移転価格リスクの脅威
近年、世界各国における移転価格税制の強化および移転価格調査件数の増加等に裏付けられるように、多国籍企業にとって移転価格リスクは増大傾向にあります。移転価格課税がなされた場合の本税、延滞税、過少申告加算税等の支払いに係わるキャッシュフローへの影響、二重課税排除のための不服申立手続きもしくは相互協議申請を行う場合の作業負担、移転価格課税がなされたことに対する企業イメージへの影響、また、長期間に亘る移転価格調査に対応している担当者の人的コスト等、すべてが企業経営に係わる重大なリスクとなります。これらのリスクを事前に軽減する方法として事前確認制度の採用や、それを含む複合的なグローバル移転価格方針の立案がありますが、KPMGが提供する「移転価格調査対応の支援」に関しては、その移転価格税制に関する高度な知識、豊富な経験を生かし、公正な調査が行われるよう納税者の権利を保護し公正な調査が行われるための事後的な支援業務であるといえます。
企業が国外関連者間取引に係わる移転価格算定方法を内部で詳細に検証していたとしても、納税者と税務当局間の見解の相違等から、移転価格における更正リスクは常 に存在していることを明確に認識しておく必要があります。過去に移転価格課税を受けている企業の多くは、一般的には、国外関連者との取引が多い会社、長期にわたって 損失を計上している会社、そして国外関連者の利益率が高い会社等であるといえます。移転価格課税を受けた会社の一部に関しては新聞等でも報道されていますが、その追徴税額が数億円から数百億円にも及ぶため、企業経営に深刻な影響を及ぼしています。
移転価格調査の実際
移転価格税制は「独立企業間価格」という包括的かつ具体性が明確でない概念を採用していることから、その算定方法の選択、適用に係る事実認識および経済分析にあたって、高度かつ広範囲な専門知識が必要となります。また、納税者の属する業界に応じて、その業界特有の取引慣行や法的規制がある場合も多く、これらは独立企業間価格の算定に係わる重要な要素となっています。このことから、移転価格調査の際には法人税や移転価格税制だけではなく、調査対象となった納税者の属する業界に精通している専門家の立会いが必要不可欠となります。
さらに移転価格調査では、国外関連者の業務・財務内容および取引データ等に関して膨大な情報の提示を求められます。調査で求められる資料には、国外関連者間取引に係る契約条件に関する情報、国外関連者が果たしている機能・リスクに関する情報、国外関連者および第三者との価格交渉に関する情報、市場シェアの情報や競合他社の情報等が含まれます。移転価格調査において要求される資料は膨大ですが、その内容はおおむね共通したものとなっています。これらの資料を移転価格設定方針等の納税者の主張に沿って、秩序立てて整然と準備するために専門家の助言を得ることは、移転価格調査を円滑に進めることに貢献します。
また、特定国において移転価格課税が行われた場合には、取引相手国でなされる課税との二重課税を排除するために相互協議を申請する必要があります。また、課税に疑義がある場合には、国内法に基づく救済手段(不服申立等)を用いることになり、この場合にも専門家のサポートを受けることが重要となってきます。
移転価格調査のプロセス
移転価格調査は調査対象者、調査対象期間、調査対象取引に応じてその期間やプロセスが変わってくるものの、一般的なプロセスは以下のとおりです。
KPMGのサービス
移転価格調査対応の支援としてKPMGが提供するサービスは大きく分けて次のとおりです。
客観的な立場からの移転価格の検証
KPMGは客観的な立場から移転価格の検証を行います。具体的には、納税者が関連者間取引に関与した状況において最も適切であると判断される移転価格算定方法を選定、および、係る手法を適用し、適切な差異調整の手続きを行うことにより独立企業間価格を算定し、実績値との乖離を検証します。移転価格の妥協性に問題があったと判断される場合には、その分析結果に関し納税者と協議し、税務当局に対する説明を含め適切な対応を進言します。
当局との折衝(意見書および分析資料の作成等)
独立企業間価格を算定する際には、その対象取引に関する事実(調査対象者の機能・リスクおよび所有する無形資産、経済的環境、規制等)を正確に理解し、分析する必要があります。すなわち移転価格調査の際には、担当調査官に対して、移転価格分析に係る「事実」を正確に伝えることが重要となります。このためには、調査対象企業自身についてのみならず、国外関連者、産業、国内外の市場、さらには関連者等について、あらゆる面での説明が必要となります。
また、移転価格調査においては、通常の税務調査以上に納税者としての見解を担当調査官に陳述するケースが多くあります。その場合、ただ単に見解を述べるだけではなく、納税者の結論が合理的な分析に基づき導き出されたものであることを積極的に説明する必要があります。重要なことは、納税者および当局が事実に対する共通認識を持ち、合理的な結論に到達するための基礎を提供することです。
相互協議の円滑な進行のためのサポート
更正後の救済手続きのひとつとして、租税条約に基づく相互協議による解決を求める方法があります。相互協議となる場合には、日本の当局のみならず、相手国の「権限ある当局」との折衝も同時並行的に行う必要があります。このため、KPMGは相互協議の申立に係わる手続きから両当局による同意に至るまで、両国間の話し合いが円滑に進められるよう、各国事務所とのネットワークを通じて、納税者をサポートします。
以上が基本的なサービスの概要ですが、その他状況に応じて発生する作業もあります。一般的な移転価格の調査は約1年程度の期間を要し、担当調査官の判断や企業の事業内容や財務状況等により調査の進捗が大きく変わってくるため、実際には1年半から 2年かかるケースも珍しくありません。
最後に、移転価格調査の対応(事後的対応)は大変重要ではありますが、可能な限り調査が入る前に日本の移転価格税制(具体的には平成13年6月1日付「移転価格事務運営要領の制定について(事務運営指針)」)に則った形式の文書保存を心がけ、また、事前確認制度(APA)を利用することが移転価格リスクの低減または回避につながってきます。