サプライヤーリレーションシップマネジメントとは

サプライヤーリレーションシップマネジメント(SRM)とは、一般的には、サプライヤーの能力を見極め、自社のビジネス戦略にどのように適合するかを全社的に評価し、取引サイクル全体を通してサプライヤーとのやり取りを管理することと説明されます。SRMの潜在的なメリットは、戦略的パートナーであるサプライヤーと相互に有益な関係を築くことによって、従来の取引手法では達成不可能な、より高い水準のイノベーションを実現できることです。
企業が長い時間をかけて顧客と関係を構築していくのと同様に、サプライヤーとも契約交渉やモノ・サービスの提供等を通じて関係を構築していきます。透明性と協調性のある取組みにより、価値を得ることができると言えます。

パフォーマンスとパートナーシップの統合

真のパートナーシップモデルの実現が、企業とサプライヤーの双方に利益をもたらす革新的なリレーションシップモデルへの重要なターニングポイントであると考えられています。そのため調達リーダーは、業績目標の達成と、取引プロセスにおける関係の管理に注力しなければなりません。
調達チームは、次のような手法を用いることで、生産性を向上させ、戦略的要素に費やす時間を確保することができます。

  • システムパフォーマンスに関するアラートや地政学的な出来事などのリアルタイムのサプライヤーデータを、パフォーマンス管理と問題の対応に役立てる
  • 予測分析により、財務格付けや支払い状況などの早期警戒リスク指標を発見し、リスクのトリガーをプロアクティブに特定する
  • 第三者を通してサプライヤー評価を行うことで、現在および将来のリスクを軽減する
  • テクノロジーとオートメーションにより、「あるべきコストモデル」など、調達に関する意思決定やインサイトを入手する

サプライヤーとの強固なパートナーシップ構築

調達部門とサプライヤーとの力関係は均衡を取ることが難しいものではありますが、方法論的アプローチによって簡単に回避することができるエラーも存在します。まず、サプライヤーを戦略上および取引上の影響力の有無などで区分して整理することから始めます。次に、サプライヤーの格付けと指標をモニタリングしながら、関係を管理する担当者を決めます。そして最終的には、サプライヤーが自社にとってさらなるプロダクトイノベーションと市場優位性をもたらすことが期待できます。
サプライヤーとのパートナーシップから最大の利益を引き出すために、企業は統一された見解、つまり、明確で一貫したメッセージ、期待、要求事項を示す必要があります。以下の各要素が、健全で長期的な関係の構築に役立ちます。

  • 単一のSRMモデルを標準とする
  • 主要な内部活動をSRMモデルに組み込む
  • 強力なリーダーシップと調整能力を持つキーパーソンを選定する
  • 企業横断的なインタラクティブセッションを実施する
  • 多様なステークホルダーに関する正式なガバナンス計画を策定する
  • 適切な内部リソースと時間に投資する

チェックリストに照らしたサプライヤー評価

革新的なソリューションの追求には不確実性の増大がつきものであるため、リスク管理もプロセスの一部となります。このプロセスの最初のステップは、潜在的なリスク領域を特定するためにチェックリストに照らしてサプライヤーを評価することです。

【サプライヤー評価のためのチェックリスト(例)】
項目
チェック内容
企業のレピュテーション ・企業の評価にマイナスの影響を与えるような重大なリスクの有無など、サプライヤーに関して、契約破棄や訴訟につながるような懸念の兆候がないか?
サプライヤーの継続性 ・サプライヤーに対して、事業継続計画(BCP)や災害復旧計画(DRP)の策定を要求しているか?
・リアルタイムのアラートで状況をモニタリングし、継続的なサービスを受けられるように、代替サプライヤーと契約を締結するための十分な時間は確保されているか?
サプライヤーの能力 ・サプライヤーは、企業の要求事項に応じるための十分な能力を有しているか?
・自社は、最新の分析結果を用いて、業務上のエラーによって重大な影響を受けないための対応を講じているか?
財務リスク ・サプライヤーが経営難に陥っているという信憑性のある情報が出ていないか?
・データアグリゲーターを利用してサプライヤーの財務リスクをチェックするなど、出口戦略を用意しているか?
サイバーセキュリティ ・情報漏洩に対する備えはできているか?
・サプライヤーの現状をモニタリングし、情報が保護された状態を維持できるような準備はされているか?

透明性を重視する調達パートナーシップ

企業にとってはさまざまなSRMのプロセスやツールを取り入れるだけでは不十分です。効果を得るためには、企業とサプライヤー双方の行動変革が必要です。サプライヤー調査だけでは、根本的な行動は変化せず、最終的にメリットよりもダメージが大きくなってしまうことさえあります。
サプライヤーの意向を確認する1つの方法として、センチメント分析(SNSへの投稿などから感情が表出した文言をマイニング・抽出すること)があります。成功している企業は、有益な情報を抜き出すことによって、単にプロセスを取り入れるだけでなく、リソースを活用して適切なビジネス上の意思決定を行っています。

SRMにおいては、一貫したアプローチと、長期にわたり信頼関係を育むための振る舞いの確立が必要となります。今日の調達パートナーシップにおいては、透明性を重視する真の一体化が必要とされ、連携・協調し合う機会が増えています。

社内コンセンサスの獲得

社内のコンセンサスの獲得は、効果的なSRMシステムを構築するうえで極めて重要なことであるにもかかわらず、多くの企業が見落としています。サプライヤーをどのように管理するのか、そのなかで社員それぞれの役割はどうあるべきかについて社内で合意がなければ、組織を前進させることはできません。
サプライヤーとの戦略的関係を管理するうえで最も困難な点は、多くの場合、組織内の多様な意見を整理し、1つの意見に集約してサプライヤーに伝えられるようにすることです。

戦略的に極めて重要なサプライヤーについては、経営層の支持を得ておくことが必要不可欠であり、慎重な計画が必要です。そのための方法の1つが、「カテゴリー戦略会議」の開催です。この協議会では、各部門が経営層同席のもとで集まり、組織の主要サプライヤーについてハイレベルの意見交換を行います。そうすることで経営層は、サプライヤーとの関係の本質や、特定のサプライヤーが採用されている理由を理解することができます。

お問合せ