生成AIの活用が広がるなか、企業の経営管理部門には、膨大な社内外データを迅速に把握し、変化の兆候を捉えて経営判断につなげることが求められています。一方、予算・実績データの収集・集計、差異分析、会議資料の作成には多くの時間を要しており、担当者が論点設定や意思決定支援に十分な時間を充てられないことが課題となっています。
KPMGは、これらの背景を踏まえ、経営判断を加速する経営管理AIエージェントの導入・高度化を、経営管理データの情報収集から分析・論点整理・経営レポート作成まで一貫して支援します。経営管理・業務改革領域で培った知見に基づき、業界・事業特性に応じたエージェント・スキル群、データ・AI基盤およびガバナンスのアセットの構築や、各社固有の判断基準、業務要件、既存のツール・データ・システム環境を反映した実務に根差す意思決定支援を具体化します。
経営管理AIエージェントの全体像
経営管理AIエージェントは、企業のERPやEPMに蓄積された財務・非財務データに加え、会議資料や社内レポートなどの非構造データ、市況・経済指標、競合・業界動向などの外部情報を参照します。必要な情報の収集・統合から分析、予測、論点整理、資料作成までを一貫して支援し、CFO・FP&A組織が例外事項への判断、資源配分、施策決定など、企業価値創造に直結する業務に注力できる環境の実現を目指します。
汎用的なワークフローを一律に適用するのではなく、業界ごとに異なる商流、収益・原価構造、主要KPI、規制・会計要件、管理粒度をデータ定義・分析ロジック・判断基準に反映します。これにより、企業固有の差異要因や業績ドライバーを踏まえた分析とアクション提示を可能にし、標準化による効率化と業界・企業固有要件への適合を両立します。
【経営管理AIエージェントの活用イメージ】
経営管理AIエージェントの活用ユースケース
・中期経営計画のシナリオプランニング(中計シナリオプランニングエージェント)
過去実績や中計目標、事業ドライバー、投資・人員計画、為替・金利・市場成長率などの内外前提を組み合わせ、複数の中期シナリオを生成し、シナリオ別にPL・BS・CF・KPIを試算し、主要ドライバーの感応度や各種の損益分岐点を分析します。分析結果を基に、ベース・上振れ・下振れケースと戦略選択肢を比較し、目標値や資源配分の意思決定を支援します。
・予算策定・ローリングフォーキャスト作成(予実GAP要因分析エージェント)
最新の実績・受注・販売・生産・在庫・人員等の情報を取り込み、主要ドライバー別に予測を継続更新します。部門別の予算案や前提の整合性、異常値を検証し、年度予算案と複数の着地見通しを生成します。前回予測からの前提差分や修正候補、部門別の確認事項を提示し、早期の見通し修正と対応判断を支援します。
・予実差異の要因分析と必要施策の提示(予実GAP要因分析エージェント)
予算・実績・見込や販売数量、単価、原価、費用、為替などのデータから重要な差異を抽出します。差異を数量・単価・ミックス・費用等に分解し、構造的要因と一過性要因を整理・検証します。加えて、影響額や要因仮説、追加確認事項を示し、ギャップ解消に向けた施策候補を効果・実現時期・難易度の観点から優先順位を提示します。
・投資判断時のキャッシュフロー生成シナリオ・リスク分析(業績シミュレーションエージェント)
投資額、売上・費用、運転資本、税・減価償却、資金調達条件などの前提から、案件別キャッシュフローを生成します。NPV・IRR・回収期間を算定し、感応度分析、ストレステスト、確率シナリオにより下振れ耐性を比較します。採算指標や主要リスク、撤退条件、追加検証事項を整理し、事業・設備・DX投資の実施可否判断を支援します。
・経営会議資料・想定Q&Aの作成(レポーティングエージェント)
予実・KPI分析、業績見込、施策進捗、事業部コメントなどを集約し、重要差異・要因・見通し・対応策を経営向けのストーリーに整理します。経営会議資料や1枚サマリ、説明コメントのドラフトを作成するとともに、資料の論理・根拠・整合性を点検します。役員視点の想定質問、回答案、根拠データ、不足情報を紐付け、会議での即応力と説明品質を高めます。
経営管理AIエージェント導入・定着の流れ
KPMGが保有するモデルを雛型として、経営管理・FP&Aの業務知見をもとに、クライアントと伴走・協働しながら、ユースケースの選定、経営管理プロセスにおけるAIと人の役割分担、指標定義や管理粒度を含むデータモデル、運用ルール、効果検証を構築します。また、データマネジメントおよびAI開発の専門チームと連携し、クライアントが利用する既存のツールやデータ・システム環境を踏まえて、社内外データを接続する基盤、専門エージェント、利用者との接点となるUIやワークフローの実装を支援します。
たとえば、製造業では製品・工場別の数量・単価・原価差異や生産能力・在庫の分析、小売・消費財では店舗・チャネル・SKU別の売上、粗利、需要・在庫分析など、業界固有の問いとKPIに対応するユースケースおよびスキルを組み込んだワークフローを構築します。
KPMGが経営管理・業務改革支援を通じて蓄積した業界知見を基に、分析観点、仮説、確認事項、判断基準を提供します。
【経営管理AIエージェントの実装イメージ】
導入にあたっては、以下の6つのステップを進め、検証結果を踏まえながら経営管理業務とAIの役割、実装範囲および利用・連携するツールを段階的に具体化します。
1.ユースケースと経営管理プロセスの検討
利用者の問いに対して、どのデータを参照し、どの専門エージェントを組み合わせ、どのような判断材料を提供するかをユースケースごとに具体化します。あわせて、対象業務の現行プロセスを整理し、クライアントの固有要件に合わせた情報収集・分析・論点整理・資料化におけるAIと人の役割分担、確認・承認を含む将来プロセスを設計します。
2.データ収集・統合
社内の構造化されたデータに加え、会議資料・社内レポート等の非構造データ、市況・競合動向等の外部データに対し、各データの形式・粒度・更新頻度を確認し、経営管理で横断的に利用できるよう接続・統合します。
3.データ・ナレッジ活用・連携基盤の構築
収集した構造化・非構造化データを蓄積・検索できる統合データ基盤やベクトルDBを整備し、経営指標の定義・粒度・業務ルールをセマンティック層として実装します。データ品質・出所・リネージの管理、暗黙知の形式知化、ナレッジグラフ等により、エージェントが意味を正しく理解して参照できる基盤を構築します。
4.経営管理AIエージェント群の構築
データ収集・検証、予実差異分析、予測・シナリオ分析、異常・リスク検知、論点整理、資料・ナラティブ生成、アクション提案など、経営管理プロセスを支援する専門エージェントを設計・実装します。LLM・RAGやBI・EPM等とのツール連携に加え、プロンプト管理、ガードレール、評価・モニタリング・トレーシングを組み込みます。
5.意思決定・UI・業務接点の構築
経営会議や業績レビューにおいて、論点・仮説・選択肢とその前提・根拠を確認し、意思決定・優先順位付け・承認を行える業務プロセスを設計します。経営会議資料、レポート、ダッシュボード、想定Q&A等の出力や、日常的に利用する業務ツールのUIとの連携を目指し、施策、責任者、期限、KPIの設定まで支援します。
6.施策実行・モニタリング
決定した施策を業務プロセスや関連システムへ連携し、タスク組成・進捗管理、実績モニタリング、KPIトラッキング、効果検証・アラートを通じて実行を支援します。結果と判断を振り返り、エージェントの精度や運用ルールを継続的に改善するとともに、得られた知見をナレッジとして更新・蓄積し、実業務への定着を図ります。
AIは判断材料の作成や下書きを担い、最終判断、説明責任、施策決定は人が担うことを共通原則とします。
KPMGは、現状分析と構想策定から、既存のツールやデータ・システム環境に応じた基盤・エージェントの設計、業務への実装、運用定着、継続的な改善までを、経営管理の業務プロセスの構築も含めて一貫して支援し、経営管理の高度化と企業価値向上に貢献してまいります。
経営管理エージェントの効果最大化に向けた推進上の要点
経営管理AIエージェントの効果を最大化するためには、各企業の経営管理の成熟度やデータ・システム環境を踏まえ、ユースケース、業務プロセス、データ・ナレッジ、回答品質、ガバナンス・セキュリティの5つの観点を一体的に設計することが重要です。既存のツール、データ基盤、セキュリティ方針等との適合性を確認したうえで、AIプラットフォーマーが提供するSDKをはじめとする技術を選択・活用し、専門エージェント、ツール、ガードレール、処理の引継ぎを組み合わせて、複数工程にわたる分析業務を制御します。具体的には、以下の5つの要点を相互に整合させながら検討します。
【推進上の要点】
・ユースケース選定
AIの機能的な強みを起点に、経営管理プロセス全体から候補を幅広く抽出することがポイントです。そのうえで、経営上の重要性、業務上のボトルネック、データ・技術面の実現性を組み合わせて評価し、効果と実現性の高いユースケースに優先順位を付けます。
選定したユースケースには、KPMGが蓄積してきた経営管理・業界知見をもとに、事業構造と事業フェーズの組合せごとに構築したスキル群を適用し、企業固有の状況に即した分析観点と判断材料を提供します。
・経営管理プロセスとAI・人の役割分担
既存業務にAIを当てはめるのではなく、AI活用を前提に経営管理プロセス自体を再構築することがポイントです。AIプラットフォーマーが提供するSDKのオーケストレーション機能を活用し、業務の局面に応じて必要な専門エージェントやスキルを呼び分けます。AIが担う情報収集・計算処理・分析・仮説提示と、人が担う検証・判断・説明責任を明確に分け、実務上の責任範囲を曖昧にしないことが重要です。
・経営管理情報のメタデータ・ナレッジ化
構造・非構造データを単に蓄積・接続するのではなく、AIが正しく参照できるよう経営管理上の意味を付与することがポイントです。
数値データには指標定義・粒度・計算ロジックを、会議資料や判断履歴には出所・時点・参照優先順位を持たせて管理します。こうした体系化されたデータ構造と、差異分解・感応度分析・シナリオ比較等の分析スキルを組み合わせることで、エージェントは探索や解釈の負荷を抑え、AIの計算処理を分析・予測・示唆生成などの支援機能に効率よく注力させることができます。
・回答品質・ハルシネーション対策
回答精度だけでなく、利用者が根拠を確認し、適切に判断できる状態をつくることがポイントです。参照元、データ時点、前提条件を明示して事実・推論・仮説を区分し、根拠不足時の回答抑止・注意表示、人によるレビュー、継続的な評価・改善を組み込みます。また、分析手順を標準化したスキルと定義済みのデータ構造に沿って処理させることで、分析の再現性を高め、回答のばらつきや根拠のない推論を抑制します。
・ガバナンス・セキュリティ
技術面の対策に留めず、AIの利用範囲、データアクセス、責任、監査・運用ルールを一体で設計することがポイントです。アクセス権限、ログ、監査、変更管理を整備するとともに、業務・データ・システム・AI開発・利用者の責任分界を明確にします。ガードレールやトレーシングを活用し、エージェント間の引継ぎ、ツール実行、入出力を可視化・検証できる運用設計とすることで、統制と継続改善を両立します。
※本ページに記載する内容は、経営管理AIエージェントの活用例および導入アプローチを示すものです。実際の支援内容、実装範囲、利用・連携するツールおよび技術は、クライアントの業務要件、既存のデータ・システム環境、セキュリティ方針等を踏まえ、協議のうえ個別に決定します。