必見!IFRS 18実践ポイント 第7回 営業費用の表示と開示

IFRS適用企業はIFRS第18号の適用に向け検討を進めています。本解説シリーズではIFRS第18号の主な留意点を紹介します。 第7回目の本稿では「営業費用の表示と開示」について解説します。

第7回目の本稿では、IFRS第18号における営業費用の表示と開示について解説します。

IFRS適用企業では、2024年4月に国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」の適用に向けて、検討が進んでいます。IFRS第18号は、2027年1月1日以後開始する事業年度から適用され、早期適用も認められます。本解説シリーズでは、「IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」を参照し、IFRS第18号の主な留意点を紹介していきます。

第7回目の本稿では、IFRS第18号における営業費用の表示と開示について解説します。

Q-1:IFRS第18号において、営業費用の表示はどのように行われますか?

A:純損益計算書の営業区分において、企業は、費用の性質若しくは企業内での費用の機能のいずれか、またはその両方の特徴を用いて、営業費用の最も有用な体系化された要約を提供する方法で費用を分類し表示することが求められます(IFRS 18.78)。

具体的には、図1の例にあるように、性質別、機能別のほか、混合方式の表示が認められています(IFRS 18.79)。ただし、営業費用の表示方式は自由に選択できるものではなく、最も「有用な体系化された要約」を提供する方法で表示する必要があります。有用な体系化された要約は第6回「基本財務諸表と注記の内容の決定方法」で紹介しています。

図1 純損益計算書における営業費用の表示例

図1 純損益計算書における営業費用の表示例

企業は、どの方法が財務諸表利用者に最も有用な体系化された要約を提供するかを評価することになります。この評価においては、企業の収益性の主要な構成要素もしくは決定要因、事業の管理方法または標準的な業界実務等を考慮します(IFRS 18.B80)。

この点について、「IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」のセクション2.2.1では、企業が最も有用な体系化された要約を提供する営業費用の表示方法をどのように検討するのか、簡単な例を用いて説明しています。

Q-2:選択した表示方式によって、営業費用の開示に違いはありますか?

A:純損益計算書において1科目でも営業費用を機能別に表示する場合、性質別費用の開示が求められます(IFRS 18.82)。これに対して、営業費用を性質別に表示する場合、機能別費用に関する追加的な開示は求められません(IFRS 18.BC249)。

費用を機能別に表示する場合、経済環境の変化に異なる反応をする性質別の費用項目を集約することとなり、財務諸表利用者が将来の営業費用を予測することを難しくします。性質別費用の追加的な開示は、将来の営業費用の予測を容易にし、キャッシュ・フロー計算書に表示される情報との関連性を理解可能とします(IFRS 18.BC260)。

営業費用を機能別に表示する場合、機能別の各表示科目に含まれる性質別費用の定性的な説明を開示することが求められる(IFRS 18.82(b))ほか、単一の注記において、性質別費用5項目(減価償却、償却、従業員給付、減損損失及び戻入れ、並びに棚卸資産の評価減及び戻入れ)に関する情報の開示が求められます(IFRS 18.83)。ただし、5項目以外の性質別費用は、重要性があっても金額の開示が免除されています(IFRS 18.84)。また、開示する性質別費用5項目の金額は、当期に費用として認識した金額とする必要はなく、資産(例:棚卸資産)の帳簿価額の一部として認識した金額を含めてよいとすることで、開示を作成する企業の負担を緩和する措置が取られています(IFRS 18.B84)。

Q-3:性質別費用5項目について、どのような開示が求められますか?

A:図2に示されるように、性質別費用5項目について、以下の情報の開示が求められます。

  • 5項目それぞれの合計額(IFRS 18.83(a))
  • 上記の各合計額について、営業区分の各表示科目に関連する金額(IFRS 18.83(b)(i))
  • ​営業区分外の表示科目に含まれる場合、その表示科目の一覧(金額は不要)(IFRS 18.83(b)(ii)) 
  • 資産の帳簿価額の一部として認識した金額を開示金額に含む場合(IFRS 18.B84(b))​
    ・その旨の定性的な説明
    ・関連のある資産

図2 性質別費用5項目に関する単一の注記例

図2 性質別費用5項目に関する単一の注記例

第7回の解説は以上となります。 

IFRS第18号の考え方について、詳しく知りたい方は「IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」をご覧ください。

第8回では、「経営者が定義した業績指標(MPM)」について解説します。 

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