産とリース債務は同額で計上されますが、新基準ではIFRS第16号と整合的に、使用権資産にはリース負債の計上額に前払いされた借手のリース料を加えるだけでなく、さらに付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除することが定められています。付随費用や資産除去債務の除去費用は、有形固定資産の取得原価と同じように考えればよいと思われますが、「リース・インセンティブ」についてはそれに何が含まれるかは基準に明記されていません。「リース・インセンティブを控除する」という扱い自体はIFRS第16号から来ていますが、そもそもIFRS第16号でも「リース・インセンティブ」の範囲は明らかにされておらず、実務は様々とみられます。そのため、日本基準でも適宜、各社で判断するものと考えられます。
      上記は、リースの開始日にどのように使用権資産を計上するかについて記載されている事項ですが、そのほかにも借地権の権利金等は(償却しない場合であっても)使用権資産に含めると定められ、差入預託保証金(例えば建設協力金や敷引)の会計処理との関係性も明確化が図られました。そのため、「何が資産負債計上の対象か」という観点からは、資産計上対象は、借手のリース料として列挙された項目だけに限定されないことに注意が必要です。
      なお、現行基準では無形固定資産である「借地権」には権利金以外にも様々なものが含まれています。その一部は「借手のリース料」の前払いとみるべき支出とも考えられますので、新基準への移行時には、整理が必要と思われます(第4回解説も参照)。


      Q4

      5000米ドル基準はなぜ米ドルベースなのでしょう? 毎期円貨換算額が変わってしまいます。

      A4

      見積りに苦慮している会社が多いようですが、ポイントは、何年と見積もるかよりも、「どのように考えて決定したか説明できるか」だと思います。「解約不能期間と同じではだめか?」「契約期間を使うのではどうか?」「適用指針からは賃借設備改良の耐用年数と同じになるはずと言っているように読めるがそうなのか?」などいろいろな質問を受けますが、正解があるわけではありません。IFRS第16号の実務でも、リース期間の決定は各社まちまちの印象です。
      ただし、少なくとも下記の2点には十分注意して判断する必要があると思います。

      • 「もしかしたら〇年で出ていくこともありえなくはない」年数で過少に設定していないか

      リースを終了するということは、(1)その資産の使用をやめる、(2)同じ用途に使える違う資産に切り替える(どんな代替品があるかの検討や契約の事務処理コストがかかり、またその他に入れ替えや移転にもコストがかかるかもしれない)、(3)自分で買う(キャッシュアウトが生じる) のどれかの対応が必要になると考えます。(1)~(3)のいずれのシナリオも採り得ないような短期間を「借手のリース期間」と主張するのは無理があります。

      • 他の年数と矛盾を起こしていないか

      例えば、賃借設備改良の残存耐用年数や資産除去債務の算定上の退去想定時期は10年後なのに、借手のリース期間は2年だと、「借手のリース期間が短すぎるか、耐用年数や除去債務の算定対象期間が長すぎるのでは?」という印象を受けてしまいます。これについて、納得感のある答えを用意できるか、経営者として説明責任が問われることになります。



      次回(最終回)はリース負債の見直しや経過措置について説明したいと思います。まだ先の話…と思われるかもしれませんが、重要なポイントは早めにおさえて置くのが成功のカギです!


      執筆者

      あずさ監査法人
      会計・開示プラクティス部
      公認会計士 パートナー 植木 恵

      リースに関する基準の論点や動向に関する解説を掲載します。

      多くの企業に影響する最新の会計・開示情報を、専門家がわかりやすく解説します。