IFRS会計基準適用企業では、2024年4月に国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」の適用に向けて、検討が進んでいます。IFRS第18号は、2027年1月1日以後開始する事業年度から適用され、早期適用も認められます。本解説シリーズでは、「IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」を参照し、IFRS第18号の主な留意点を紹介していきます。
第9回目の本稿では、経営者が定義した業績指標(MPM)の開示について解説します。
Q-1:MPMに関する注記事項について、教えてください。
A:MPMの定義(「第8回 経営者が定義した業績指標(MPM)」参照)を満たす指標については、以下の事項を単一の注記において開示することが求められます(IFRS 18.122-125)。
- MPMが企業全体の財務業績の一側面についての経営者の見方を提供するものであり、他の企業が提供している類似した名称又は記述を共有する指標と必ずしも比較可能ではない旨
- MPMによって伝えられると経営者が考える財務業績の一側面についての記述(MPMが企業の財務業績に関する有用な情報を伝えると経営者が考える理由を含む)
- MPMの計算方法
- MPMと最も直接的に比較可能な小計(IFRS第18号第118項に列挙される小計又はIFRS会計基準で表示・開示が具体的に要求される合計・小計)との調整表(各項目の法人所得税及び非支配持分への影響を含む。法人所得税はその影響の算定方法も開示)
- MPMの変更、追加または使用の中止等を行う場合、変更等及びその影響の説明、変更等の理由、修正再表示した比較情報(修正再表示後の比較情報を開示することが実務上不可能で開示しない場合、その旨)
図表1は、MPMと最も直接的に比較可能な一般的な小計との調整表の例となります。MPMは、一番右の列の「調整後営業利益」及び「調整後継続事業からの純利益」であり、当該MPMをIFRS第18号で要求される一般的な小計である「営業利益」及び「継続事業からの純利益」とそれぞれ調整しています。各調整項目については、法人所得税及び非支配持分への影響額を記載するほか、法人所得税への影響(税効果)の算定方法について開示しています。
図表1 MPMと最も直接的に比較可能な一般的な小計との調整表の例
(出所)IFRS第18号の設例(IFRS18.EI8)に基づき、あずさ監査法人作成
Q-2:調整表を作成するにあたり、最も直接的に比較可能な一般的な小計は、純損益計算書に表示されている小計でなければなりませんか?
A:いいえ、MPMを純損益計算書に表示されていない小計に調整することが認められています(IFRS 18.B140)。その場合、MPMの調整先とした純損益計算書に表示されていない小計を、純損益計算書に表示している最も直接的に比較可能な小計に調整しなければなりません(同項(a))が、この小計間の調整については、法人所得税及び非支配持分への影響額の記載は省略可能(同項(b))とされています。
図表2は、MPMに該当する調整後EBITDAを、純損益計算書に表示されていない小計であるOPDAI(減価償却、償却及び減損の前の営業損益)を経由して、IFRS第18号で要求される小計である営業利益に調整している表となります。なお、前述のとおり、純損益計算書に表示されていない小計(OPDAI)と純損益計算書に表示している小計(営業利益)との間の調整では、法人所得税及び非支配持分への影響額の開示を省略しています。
図表2 純損益計算書の本表に表示されていない小計との調整表の例(※)
※本設例では、便宜上、税効果の算定方法についての開示を省略しています。
(出所)2023年10月新興経済グループ会議資料に基づき、あずさ監査法人作成
Q-3:MPMは純損益計算書の本体に表示することも認められますか?
A:IFRS第18号では、MPMの定義を満たすすべての指標に関する情報を、単一の注記において開示する(IFRS 18.122)ことが原則となりますが、MPMの特徴を忠実に表現する名称(IFRS 18.43)を用いて、かつ以下の一定の要件(IFRS 18.24, 43, BC374-BC375)を満たすMPMは、追加的な小計として純損益計算書の本体に表示することが可能であると考えられます。
- IFRS会計基準に従って認識し測定した金額で構成されている
- 純損益計算書の構成と両立可能であり、有用な体系化された要約を提供する
- 期間ごとの継続性がある
- IFRS会計基準で要求される合計及び小計よりも目立たないように表示される
- 財務諸表利用者に誤解を与えない方法で名称を付されている
企業によっては、従前より純損益計算書において追加的な小計を表示しているケースも想定されますが、IFRS第18号適用後も引き続き純損益計算書に追加的な小計として表示することが適切であるかどうかについては、上記を踏まえて慎重に判断する必要があると考えられます。
第9回の解説は以上となります。
IFRS第18号の考え方について、詳しく知りたい方は「IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」をご覧ください。
執筆者
あずさ監査法人
会計・開示プラクティス部
マネジャー 川上 章