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      この記事は、「週刊 経営財務 No.3713」に掲載したものです。発行元である税務研究会の許可を得て、あずさ監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。

      ※WEB上の機能制限により レイアウトや箇条書きの表示など 原稿とは異なる場合があります。ご了承ください。


      <第2回>

      第1回は、リースの識別についてお話ししました。リースの識別をどう考えるかはなかなか難しく、適宜、スクリーニングをかけた後で、残った契約につき、基準の読み方に慣れた人が検討する、というのが現実的です、というお話をしました。

      今回は少額リースの考え方について説明します。

      少額リースというと「...所詮重要性の話でしょ?」と言われそうですが、「契約がリースを含むかまじめに検討しなければならない」契約をスクリーニングするという観点からは、重要な視点です。少額リースにあたるのであれば、一生懸命検討してリースかどうかを考えたところで、会計処理にも注記にも何の影響もないためです。

      なお、以下、意見に係る部分は筆者の個人的な見解であることをお断りしておきます。


      Q1

      少額リースの基準としては2つあり、1つ目は「借手のリース料が、重要性が乏しいとして購入時に償却性資産を費用処理している場合の基準額以下」ですが、もう1つは2つの選択肢(いわゆる、300万円基準と5000米ドル基準)から選ぶとなっています。「どちらの範囲が広いかは一概に言えない」とありますが、300万円と5000米ドルでは金額にかなりの差がありませんか?

      A1

      適用指針によると、以下のいずれかを選択できるとあります。
      (1)企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1 件当たりの金額に重要性が乏しいリース(金額的な目安として300万円への言及がある)
      (2) 新品時の原資産の価値が少額であるリース(金額的な目安として5000米ドルへの言及がある)
      (1)と(2)は「何を以て少額(金額的な重要性がない)と考えるか」の捉え方に違いがあります。
      現行日本基準の扱いを踏襲する(1)は、「その契約に重要性があるか」を見ています。
      一方、IFRS会計基準と同様の扱いである(2)は、リースの対象となる資産それ自体がそもそも重要性のある資産かに着目します。
      そのため、【図表1】のような違いがあります。

      【図表1】 「『少額』リース」の考え方
       (1)の方法(いわゆる300万円基準)(2)の方法(いわゆる5000米ドル基準)
      事業内容の観点からの重要性の判断必要。問われない。
      金額の判定単位契約単位、科目の異なる有形固定資産又は無形固定資産が含まれているときは、異なる科目ごとに集計してもよい。リース1件ごと※2
      契約との関係

      契約単位での判断となるため、リースされる対象資産ひとつひとつが少額でも、まとめて契約することで抵触する可能性がある。
      会計処理上「契約の結合」が必要な状況でも、少額リースにあたるかの判定上は複数契約を合計する必要はない。

      契約単位での判断ではないため、リースする対象資産が複数ある場合に、「設備一式」のようにまとめて契約しても、各設備ごとにバラバラに契約しても、結論は変わらない。
      金額の算定方法

      明示的な規定はない※1

      なお、維持管理費用相当額は除外して考えることができる。

      契約の対象となる金額で判断するため、同じ資産でもどういう契約で借りるかにより、結論は異なる。

      新品時の原資産の価値。

      対象資産が同じであれば、契約内容(新品か中古品か、借手のリース料の水準、期間の長さなど)には影響を受けない。

      ※1:Q2参照 ※2:Q3参照


      Q2

      300万円基準(Q1の(1))のほうは「リース契約1 件当たりの金額」で判断するとありますが、これはそもそも何の金額と考えればよいのでしょうか?

      A2

      この300万円基準は現行適用指針の「少額リース資産」の扱いを継続する目的で設けられているものです。金額のベースをあえて示さなかったのは、何らか明記することで現行実務からの変更が迫られる企業が出ないようにすることを意図したと思われます。ですので、「金額が何を指している」か、は、現行基準との整合性の観点で判断する必要があります。所有権移転外ファイナンス・リース取引に関する現行適用指針の定めをもう一度確認してみましょう。


      35. 個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合とは、・・(略)
      (3) 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で、リース契約1件当たりのリース料総額(維持管理費用相当額又は通常の保守等の役務提供相当額のリース料総額に占める割合が重要な場合には、その合理的見積額を除くことができる。)が300万円以下のリース取引
      なお~(以下、略)

      「リース料総額」という概念は、新基準で言えば「借手のリース料」にあたると考えられます。「借手のリース料」を計算するには、本来「借手のリース期間」を決定しなければなりません。しかし、少額かどうかを判定するだけのために「借手のリース期間」を決定しなければならないのは負担が重いことから、契約期間に拠ることも認められています。
      「借手のリース料」に含まれない、つまりリース負債計上の対象とならない支払いはどうでしょう?例えば、売上などに連動して支払い額が決まるようなリース料です。一部の業態などでは比較的一般的にみられる支払い条項ですが、現行適用指針では検討・考慮の対象外となっていました。さらに、現行適用指針の少額リース資産の定めは「ノンキャンセラブル」「フルペイアウト」が前提のファイナンス・リース取引に関し、賃貸借処理を認めるかどうかの閾値で、特に関連する注記の規定などもなかったため、リース債務の計上対象とならない支払いは検討の必要もなかったと言えるかもしれません。
      新基準の適用にあたり改めて考えたとき、支払いの一部が固定、一部が変動の場合、300万円基準をどう適用するのか。「借手のリース料」に該当する部分だけに着目して金額の枠内に収まれば、総支払額が多額でも、少額リースとしてよいのか。
      また、売上等に連動する支払いは「借手のリース料に含まれない借手の変動リース料」として費用計上額の注記が要求されますが、一方で、少額リースに係る費用計上額は注記が要求されていません。では、全体が変動、もしくは、支払いの一部が変動の場合で(固定部分を含めて)支払見込総額が300万円の枠内に収まるときでも、変動部分の注記は必要なのか。
      基準の書きぶりは必ずしも明確ではなく、考え方次第で会計処理や注記に重要な影響が生じるような場合は、慎重に整理を進めたほうがよさそうです。

      Q3

      5000米ドル基準(Q1の(2))の「リース1 件ごと」は「契約ごと」と何が違うのでしょうか?リースの対象資産1件ごと、と思えばよいですか?

      A3

      リース1件ごと、とは、「独立したリース構成部分ごと」という意味です。「独立したリース構成部分」という概念については適用指針で以下と定められています。
      (1)当該原資産の使用から単独で借手が経済的利益を享受することができること、又は、当該原資産と借手が容易に利用できる他の資源を組み合わせて借手が経済的利益を享受することができること、かつ、
      (2) 当該原資産の契約の中の他の原資産への依存性又は相互関連性が高くないこと
      要するに、ごくざっくりいうと「そこだけ借りてきて用を足すことができる」というようなイメージでしょうか?

      契約に複数の対象資産が含まれているとして、通常は、その中の資産を一つだけ取り出してきても上記はその資産1件ごとに満たされると考えられます。例えば1つの契約で車を300台借りる場合、これは、300件のリースということになります。
      しかし、そうではない場合もあり、その場合は、上記が満たされる「対象資産グループ」をまとめて、一つの「独立したリース構成部分」と判断します。
      例えば敷地とその上に建設されたビルは通常切り離して使用することはできないため、2件のリース(土地のリースと建物のリース)とはカウントせず、1件の「土地付き建物」のリース、と判断します。このように、「リース1件」がどの資産(グループ)を対象とするかを検討し、そこに複数資産が含まれるときは、まとめて「5000米ドル基準」を適用します。


      Q4

      5000米ドル基準はなぜ米ドルベースなのでしょう? 毎期円貨換算額が変わってしまいます。

      A4

      昨今為替変動が激しいこともあり、気になるところかもしれませんが、実はそういうことを検討することにはあまり意味がありません。
      「5000米ドル」としているのはIFRS会計基準と同じ表現とすることによりIFRS会計基準の扱いを日本基準でも使えるようにするという意図を達成するためです。
      またIFRS会計基準の5000米ドル」とは企業の規模・レベル感に関係なく、だれにとっても、「個別の資産としてみたときに、たいして金額的な重要性がないもの」という意味の例示でしかありません。
      例えば100万ドル、というと、規模の大きな会社では「たいしたことない」と考えるかもしれませんが、一般的な会社にとっては多額な金額です。でも、1ドルだったら? 「1ドルを笑う者は1ドルに泣く」という言葉があるかは知らないですが、財務諸表における1ドルに目くじらを立てる人はおらず、それが150円でも170円でも変わりはないでしょう。そういう意味で「会社の規模に関係なく、目くじら立てるほどではないレベル」という意味で5000米ドルは示されています。ですので、これが50万円なのか、80万円なのか、といったことは議論になりません。
      一方、「5000米ドルも1万米ドルも、どっちも、大差ないでしょ」と考える大企業もあるかもしれません。そういう会社は、5000米ドルではなく1万米ドルを基準にオンバランス要否を検討するかもしれませんが、これは「『少額リース』の閾値に5000米ドルを使うか1万米ドルを使うかが、財務諸表利用者の意思決定に影響するレベルの違いを財務諸表上生じさせない」という一般的な意味での「重要性に基づく判断」となります。ですので、1万米ドルを基準にオフバランスされなかったリースにつき、もしオンバランスしていたら財務諸表レベルにどういう影響があったかを勘案し、重要な影響がないという場合にのみ、オンバランスしなくてよいという整理になります。今は1万ドルは大したことなくても数年後に万が一業績不振に陥ったりすると、もしくは業績は変わらなくてもリースの取扱いが増え、金額基準で切り捨てられるリースがかさんで「無視されている」金額が積みあがると、1万米ドルか5000米ドルかの違いは大問題になる可能性もあることには、考慮が必要です。
      この点、「5000米ドル基準の少額リース」とは、「オフバランスしていることにより財務諸表に重要な影響が生じているかどうか」という視点の検討自体を、不要とする、ある意味「通行手形」のようなものと考えればよいと思います。



      次回は契約の対価とリース料の関係などについて説明したいと思います。原稿と何が違うのかなど、現場から寄せられる疑問を整理します!

      【図表2】新リース基準における借手の処理
      新リース基準における借手の処理

      KPMG作成


      執筆者

      あずさ監査法人
      会計・開示プラクティス部
      公認会計士 パートナー 植木 恵

      リースに関する基準の論点や動向に関する解説を掲載します。

      多くの企業に影響する最新の会計・開示情報を、専門家がわかりやすく解説します。