必見!IFRS 18実践ポイント 第8回 経営者が定義した業績指標(MPM)

IFRS®会計基準適用企業はIFRS第18号の適用に向け検討を進めています。本解説シリーズではIFRS第18号の主な留意点を紹介します。 第8回目の本稿では「経営者が定義した業績指標(MPM)」について解説します。

IFRS®会計基準適用企業はIFRS第18号の適用に向け検討を進めています。本解説シリーズではIFRS第18号の主な留意点を紹介します。 第8回目の本稿では「経営者が定義した業績

IFRS会計基準適用企業では、2024年4月に国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」の適用に向けて、検討が進んでいます。IFRS第18号は、2027年1月1日以後開始する事業年度から適用され、早期適用も認められます。本解説シリーズでは、「IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」を参照し、IFRS第18号の主な留意点を紹介していきます。

第8回目の本稿では、経営者が定義した業績指標(MPM)について解説します。

Q-1:経営者が定義した業績指標とは何ですか?

A:経営者が定義した業績指標(management-defined performance measure、以下「MPM」という)とは、収益及び費用の小計のうち以下の3つの要件を満たすものとされています(IFRS 18.117)。

  • 企業が財務諸表の外での一般とのコミュニケーションにおいて使用している
  • 企業が企業全体の財務業績の一側面についての経営者の見方を財務諸表利用者に伝える
  • IFRS第18号で列挙されている小計(IFRS 18.118)、又はIFRS会計基準で表示・開示を具体的に要求されている小計に該当しない

企業は、図表1のような流れでMPMを識別することになります。
なお、一般とのコミュニケーションには、例えば、決算説明やプレスリリース、投資家向けのプレゼンテーションなどは含まれますが、口頭でのコミュニケーションやソーシャルメディアへの投稿などは含まれません(IFRS 18.B119)。
また、企業が反証しない限り、財務諸表の外での一般とのコミュニケーションにおいて使用される収益及び費用の小計は、企業全体の財務業績の一側面についての経営者の見方を財務諸表利用者に伝えると推定されます(IFRS 18.119)。

図表1 MPMの識別

必見!IFRS 18実践ポイント 第8回 経営者が定義した業績指標(MPM)図表01

(出所)IASB IFRS18 Effects Analysisに基づきあずさ監査法人作成

Q-2:一般とのコミュニケーションで使用される収益及び費用の小計がMPMであるとの推定に反証することはできますか?

A:IFRS第18号では、以下の2つの状況を示す合理的で裏付け可能な情報を有している場合にのみ、企業は推定に反証することが認められます(IFRS 18.B124)。

  •  収益及び費用の小計が、企業全体の財務業績の一側面についての経営者の見方を財務諸表利用者に伝えていない(例:企業がその小計を目立たせずに伝えている)
  •  企業が、企業全体の財務業績の一側面についての経営者の見方を財務諸表利用者に伝えること以外に、一般とのコミュニケーションにおいて小計を使用する理由がある(例:法律又は規則によって、一般とのコミュニケーションにおいて使用することが要求されている)

企業が推定に反証することができるケースについては、「IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」のセクション3.1.2では、MPMに関する規定が設けられた背景と併せて説明しています。 

Q-3:MPMの範囲や具体例について教えてください。

A:IFRS第18号では、MPMの範囲を収益及び費用の小計のみに限定しています(Q-1のA参照)。一方、経営者が定義した業績の指標として、実務上、企業が提供することが多い、いわゆる「Non-GAAP」指標(「代替的業績指標」または「主要な業績指標(KPI)」と呼ばれることもある)は、MPMよりも範囲が広くなっています。
これらの業績指標とMPMの関係を、具体例を用いて図表2に示しています。例えば、収益及び費用の小計である「調整後純損益」や「調整後営業利益」はMPMに該当しますが、収益のみ、または費用のみの小計、フリー・キャッシュ・フローや顧客数などの業績指標はMPMに該当しません。
ここで留意すべき点として、投下資本利益率(ROIC)などの財務比率はMPMに該当しませんが、財務比率の分子または分母に使用している収益及び費用の小計がMPMの定義を満たす場合には、その分子または分母はMPMに該当することになります。

図表2 MPMの範囲と具体例

必見!IFRS 18実践ポイント 第8回 経営者が定義した業績指標(MPM)図表02

(出所)IASB IFRS18 Project Summaryに基づきあずさ監査法人作成

第8回の解説は以上となります。

IFRS第18号の考え方について、詳しく知りたい方は「IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」をご覧ください。

第9回では、「MPMの開示」について解説します。

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