必見!IFRS 18実践ポイント 第6回 基本財務諸表と注記の内容の決定方法

IFRS適用企業はIFRS第18号の適用に向け検討を進めています。本解説シリーズではIFRS第18号の主な留意点を紹介します。 第6回目の本稿では「基本財務諸表と注記の内容の決定方法」について解説します。

IFRS適用企業はIFRS第18号の適用に向け検討を進めています。本解説シリーズではIFRS第18号の主な留意点を紹介します。 第6回目の本稿では「基本財務諸表と注記の内容の決定方

IFRS適用企業では、2024年4月に国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」の適用に向けて、検討が進んでいます。IFRS第18号は、2027年1月1日以後開始する事業年度から適用され、早期適用も認められます。本解説シリーズでは、「IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」を参照し、IFRS第18号の主な留意点を紹介していきます。

第6回目の本稿では、IFRS第18号における基本財務諸表と注記の内容の決定方法について解説します。

Q-1:IFRS第18号において、基本財務諸表及び注記の役割は何ですか?

A:IFRS第18号において、財務諸表の目的は、投資家が企業への将来の正味キャッシュ・インフローの見通しの評価等を行う際に、企業の資産、負債、資本、収益及び費用に関する有用な情報を提供することとしています(IFRS 18.9)。この目的を達成するために、基本財務諸表及び注記についてそれぞれの役割を定めています(IFRS 18.BC45)。

基本財務諸表(財務業績の計算書、財政状態計算書、持分変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書)の役割は、企業の資産、負債、資本、収益、費用及びキャッシュ・フローについて、有用な体系化された要約を提供することです。すなわち、投資家が以下の3つを行うために要約した情報を基本財務諸表に表示します(IFRS 18.16, BC45)。

  • 企業が認識した資産、負債、資本、収益、費用及びキャッシュ・フローについての理解可能な概観を得ること
  • 企業間での比較、及び同一企業の各報告期間の比較を行うこと
  • 注記において追加的な情報を求めたいと考える可能性のある項目又は領域を識別すること
     

注記の役割は、必要な重要性のある情報を提供することです。すなわち、投資家が以下を行うためにより詳細な情報を注記で開示します(IFRS 18.17, BC45)。

  • 基本財務諸表に表示された科目を理解できるようにすること
  • 財務諸表の目的を達成するために追加的な情報で基本財務諸表を補足すること
     

財務諸表には重要な情報が含まれるべきですが、どの情報を基本財務諸表で表示し、どの情報を注記で開示するかについて、基本財務諸表及び注記の役割を考慮して判断します(IFRS 18.15, 18)。基本財務諸表において提供される情報は注記において提供される情報よりも集約される(IFRS 18.18(a))ことから、基本財務諸表の表示科目を決定するために用いる有用な体系化された要約は、重要性よりも高いレベルで情報が集約されることになります。

Q-2:IFRS第18号において、有用な体系化された要約の適用ポイントは何ですか?

A:IFRS第 18号において、有用な体系化された要約を適用するにあたり、ポイントが3つあります。

  1. 有用な体系化された要約を提供するため、基本財務諸表の構成を決定するための規定には必ず準拠しなければなりません(IFRS 18.22)。例えば、第1回「純損益計算書の構成」で解説した収益及び費用を各区分に分類し、営業利益等の小計を表示する規定や、次回解説予定の営業費用を機能別または性質別に表示する規定は、純損益計算書の構成を決定するため、準拠しなければなりません(IFRS 18.22(a))。
  2. 一部のIFRS会計基準書は、基本財務諸表において科目を区分して表示することを求めています。例えば、IFRS第18号は純損益計算書の表示科目を列挙していますが、有用な体系化された要約を提供するために必要でない場合、それらの表示科目を他の科目と集約して表示します(IFRS 18.23)。ただし、重要性がある場合、その科目を注記で開示します。(IFRS18.B8)。
  3. 基本財務諸表が有用な体系化された要約を提供するために、追加的な科目及び小計の表示が必要な場合、その科目又は小計を表示します(IFRS 18.24)。例えば、売上総利益は有用な体系化された要約を提供するために必要な場合、純損益計算書に表示します。

IFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』」のセクション4.1では、IFRS第18号において新たに定義された基本財務諸表及び注記の役割について紹介しています。

第6回の解説は以上となります。

IFRS第18号の考え方について、詳しく知りたい方はIFRS®会計基準の初見分析-IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」をご覧ください。

第7回では、「営業費用の表示と開示」について解説します。。

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