KPMGの「日本企業の不正に関する実態調査」は、2006年に公表した第1回から数えて今回で9回目となります。第1回調査から20年が経過しましたが、この間、日本企業を取り巻く経営環境は大きく変化し、企業が意識を向けるべき不正リスクの領域も広がってきました。
今回の調査では、これまで継続してきた不正の発生状況、発生した不正の内容、発覚経路、根本原因などについて定点観測を行うとともに、現在の日本企業が直面する不正リスク管理上の課題をより具体的に把握するため、既存の質問項目の見直し・拡充に加え、新たな視点から質問項目を設けました。
1つ目は、不正発覚後の対応です。不正発覚後の証拠保全や事実調査、根本原因分析、再発防止策の策定など、企業が一連の対応を行う上で抱える課題について新たに調査しました。
2つ目は、企業を取り巻くリスク情報の把握です。インテリジェンスアプローチにもとづく調査の認知・活用状況に加え、サードパーティについて、再委託先・再販売先をどのように把握しているかを調査しました。
3つ目は、データ・AIを活用した不正検知の高度化です。前回調査から質問を拡充し、不正類型ごとのAI活用状況について調査しました。
さらに、今回のSurveyは第1回調査から20年を迎えることから、これまでの調査結果を振り返り、日本企業の不正への向き合い方がこの20年間でどのように変化してきたのかを整理するとともに、次の20年に向けて企業に求められる不正リスクマネジメントについて考察した特集も掲載しています。20年間の調査結果と今回の回答結果を、自社の不正リスクマネジメントの現在地を把握し、今後の取組みを検討するための一助としてご活用いただければ幸いです。
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Executive Summary
PART 01 不正の発生状況
不正の発生状況
不正の発生割合は37%に上昇。内部通報は引き続き最大の発覚経路。
過去3年間に国内外のグループ企業のいずれかで不正が発生したと回答した企業の割合は37%となり、前回調査の32%から5ポイント上昇した。また、発生した不正の内容では、「情報の漏洩または破壊」が国内外で増加した。
不正の発覚経路では「内部からの通報」が引き続き最多となった。続いて「業務処理統制・その他のモニタリング」、「内部監査」が多く、内部通報を軸に複数の発見手段を組み合わせることが重要であると考えられる。
ガバナンスの実効性
課題は「仕組みの有無」から「仕組みの実効性」へ。重大不正では役員・管理職が約7割。
不正が発生した根本原因では、「上司、管理部門または監査による牽制機能の低下または形骸化」が最も多く、「属人的な業務運営(業務のブラックボックス化)」が続いた。これらの結果からは、制度やルールを整備するだけでなく、日常業務の中で実際に牽制が機能しているかが重要な課題となっていることがうかがえる。
また、損害額が1億円以上の不正では、主体的実行者のうち「役員」が21%、「管理職」が48%となり、両者を合わせて約7割を占めた。前回調査から大きな変化はなく、多額の損害をもたらす不正では、引き続き組織内で権限や影響力を持つ者が主体となる傾向が確認された。
PART 02 不正リスクへの対応
外部リスクの把握・可視化
インテリジェンス活用は緒に就いた段階。サードパーティでは再委託先・再販売先の把握が課題。
インテリジェンスアプローチにもとづく調査の実施経験は少数にとどまる一方、約3分の2の企業がその存在を認知している。活用は、取引先等との契約時の背景・リスク確認やM&A・資本提携時といった重要な意思決定時の背景調査が中心である。
また、サードパーティ管理では、再委託先・孫下請先の把握が不十分が最大の課題となった。また、再販売先・再委託先の把握状況については、約3割の企業がそもそも把握していない。
今後は、重要な取引先について、外部情報の活用と「取引先の先」の可視化を組み合わせ、外部リスクを継続的に把握することが重要であると考えられる。
不正リスク管理の高度化
データ・AIを活用した不正検知への関心は高水準。「発見した後」の対応力にも課題。
データ・AIを活用した不正検知への関心は高水準であるが、そのうち、AI を活用した不正検知を実施している企業は少数にとどまり、関心と実装にはなお差がある。
他方、不正事案への対応に関する課題では、根本原因の分析・再発防止策の策定が最多となり、証拠データの収集・保全・分析、人的リソースの確保と続いた。
今後は、データ・AI による不正検知と、発覚後の調査・原因分析・再発防止を着実に遂行する有事対応力の双方を高めることが重要であると考えられる。
特集
日本企業は20年間で不正とどう向き合ってきたのか
~20年間のFraud surveyが映し出す、日本企業の現在地~
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