1989年7月のアルシュ・サミットで、薬物犯罪に対するマネー・ローンダリング対策のための国際協力を強化する目的でFATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)が設立されてから、マネー・ローンダリング対策およびテロ資金供与対策は国際社会におけるもっとも重要なアジェンダの1つであり続けています。
FATFは、各国が採るべきAML/CFT対応の基準として「FATF勧告」を策定していますが、大量破壊兵器の拡散、公務員による贈収賄や財産の横領等の腐敗等の脅威にも的確に対処することなどを目的とした2012年の改訂、その後の仮想通貨交換業者等にAML/CFT規制を課すことを求める等の継続的な改訂がされています。2019年には第四次対日相互審査が実施され、その結果、日本は「重点フォローアップ」(Enhanced Follow-up)の対象国となったことから、3年以内の法令対応や、5年後のフォローアップ審査に向けた対応を行っていくことが求められています。
KPMGは、AML/CFT対応および金融機関等の業務に精通したプロフェッショナルが積み重ねた知見や世界146の国と地域に亘るグローバルネットワークを活用し、特定事業者のリスクに応じたAML/CFT管理態勢の構築・高度化や、AML/CFT関連システムの有効性検証等のサポートをいたします。
テロ資金供与とは、「テロの実行支援等を目的としてテロリスト等に資金を渡す行為」を言います。
拡散金融とは、「核兵器などの大量破壊兵器の拡散に関与する者へ資金を渡す行為」を言います。
出典)金融庁「金融機関におけるマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策について」を基にKPMGで整理
第四次FATF対日相互審査結果
FATF相互審査は、法令整備状況を評価するテクニカルコンプライアンス(TC)と国のAML/CFTシステムの実効性を評価するエフェクティブアセスメント(EA)によって評価されます。それぞれ4段階のうち上位2段階未満となった項目の数がTCで12項目、EAで8項目となり、重点フォローアップの対象となっています。AML/CFT規制に服する事業者に影響を与え得る主な指摘の内容は以下のとおりです。
マネー・ローンダリング関連のサービス事例
現状分析・態勢整備支援
各国の法規制・ガイドラインや金融機関等における先行的な事例を踏まえて、各特定事業者の目指すべきレベル(ベンチマーク)を整理し、現状の態勢整備状況の分析を行います。
ベンチマークは、FATFやバーゼルコミッティ等の国際的な要請や金融庁の公表する「マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策に関するガイドライン」等の要請を基に、業種や業務内容を踏まえて目指すレベルを整理し、特定事業者の現状態勢とのギャップの有無を分析します。特定したギャップに対するアクションプランは、設定すべき目線や各特定事業者のリスク特性、先行プラクティス等を踏まえて、実効性のあるものを策定します。
リスク評価実施・特定事業者作成書面策定支援
リスク評価は、特定事業者が限りある経済的・人的資源を最大限有効に活用し、効率的かつ効果的な対応(リスクベースアプローチ)をするための基礎となる重要な取組みです。犯収法等においても特定事業者には、特定事業者作成書面の策定が求められています。KPMGが、特定事業者のリスク評価の実態およびリスク評価結果を踏まえた特定事業者作成書面の策定や、制度設計上の調整(例:リスクに見合った手続きの設定等)を行うための支援をします。
テスティング実施支援
あらゆるリスク管理活動において、導入した統制が適切に運用され、有効に機能しているかを継続的に確認することや、潜在的なリスクの有無をモニタリングすることが求められます。特に、AML/CFT対応においては、各特定事業者が一定の態勢整備をしている状況であり、導入したコントロールが有効に機能しているかを継続的に検証する必要があります。KPMGはコンプライアンス部門(第二線)および監査部門(第三線)における運用状況のモニタリング活動に関して以下のような支援を提供します。
- テスティング制度の設計・導入支援
- テスティング手続・マニュアル策定支援
- テスティングの実施支援
- テスティング結果を踏まえた改善策の策定支援
- テスティング制度の見直し支援
各種コントロールの設計・導入支援
KPMGは、国内外の当局等のガイドラインや先行的なプラクティスを踏まえて、AML/CFTに係る各種コントロールの制度設計や導入、既存のコントロールの見直しの支援を行います。例えば、以下のようなご支援が可能です。
- 顧客リスク格付け制度の検討・見直し
- 顧客管理措置(CDD/EDD)の見直し
- 定期的な顧客情報更新の制度導入・見直し
- 取引モニタリングシステムの導入・見直し
- 取引フィルタリングシステムの導入・見直し
- ITシステム等を活用した業務の効率化 等
AML/CFT関連システムの有効性検証支援
多くの特定事業者が、顧客リスク評価(格付)や取引モニタリング、取引フィルタリングの取組においてシステムによる統制を導入して対応しています。こうしたシステムは、マニュアルでは検知できない高リスクの取引や顧客の抽出等を可能としますが、閾値やルールの設定・設計や、入力されたデータの品質によって有効性が左右され、必ずしも効果的に活用されていないケースも見られます。KPMGでは、データ連携・品質や閾値等のチューニングの適切性も含めて、以下のようなシステムの有効性検証の実施支援いたします。
システム有効性検証の全体像イメージ
取引モニタリングの検証
取引モニタリングシステムの有効性検証では、以下のような支援を実施します。
- 文書査閲やインタビューによる取引モニタリング態勢(規程・人員体制等)の適切性の検証
- リスク評価結果やリスク認識とのシナリオの整合性の分析
- 過去の取引データの分析によるシナリオ・閾値設定の適切性の検証
- 過去の取引データを用いたルール再現によるシステム設定・実装の適切性の検証
- 感応度分析やALT/BTL分析を用いた閾値等の調整
取引フィルタリングの検証
取引フィルタリングシステムの有効性検証では、以下のような支援を実施します。
- 文書査閲やインタビューによるフィルタリング態勢(規程・人員体制等)の適切性の検証
- テストデータを用いたあいまい検索精度の検証・業界ベンチマークとの比較分析
- 文書査閲・テストデータを用いたシステム間のデータ連携の適切性の検証
- 文書査閲やサンプル検証によるアラート処理・調査等の適切性の検証
- 文書査閲やインタビューによるPDCA・見直しの枠組みの制度・運用状況の検証 等