電子メール監査や社内ディスカバリー演習の有効性
従来、電子メール監査や、ディスカバリー(e-Discovery)※1は、不正が発生した際の「不正調査」「当局・訴訟対応」の段階で実施されてきました。しかし、次の理由から、平時の段階においても、電子メール監査や社内ディスカバリー演習を実施する企業が増加しています。
- カルテル・贈与・キックバック等の不正は、従来型の会計帳簿等の監査だけでは発見が困難であり、電子メールの内容をモニタリングすることが予防や早期発見に有効であること。
- カルテル・贈与・キックバック等に関する各種当局の捜査・調査においても、電子メール調査が実施され、重要な証拠資料として採用されていること。
- 「カルテル」「賄賂」を早期発見し、当局に自主申告した場合には、制裁が免除または軽減される可能性があること。
- 有事におけるディスカバリーは、電子ファイルの容量に応じて従量課金がなされ、莫大なコストがかかるため、平時から不要な電子ファイルの保管状況を特定し、改善施策を講じることは、有事におけるコスト削減にも資すること。
特に、公正取引委員会が東証一部上場企業に対して実施した外国競争法に関するサーベイ※2によると、カルテルリスク対策の目的で電子メールのモニタリングを導入している企業が少なくないことが伺えます。ただし、電子メール監査や社内ディスカバリー演習の実施には、次のような困難が伴います。
※2「我が国企業における外国競争法コンプライアンスに関する取組状況について~グローバル・ルールとしての取組を目指して~」公正取引委員会 2015年3月発行
実施における留意点
- 一般的に、複数名の閲覧担当者の確保が必要となる。
- 電子メール監査やディスカバリーの専用ソフト等のIT環境を整えるには、一般的に高額な投資が必要になるが、投資効果が得られるか不明確である。
- 専用ソフトの操作方法が複雑でわかりにくい。
- 閲覧対象者が複数になると、CCによる電子メールの重複が多くなる。
- 閲覧対象の電子ファイルが大量になると、キーワード等による絞込みが必要になるが、有効かつ効率的な条件の設定には相応の知見が必要となる。
- 監査人が複数になると、閲覧結果の適時共有と監査品質管理が困難となる。
KPMGが提供するサービス
KPMGでは、次のような各社のニーズに応じたサービスを提供しています。
- KPMGの専用システムを活用した電子メール監査や社内ディスカバリー演習の実施代行の支援
- 貴社内で電子メール監査やディスカバリー体制を構築する際の、システム導入や制度設計の支援
- 文書管理体制や、既存の電子メール監査制度等の現状診断等
電子メール監査/社内ディスカバリーに関するサービスメニュー
電子メール監査に関するサービス内容
1.電子メール監査の実施代行
調査計画策定から、調査実施、調査結果報告書、改善施策の提案、貴社内の報告用資料の作成までを行います。カルテル・賄賂などの各テーマについて、電子メール監査・調査の豊富な実務経験に基づくKPMGの知見を活用することで、自社のみの取組よりも短期間で、高品質な監査が可能です。
2.既存の電子メール監査制度の見直し診断
既存の電子メール監査制度を診断し、コストや監査手続における合理化の余地を特定します。また、合理的に監査コストを軽減するための施策を提言します。監査テーマに関するリスク評価制度を導入すること等を通じて、合理的に監査工数を削減することが可能です。
3.自社内で電子メール監査体制を整備する際の導入支援
電子メール監査制度を導入する際に、システム導入や監査手続の設計を支援します。全事業・全拠点・全役職員へ一律に電子メール監査を実施するのは、費用対効果の観点から望ましくない場合が多いといえます。リスク評価の実施等により、リスク度に応じたメリハリのある監査制度の導入を支援します。
社内ディスカバリーに関するサービス
4.社内ディスカバリー演習の実施代行
平時の段階からディスカバリー演習を体感することで、有事のディスカバリー対応、文書管理、リスク管理、コンプライアンスの観点からの改善ポイントを洗い出し、改善施策を提案します。
5.文書管理体制の短期診断
貴社の文書管理体制を診断することで、文書管理上の改善点を特定し、有事のディスカバリーにおけるコスト削減を含む、ディスカバリー対応を円滑に進めるための改善施策を提案します。
6.自社内でディスカバリー体制を整備する際の導入支援
貴社で独自にディスカバリー体制を構築・導入する際に、ディスカバリー専用ソフトやサーバの選定から、システム構築・導入までを支援します。KPMGの経験豊富なディスカバリーの専門家による支援により、システムを短期間で効率的に導入することができます。