先見性のあるCPO(Chief Procurement Officer:最⾼調達責任者)は、調達部門の妥当性を脅かしかねない変化を認識しています。調達部門の社内顧客(購入申請者)は、職場外での購買体験に影響され、次第に現状に対する不満を募らせつつあります。認識上の価値であれ実際の価値であれ、調達部門の価値を示すことは難しくなってきています。調達リーダーの多くは、コスト削減とリスクの軽減を優先する職務に縛られ、守勢に立たされています。

KPMGは、調達部門の社内顧客も含めた、顧客中心の調達モデル構築の課題を洗い出し、企業がサプライヤーとより緊密な関係を築くことによって得られる潜在的なメリットの発見を支援します。

社内顧客の認識

従業員である社内顧客は、一方で、すでに先進的なカスタマーエクスペリエンス(CX)機能に馴染んでいる消費者でもあります。ステークホルダーの1つのカテゴリーである社内顧客は、豊富な知識と経験を持っており、要求水準が高く、自身の習慣や好みに沿って構築され、パーソナライズされた購買体験に慣れています。社内顧客は、よく知られたブランドや、CPOの競争相手となる、単一のブランドだけを扱う多くの小売チャネルを定期的に利用するか、少なくともそれらを熟知しています。

顧客中心の調達は、この基本を認識することから始まり、ユーザーの行動や状況、課題を理解しようと努める必要があります。コンセプトは、利便性、選択肢、シームレスな商取引という職場外での購買の基準に合致した、カスタマイズされた購買体験の提供です。

CPOは、顧客のエンゲージメントや満足度、ロイヤルティを高め、完全に個人的なCXを設計・提供するために、組織としての準備体制を整える必要があります。ターゲットオペレーティングモデルを導入したり、購買チャネルを設計したりする際は、購買管理規程の順守という目的達成のために、「消費者としての従業員戦略」を利用できるという作業仮説を立てることがポイントとなります。

顧客中心の購買チャネルの設計

CPOがエンドユーザーの視点から企業の購買体験を再構築する際は、「社内顧客」が実際は多くの個別の顧客サブセットであり、支出レベル、購買するモノ・サービスの種類、購入習慣、および専門的な調達支援の必要性によって差別化されていることを直感的に理解することが重要です。

調達イノベーションの有望な領域の1つは、社内顧客のペルソナを使用するというものです。ペルソナとは、職務権限、支出のカテゴリー、調達のパターン、決定要因、専門的支援を利用するか否かによって定義された、調達体験を共有する主要カテゴリーに基づく人物像です。多くの場合ペルソナは、タッチポイント、障壁、問題解決シナリオ、調達の成功を含む幅広い調達プロセスを詳細に記載したカスタマージャーニーマップと併用されます。

ペルソナとカスタマージャーニーマップは、調達チームが、社内顧客の抱える課題の性質を共感を持って定義し、問題に合ったソリューションを組み合わせ、それに応じてリソースを割り当てるのに役立ちます。そうすることで、各支出カテゴリー内におけるペルソナそれぞれの要件に対応するために、必要な購買チャネルの設計とイノベーションの基礎を確立し、最終的に支出額に応じてカスタマイズすることが可能です。その結果として、顧客の状況に合わせたセルフサービスと高度なサポート付きの個別の取引チャネルの設定につながります。

【チャネル設計のセルフサービス】

基本的な機能
  • シンプルな購買のためのパンチアウト連携、カタログの比較
  • 厳選された自動承認、自動化ポリシー
  • ポータルからのインボイス発行による紙の使用量やサプライヤーへのアクセスの削減
  • 供給量と価格推移のモニタリング
仲介ボットの機能
  • センサーに基づく購買時期の提案
  • 取引時のサードパーティリスクの継続的なモニタリング
  • 購買の要件を満たすサプライヤーの検索
  • 需要と調達、供給を結ぶ司令塔
先進的で未来的な「ガイド付き購買」
  • ブロックチェーン取引によって可能になった複雑なカテゴリー
  • 行動履歴とインテリジェントなプロセスマイニングに基づく自動承認
  • 人工知能(AI)による供給市場に対するニーズの評価
  • サプライチェーンプラットフォーム、モバイル機器、先進技術の融合による視認性の向上

CX調達テクノロジーの活用

テクノロジーに基づくCX調達モデルの基本であるデジタルクラウドテクノロジーは、以下のようなメリットをもたらします。

 

  1. ワークストリームを簡略化し、付加価値の低いパフォーマンスを自動化することで、調達担当者が社内顧客の日々の取引をサポートできるようにするための、コスト効率の良いソリューションを提供
  2. 調達リーダーが必要とする、カテゴリーに対するインサイトや財務の透明性をリアルタイムで提供
  3. 手動での操作や混乱を最小限に抑え、アプリケーションのアップデートやアップグレードをリモートで実行することにより、最初の配備以降も継続的にプロセスを改善

 

さらに、クラウド調達ソリューションが画期的なのは、顧客データの集約や報告、分析が可能な点です。
顧客中心の調達モデルでは、分析と予測インサイトを継続的に使用し、社内顧客のすべてのタッチポイントを通じてエンゲージメントを行い、迅速かつ調整の取れた方法で調達を実行する必要があります。

調達文化への留意

顧客中心の考え方へのシフトは、従来の知識や技能を置き換えるのではなく、組織に対する顧客中心主義の影響を拡大させるというものです。顧客中心主義の最も広義の意味は、調達担当者が顧客の立場で考え、行動できるよう支援することです。顧客中心の調達部門は、最高のCXを提供するという目標に基づき、社内顧客がカスタマージャーニーのなかでどのようなステップや活動、疑問、障壁、感情を経験したかを尋ねることで、調達担当者がカスタマージャーニーを解明できるよう支援する必要があります。

これほど深く、規模の大きい行動変革を成功に導くには、顧客中心のビジョンとロードマップを現場担当者に明確かつ頻繁に伝え続けなければならない、というチェンジマネジメントの確立された原則から学ぶことが重要です。研修と能力開発は、共感、状況把握能力、対人スキルに重点を置いた内容になるとみられます。またパフォーマンス指標には顧客満足度調査のデータが組み込まれることになるでしょう。

投資に関するガイドライン

投資戦略は、組織の特性、すなわち、業種、リスク特性、職務、体制、文化、事業目的を反映したものとすべきです。KPMGの推奨する投資に関するガイドラインは以下のとおりです。

 

  1. 顧客から継続的に学ぶ
  2. ユーザーエクスペリエンス機能と購買管理規程は同じくらい重要
  3. データを資産として扱い、分析を通じて価値を生み出す
  4. アジャイルで拡張可能なテクノロジーエコシステムを育てる
  5. 「ビジネスパートナーシップ」と「イノベーション」の文化を育む

カスタマージャーニーの再定義に成功するには

顧客中心の調達モデルの構築において、成功する組織には、以下に抜粋するようないくつかの特徴があります。

 

  1. 従業員が消費者でもあることを認識している
  2. 今日のデータイノベーションが明日には必須スキルになることを理解している
  3. 全体的な視野に立ったソリューションを導入している
  4. 強力なビジネスケースによって意欲的な変化を主導している
  5. 強力なテクノロジーエコシステムの価値を理解している
  6. テクノロジーとプロセスは、それらを利用する従業員と同程度に強力であることを認識している
  7. 調達部門の社内での評判を守っている
  8. 5歩先まで考えている
  9. 他の優れた組織から学ぶことに意欲的である
  10. メリットの測定方法を明確に理解している

KPMGの支援

KPMGは、調達・購買領域の変革フレームワークであるプロキュアメントターゲットオペレーティングモデル(Procurement TOM)と、そのモデルを具現化するテクノロジーソリューションの知見を集約したKPMG Powered Procurementにより、コスト効率の改善にとどまらず、クラウドテクノロジーやモバイル機能、自動化を利用してよりアジャイルなオペレーションを支援し、調達部門の変革をサポートします。

【KPMG Powered Procurementを活用した支援(例)】

  • 企業のビジネスモデルの変革
  • 企業の成長とともに進化する、アジャイルな調達部門の構築
  • 従業員が変化に適応し、受け入れられるための支援
  • 価値とパフォーマンスを高めるための先進テクノロジーの活用
  • 先進事例を組み込むことによる将来的な成功の実現
  • 競争力強化のためのデータ活用とサービス提供の最適化
  • 先進事例のソリューションがあらかじめ設定されたテクノロジープラットフォームの展開の加速

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