消費の多様化、法務・税務要件の変化、M&Aによる絶え間ない業界地図の変化、更なるコスト削減要求、そしてESG対応強化など、さまざま要因のため、従来の調達手法は通用しなくなっています。
調達に影響する破壊的イノベーションに対応するには、これまでにない規模とスピードの変革が必要です。
KPMGは、多くの支援実績と知見により、企業の調達改革を支援します。
調達活動の転換を促す最大の要因―デジタル化
ボタン1つでほとんど何でも購入できるようになった結果、要求部門、調達部門においても、煩雑で時間がかかるプロセスを許容できなくなっています。これからの調達部門は、調達・購買においてシームレスなデジタルエクスペリエンスの実現に向けて進化していかなければなりません。
調達部門は、競争優位性を確立するために「高度なアナリティクスを兼ね備えたデジタルプラットフォーム」上でサプライヤーや要求部門とシームレスにつながり、スタッフの能力を引き上げ、アジャイルオペレーティングモデルを実践する必要があります。
【取り組むべきアジェンダ】
サプライヤー中心の調達
サプライヤー中心の調達では、イノベーションの促進とリスク軽減を図りながら、サプライヤーのパフォーマンス向上と関係性を新たなレベルに押し上げることを重視します。これには次の要素があります。
1.高度な統合
・システムとデータのより深い相互接続による可視性
・サプライヤーによるフロントでのコンテンツ管理
2.サプライヤーイノベーション
・サプライヤーが事業、製品、カテゴリーイノベーションに貢献
・事業への付加価値に基づいた評価
3.パフォーマンスの最適化
・人工知能(AI)による先を見越した/予測的なパフォーマンス管理
・統合された視点(センチメント、コミュニティ、サードパーティデータ)
カテゴリーイノベーション
これからの調達業務では、ビッグデータと分析によって、これまでになかったインサイト(見識や洞察)がカテゴリーマネジャーにもたらされます。しかしその価値を最大限に引き出すためには、適切なシステム、プロセス、リソースを配置しなければなりません。これにより、インテリジェントな自動化によるインサイトがオンデマンドで得られ、予測、需要計画、あるべきコスト(Should-cost)管理が可能になります。
カテゴリーイノベーションでは、以下の方法を通じて未開拓の価値を実現します。
- 単純作業の自動化
- データ分析による戦略策定サポート、情報に基づく意思決定、行動の促進
- 変化を予測し、先行指標を監視する予測型AI
- 供給市場の知識をビジネス戦略にもたらす深いインサイト
- 事業活動に関連するドライバー(推進要因)ベースのカテゴリー別需要とコスト
- 格段のパフォーマンス改善とサプライヤーとの連携強化のための破壊的イノベーション
要求部門中心の調達
これからの調達部門は、システム、プロセス、リソースを含む、調達のあらゆる側面で、要求部門中心の取組みが重視されるようになるでしょう。調達部門は支出を監視する役目にとどまらず、真のビジネスパートナーとして機能するようになります。そして他部門も、調達部門がもたらす付加価値を認識し、協力してビジネスを発展させたいと考えるようになります。
要求部門中心の調達は、次のような方法で調達部門の役割と行動を変革していきます。
重要な存在として事業計画の策定に貢献する
- 支出データ、サプライヤーとの関係性、リスクに関する重要なインサイトに基づいて、支出改善を推進する
- 製品(モノ/サービス)、スキル、イノベーションのソースを仲介する存在として、ビジネス上の問題を解決する
- 責任ある立場で、会社、環境、社会に利益をもたらす長期的な決定を行う
- 献身的なアプローチによる問題解決を指向し、要求部門の満足度を正確に測る
- 変化に必要なコスト削減と、より迅速な適応に注力するために、デジタル技術に投資する
- 市場のトレンドを監視し、調達業務に対する影響を評価して、イノベーションの文化を醸成する
- 適切なデータを適切なタイミングで利用できるようにAIに投資することで、支出行動をプロアクティブに改善する
デジタル調達プラットフォーム
テクノロジーによって「データ」と「自動化」が結びつき、統合されたプロセスが実現し、意味のあるインサイトが生み出されることで、調達部門は情報に基づいた、より良い意思決定が可能になり、事業全体を導く存在になります。
これからの調達業務は、インテリジェントアシスタントが日常の活動をサポートし、主要なデータポイントによってディスカッションや交渉が実のあるものになり、情報がリアルタイムに得られるようになるでしょう。
デジタル調達プラットフォームは、以下の要素を通じて組織の近代化を実現します。
高度な自動化
- 調達サイクル全体を強固なテクノロジーがサポート
- 継続的なプロセス自動化の追求
高度な統合
- 調達プロセスを超えた全社的な統合
- シンプルで適応力のある統合(クラウド統合、ブロックチェーン)
付加価値型サービス
- マネージドサービス活用による調達ROIの最大化
- 社外のインサイトをオンデマンドでシームレスに利用
全社的なAI 活用
- 表に見えない形でAIと機械学習をシームレスに展開
- 意思決定と決定事項の実施を自動化
インサイトと分析
データ分析は今後の調達業務の鍵となる要素であり、サプライヤー中心、要求部門中心の調達と、カテゴリーイノベーションを実現する重要な基礎になります。今後の調達部門では、従来の断片化された異なるデータソースがシームレスに統合され、扱いやすく正確なデータポイントに整理されます。調達担当者は常駐のデータサイエンティストとして、効果的かつ正確なインサイトをリアルタイムに提供します。サイロ化された機能が統合され、より多角的な分析が可能となることで、調達部門は次のような転換が可能になります。
- 「説明的な役割」から「予測する立場」へ
- 「コスト実績(Did-cost)管理」から「あるべきコスト(Should-cost)管理」へ
- 「ポカヨケ」から「コンプライアンスのプロアクティブなモニタリング監査」へ
- 「受動的な見積取得」から「見積取得の自動化」へ
カテゴリーマネジャーは、社内外の情報(ソーシャルメディア、ニュースフィードなど)に基づき、「オンデマンドで得られるカテゴリーインサイト」と「リアルタイムのサプライヤーリスク分類」を活用します。さらに、サブスクリプションサービスの導入により、データの正確性と情報密度が向上します。
調達担当者の未来
次世代の調達担当者には、カテゴリー戦略とカテゴリーイノベーションに携わることが期待されます。さらに、コスト削減という指標を超えてバリューチェーンの最上位での活動およびその成果が期待されます。
調達担当者については、他の業務分野と同様に、以下のような将来的な課題とニーズがあります。
- ミレニアル世代の従業員は、これまで組織に蓄積されてきた知識とは異なる「体験」を要求
- デジタルトランスフォーメーションにより、伝票処理業務に関与するリソースの削減
- 高度な分析スキルをもった臨時職員の活用
- 将来必要となるスキルと、さまざまな学習環境に対応するトレーニングプログラムの整備
- 社内外関係者とのリレーションシップ構築
- 分析モデリング機能と「シチズンデータサイエンティスト」に対するニーズ
- 部門横断的な専門知識、優れたビジネス感覚、交渉力
- 仮想AIチームを管理する「ボットマネジャー」
アジャイルオペレーティングモデル
調達におけるオペレーティングモデルの有効性評価は、もはやサプライヤー、要求部門、その他の利害関係者からフィードバックされる「コスト削減実績」だけに連動するものではなくなります。それよりも、彼らがデジタルプラットフォームで要求部門・サプライヤーとシームレスにつながり、単純作業が自動化される中で、日々、「何を感じるか」ということが、重要な指標になると考えられます。
上記すべての要素を、次のような特徴を持つ「アジャイルオペレーティングモデル」がつなぎます。
体制
調達部門は、付加価値の高いサービスに特化するため、調達の役割を再定義し、最先端のシステムによる自動化、アウトソーシング活用などにより、推進体制・規模の適正化を図る
意思決定
シンプルなガバナンス構造と権限付与について、部門横断で取り組む
文化
調達戦略を支え、長期的な価値を持続させるために必要な、望ましい組織内の行動、文化を積極的に規定する
変化に対応する能力
あらゆる変化を許容し、これまでの成功体験を捨てビジネスの継続的な実現に向けて弛まぬ改善、イノベーションを実施する
パフォーマンス管理
調達パフォーマンスが、企業業績へ大きく貢献するということを明確化し、関連する調達KPIを、成功を測る重要な指標として定義する
リーダーシップ
これまでバックオフィスに位置付けられていた調達部門は、今後、事業や部門横断での戦略立案への関与など、より顕著にリーダーシップ・事業責任を求められる