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      管理職に占める女性比率が伸びない背景

      女性活躍推進が企業経営の重要テーマとして掲げられて久しくなりました。しかし、管理職に占める女性比率の伸びは限定的であり、多くの組織において「候補者がいない」「意欲が高まらない」という声が依然として聞かれます。問題は個人の意欲や能力にあるのでしょうか。この状況を「個人の意識や意欲の問題」として片付けない視座が必要だと考えます。

      本稿では、一般社団法人 生命保険協会(以下、生命保険協会)による最新の調査結果を手がかりに、女性活躍を阻害している構造的要因のなかでも、特にアンコンシャス・バイアスの正体を読み解き、これからの時代に求められる新しいリーダーシップ像を提示します。



      1.昇進に躊躇する理由:調査結果が示す構造的課題

      生命保険協会の調査によれば、女性は男性に比べて昇進への意欲の表れ方に違いが見られ、昇進した場合のデメリットをより強く感じる傾向があるようです。回答からは、「責任が増える」「業務負担が増える」「長時間労働になる」といった項目において、女性の不安は男性を大きく上回っていることがわかります。

      【昇進に対する意欲やメリット・デメリットの認識】
      Japanese alt text: アンコンシャス・バイアスの正体と新しいリーダーシップのかたち_図表1

      出所:一般社団法人 生命保険協会「アンコンシャス・バイアス調査報告書(2026年2月)」を基にKPMG作成

      注目すべきは、「やる気がない」「タフさが足りない」「意識が低い」という資質の話ではないという点です。むしろ、これまで企業社会で標準とされてきたリーダー像、つまり、長時間働き、強い主張で部下を引っ張り、個人で責任を背負う姿に自分を当てはめた時に生じる合理的な違和感の結果、と捉えるべきでしょう。ここには、個人の内面の問題ではなく、人事評価の減点主義的傾向や“昭和の”標準的リーダー像を前提としたアンコンシャス・バイアスが存在しています。

      2.自信のなさの正体:インポスター症候群と経験格差

      生命保険協会の調査はもう1つ重要な事実を示しています。それは、女性は男性に比べて「リーダーシップを発揮できる自信」を持ちづらく、その自信はリーダーシップ経験の有無によって大きく左右されるという点です。

      【リーダーシップ経験と自信の関係】
      Japanese alt text: アンコンシャス・バイアスの正体と新しいリーダーシップのかたち_図表2

      出所:一般社団法人 生命保険協会「アンコンシャス・バイアス調査報告書(2026年2月)」を基にKPMG作成

      自信のなさには心理的な要因も考えられます。成果を上げていても「自分はたまたま運が良かっただけではないか」「本当は実力が足りないのではないか」と感じてしまう心理は、インポスター症候群として知られています。この状態では、成功体験さえも自己効力感に変換されず、次の挑戦を避ける行動につながりかねません。

      重要なのは、「自信がないから能力がつかない」のではなく、「自信は、行動と経験の結果として後からついてくるもの」という認識です。しかし、「十分にできるようになってから挑戦すべき」という完璧主義的な自己基準を内面化してしまう傾向もあります。これもまた、これまでの日本企業の評価文化や育成機会の偏りがもたらしてきた組織側の構造課題だと言えるでしょう。

      3.変化するリーダー像と古いリーダー観

      多くの企業では、事業環境の変化に対応するため、権限委譲を進めチームベースの働き方が推進されています。それにもかかわらず、昇進を含む評価会議の場面では、依然として「長く会社にいて仕事をしているか」「常に自信をもった発言をするか」「何でも1人でこなせるか」といった古いリーダー観が無意識のうちに参照されてはいないでしょうか。

      リーダーの役割は、もはや完璧な判断を下すことではありません。60〜70%の情報で意思決定し軌道修正しながら前進することと、チームの知恵を引き出しながら組織で成果を出すことに価値が移っています。リーダー像が確実に変化している一方で、私たち自身が持つリーダー観は変わっていないのかもしれません。

      4.多様化するリーダーのロールモデル

      これからの時代に必要なのは、すべてを兼ね備えた「フルスペック型リーダー」ではありません。本稿では、リーダーシップを4タイプに整理し紹介します。

      【4つのリーダータイプ】
      Japanese alt text: アンコンシャス・バイアスの正体と新しいリーダーシップのかたち_図表3

      出所:KPMG作成

      第一に、高い熱量で方向性を示す「旗振りタイプ」、第二に、社内外の関係性をつなぐ「つなぎ役タイプ」、第三に、論理と仕組みで最短距離を設計する「ブレーン・参謀タイプ」、第四に、個々の成長に寄り添う「伴走者タイプ」です。

      ポイントは、これらは優劣の関係にあるのではなく、相互補完的であるという点です。管理職一人ひとりがすべてを担う必要はなく、チームとしてどう組み合わせるかが成果を左右します。これこそが、多様性を前提としたリーダーシップです。

      5.「個人の努力」ではなく「関係性のなか」で育まれる自信

      自信は自己研鑽だけで生まれるものではありません。挑戦の機会を与えられること、失敗しても学習として扱われること、率直なフィードバックと肯定的な支援が存在することという、「自信のインフラ」が組織にあるかどうかが重要となります。

      特に、「横のつながり」という同じ立場で悩みを共有できるネットワークは、アンコンシャス・バイアスを相対化し、自分を客観視する力を与えてくれます。女性リーダー育成は、研修やOJTのみで完結するものではありません。他者との関係を紡ぎ、自信と挑戦を育む土壌をつくることこそが真の経営課題と言えるでしょう。

      6.おわりに:管理職というポジションがもたらすもの

      生命保険協会の調査結果が示す「女性は経験があっても自信を持ちにくい」という事実の背景には、減点主義的評価や完璧主義的リーダー観が横たわっています。現在の自分自身が100点満点である必要はなく、「管理職」という役割そのものが、自分自身を育てる最高の学習機会だと言えます。

      自信は、準備が整ったことで生まれるものではありません。行動した後に、結果としてついてくるものです。組織がその一歩を支えられるかどうかという覚悟こそが、女性活躍推進の成否を分けると考えます。

      執筆者

      KPMGコンサルティング
      プリンシパル 油布 顕史

      油布 顕史

      プリンシパル

      KPMGコンサルティング

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