本質は企業価値視点で経営改革力を高めること
- 東証は2023年3月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を公表しました。低PBRに留まっている上場企業に対して、「継続して資本コストを上回る資本収益性を達成し、持続的な成長を果たすための抜本的な取組み」についての積極的かつ速やかな対応を求めています。
- 日本企業の多くは、コーポレートガバナンス・コードへのコンプライをはじめ、ROE目標の設定、ROICの導入等、企業価値向上に向けた取組みを推進してきました。しかしながら、いまだPBRの改善を実現できない企業が多い状況です。
- KPMGは、多くのケースで、広義の「ガバナンス」に本質的な課題があると考えます。
ガバナンスが有効に機能していない具体的な事象として以下のようなケースが見受けられます。- 「持続的成長と中長期的な企業価値向上」という目的を見失い、サイロ型組織において、個別最適な施策の立案・実行を続けてしまう。
- 実行が容易な対応策にのみ焦点を当て、対処すべき真の課題に向き合わない。
- その典型例として、「ROIC経営」を標榜しつつ、実態としてはROICの値を計算・確認するにとどまり、経営改革につなげられていないケースが挙げられる。
- 明確な事業戦略の立案と戦略に基づく事業ポートフォリオの見直し・組換えの実行ができておらず、コングロマリットディスカウントを招いている。
- 「持続的成長と中長期的な企業価値向上」という目的を見失い、サイロ型組織において、個別最適な施策の立案・実行を続けてしまう。
- これら課題に対して企業と投資家との認識に大きな乖離が存在しています。企業は従来のPL目線の延長線で資本収益性を向上させることを志向しているのに対して、投資家は事業ポートフォリオの見直し・組換えやROICといった収益・効率性指標の全社展開が課題であると認識しています。
<企業と投資家へのアンケート>資本収益性向上のために必要と考える取組み
出所:生命保険協会 「生命保険会社の資産運用を通じた『株式市場の活性化』と『持続可能な社会の実現』に向けた取組について」2023年4月21日を元にKPMGにて作成
- いま、低PBR企業に求められるのは、これらの本質的な課題に向き合い、経営管理の仕組みを改善しガバナンスを効かすことで、企業価値視点で経営改革力を高めていくことであるとKPMGは考えます。
企業価値を創出する仕組みを整備する
- 企業価値視点で経営改革力を高めるためには、企業価値を創出する一連の取組みである「事業ポートフォリオマネジメント」、「キャッシュフローアロケーション」、「財務戦略・資本政策」について、基本方針および評価の仕組みと、これら基本方針を適切な経営意思決定につなげ、経営管理を行っていくための諸制度・プロセス・システムの整備が必要です。また、一連の取組みを持続させるための規律となるガバナンスが重要となります。
- そのうえで、ディスクロージャーやIR活動を通じて、これらの取組みにコミットすることで、成長期待の持てる、投資魅力のある企業であることを外部に示していく必要があります。
- 企業価値を創出するそれぞれの取組みには、対処すべき事項が多数存在し、また相互に関連しています。
- これらの取組みを自社の経営に実装しつつ、ガバナンスを効かし経営の意思決定の質・スピードを高めていくことが重要です。
- これらの取組みの一例として「ROIC経営」がありますが、「ROIC経営」はこれらが高いレベルで実装され、経営管理の制度やプロセスが定着している状態を言います。
企業価値を創出する一連の取組み
KPMGによるご支援
- KPMGは企業価値視点で経営改革力を高めるために以下の支援を行っています。
初期対応支援
企業価値を創出する貴社の取組みの点検・診断を踏まえ、貴社固有の課題出しを行ったうえで、階層別(取締役会・経営会議・本社部門・事業部門)の勉強会・ワークショップを実施します。
企業価値視点での経営改革力強化支援
企業価値を創出する一連の取組みについての個々の論点について対応し、ROIC経営の実装およびIRにおける訴求を支援します。
- 事業ポートフォリオに関する基本方針の策定
- 評価軸の決定(経済性評価:ROIC・ROIC Spread・EVA等の経済性評価・事業性評価・サステナビリティ評価/炭素リスク評価)
- 事業別WACC/ハードルレートの設定
- 事業ポートフォリオ評価を踏まえた事業ごとの投資枠設定
- 評価プロセス・ルールの整備
- ROICを活用した事業ごとの業績評価と年度予算との連動 等
- 財務戦略・資本政策
- 最適資本構成の方針立案
- 格付アプローチDebt Capacity の把握
- 事業リスクアプローチ(必要最低資本の把握)
- リスク・リターンアプローチ(市場実勢ベースの資本コストからみた必要最大資本の把握)
- 連結WACCの最適化
- バランスシートの還元余力から見た株主還元方針の策定 等
- 投資・株主還元のアロケーション方針
- 投資プロセス
- 投資基準の整備・投資用ハードルレート設定
- 財務・税務・ビジネス・ESGデューデリジェンス
- 売却・再構築・撤退プロセス
- セルサイド・カーブアウトプロセス支援
- リストラクチャリング
- 会計・税務ストラクチャリング
- キャッシュフロー(利益)視点から見た株主還元方針の決定 等
- 取締役会・経営会議・管理部門・事業部門の役割の定義
- 事業ポートフォリオ会議・投資パイプライン会議等の新設・運営
- 関連規定の整備 等
- 基本方針に基づく経営管理諸制度(ルール・基準・KPIなど)、業務プロセス、情報システムの整備 等