今後の展望:2026年のアジェンダ
学習の促進や、将来に対応した労働力の構築、エマージングテクノロジーのトレンドに目を向けることは、2026年のアジェンダに含めるべき重要な要素の一部にすぎません。
レポートでは、将来に向けたテクノロジー変革のヒントをさらに詳しく紹介しています。
私たちは、かつてない速度で進むイノベーションと、不確実性が増幅する「インテリジェンス時代」の入り口に立っています。テクノロジーは単なる手段ではなく、事業モデルや社会の前提を作り替える基盤となり、人工知能(AI)は競争のルールを更新し、さらには量子テクノロジーの進展や地政学リスクが複雑さを加えています。
本レポートは、世界のテクノロジー上級管理職2,500人の調査に基づき、AI導入の現状と課題を示すものであり、多くの組織が試行錯誤の段階を超えてAIをワークフローや製品に組み込み投資を拡大する一方、技術的負債やサイロ化、人材不足が障壁となり成熟には差があるなか、ROIはガバナンスや実行力に左右され、柔軟で俊敏な戦略と人材投資が成長の鍵となることを明らかにしています。
現在のテクノロジー成熟度レベル
インテリジェンス時代を切り進むテクノロジーリーダーにとって、変化が激しいなかでもテクノロジーを成熟させ、維持することが重要となっています。次の図表では、10のテクノロジーカテゴリーにおける組織の成熟度レベルを示します。
以下のテクノロジーカテゴリーのそれぞれについて、現在、自身の組織の成熟度はどれにあてはまりますか?
テクノロジーの飛躍的成熟に備える
12ヵ月後の成熟度の予測について、上位3つの成熟度レベルにあると回答した組織の割合は93%に上昇します。2026年末までに最上位へ到達すると予測する回答は50%ありますが、現状で到達しているのは11%にとどまります。多くは2026年に1段階の成熟度向上を見込みますが、実際に達成できるかは実行上の課題をどれだけ克服できるかに左右されます。
スキル不足と技術的負債の管理
成熟計画の実現には適切なスキルが必要ですが、DX推進に必要な人材不足を課題が依然として存在しています。パイロット段階では小さかったスキルギャップが、完全展開に進むほど大きなリスクになります。加えて、迅速化やコスト削減のための過去のトレードオフが技術的負債を生み、セキュリティや拡張性、データ標準化などで影響が出ていると回答しています。また、大多数は技術的負債の解消コストが新規の取組みを妨げると答えており、負債リスクの過小評価も示唆されています。
実験から大規模展開への移行
以前は汎用ツールを使った実験促進が中心でしたが、現在の焦点は本番環境での大規模展開です。AIユースケースを大規模展開し複数でROIを達成している組織は前回より減少しましたが、AIの急速な成熟への期待は強く、多くの組織が2026年末までにAI導入が最高レベルに達すると予測しています。
ROIは一定のパターンに従う
インテリジェンス時代のROIは、投資額だけでは決まりません。新ツールや優先順位が錯綜するなかで、ROIの測定・予測・共有は複雑になる可能性があります。調査では平均ROIは2倍ですが、成果は「準備体制・ガバナンス・俊敏性・実行力」の組合せで大きく変わります。またROIの伸びは線形ではなく、段階ごとにROI「ゾーン」があります。
小規模組織 | サイロが少なく、ITエコシステムやガバナンスがシンプルなため、承認や実装が速く、ROI(3.6倍)につながっています。 |
|---|---|
早期導入者 | 学習と改善を早く回せるため、投資額が小さくても成果が出やすく、導入が遅い組織(1.4倍)より高いROI(2.2倍)を達成しています。 |
コスト圧力が少ない組織 | 新しいテクノロジーへの投資障壁が少ないことで、平均ROIは2.6倍となっています。 |
変革重視の組織 | 予算の50%以上を変革に振り向ける見込みの組織は、少ない投資でも高いROI(3.2倍)を報告しています。過去投資の成果が効いている可能性もあります。 |
AI ROIの新たな測定基準
AIはROIの予測・測定が特に難しい領域です。ほとんどの組織が「AIは事業価値を提供している」と答える一方、複数のユースケースでROI達成は24%にとどまります。従来指標だけでは不十分であり、効率化などの直接効果だけでなく、リスク低減やキャッシュフロー改善などの間接価値も含めたKPIが必要です。
間接的価値、全体的な影響、長期的なリターンなどのAIの現実に合わせたKPIがなければ、組織は進捗と成功を可視化することに苦労します。実際、テクノロジー分野の上級管理職の約半数は、AIの価値をステークホルダーと株主の双方に示すことに苦慮していると回答しています。
AI ROIを支える戦略的明確性
AIでROIを出すには、明確な戦略と、その意図が組織全体に伝わっていることが重要です。経営幹部の80%が「明確なAI戦略がある」と答える一方、シニアテクノロジーマネジャーは68%にとどまり、認識のズレが実行を阻害する可能性があります。
テクノロジー戦略はすぐに陳腐化する
テクノロジー戦略は、テクノロジー環境の進化に伴いより優れた選択肢が登場するため、実装される前に陳腐化することが散見されます。本調査によると、テクノロジー分野の上級管理職のほとんどがこの状況を体験しています。一方で高パフォーマンス組織では同様の回答がわずかであり、変化を前提に備えるほど“陳腐化リスク”を抑えられることが示唆されます。
投資ポートフォリオのバランスとターゲティング
適応するには、テクノロジー投資を「保守・成長・変革」のポートフォリオで捉え、環境変化に合わせて配分を素早くシフトできる状態を作ることが重要です。全体では保守35%、成長36%、変革29%と比較的均等に分散していますが、高パフォーマンス組織は成長により厚く配分しています。成熟度が高く保守負担が小さいこと、技術的負債の管理が効いていることが背景として示唆されます。
テクノロジーに関する意思決定アプローチの明確化
適応戦略を効果的に進めるには、意思決定機関を明確にすることが重要です。曖昧なままだと判断が遅れ、責任も分散し、組織内でAIプロジェクトやチームが乱立して連携やガバナンスが弱まりやすくなります。
意思決定機関が不明にならないようにする方法の1つは、選択された意思決定プロセスを中央集権化することです。
さらに、成果を上げている組織ほど、テクノロジー投資の意思決定を中央集権的に行う、またはIT主導で統制を効かせる運営形態を選ぶ傾向が示されています。
適応性のための強固なデータ基盤
強固なデータ基盤は、適応的なテクノロジー戦略に不可欠であり、意思決定者に適切なタイミングで正確な情報を提供します。
以下の図で示されているように、上級管理職が重視する改善領域としては、データ分析によるインサイトの高度化や、データに基づく予測の強化が挙げられ、従業員が根拠ある判断を行える状態づくりが重要視されています。
次のデータアナリティクスの改善領域のうち、今後12ヵ月間で戦略目標を達成するために最も重要なものはどれですか?(回答者は上位3つを選択)
レジリエンスとセキュリティの基盤
適応戦略を支えるには、レジリエンスとセキュリティにしっかりと焦点を当てる必要があります。
本調査におけるパフォーマンスの高い組織は、変化する変数に対するレジリエンスが高い傾向にあり、市場、規制、またはテクノロジーの変化によって頻繁に影響を受けるのはわずかであり、その他の組織と比較して少ない割合となっています。さらに、パフォーマンスの高い組織の70%が変化に対して高いレジリエンスを持っていると回答したのに対し、その他の組織では36%にとどまりました。
エージェントAIブームのさなかで
インテリジェンス時代の今、可能性を秘めた未開拓領域の扉が開かれつつあります。現在注目を集めている機会の1つは、エージェントAIが業務を変革する可能性です。実際、ほとんどの組織が自社のシステムにエージェントAIを組み込むための投資を行っており、エージェントAIの管理が今後5年間で重要なスキルになると回答しています。
エージェントAIは、適切な基盤を持って実装された場合にのみ成功する可能性が高くなります。適切な基盤には、エージェントが実行するタスクや、人間がタスクの「ループ内」で果たすべき役割を決定することが含まれます。以下の図は、テクノロジー分野の上級管理職が、2027年までにデジタルワークフォースがコアテクノロジーチームの仕事の36%を行うようになると予測しており、今後2年間で8ポイント増加することを示しています。
2025年現在と2年後における、コアテクノロジーチームのフルタイム換算(FTE)の人員構成の割合を推定してください。
知識と規模のためのAIパートナーシップ
エージェントAIなどの新しいテクノロジーが登場するにつれて、テクノロジーリーダーはコラボレーションを通じて学習を加速させる必要があります。この必要性はテクノロジー分野の上級管理職にも明確に認識されており、必要な専門知識にアクセスできるよう、テクノロジーエコシステムとパートナーシップを拡大・強化する計画を立てています。
パートナーシップにおけるガバナンスと倫理の優先
組織がパートナーシップを組み、規模を拡大するにつれて、パートナーのガバナンスと倫理基準に注目することが重要です。
本調査においてテクノロジー分野の上級管理職は、セキュリティ上の懸念、知的財産およびデータ保護に関する懸念を、新興テクノロジーに関する組織間のより広範な協力を妨げる上位5つの障壁のなかに挙げています。組織の3分の1が、パートナーシップエコシステム全体でデータ主権監査を強化することを計画しています。
エージェントAIを超えて:さらなるインテリジェンスへの準備
エージェントAIに焦点を当てる一方で、組織は量子コンピューティング、汎用人工知能(AGI)、人工超知能(ASI)など、根本的な影響を与え続ける多数の新テクノロジーやツールにも備える必要があります。このようなテクノロジーやツールが進歩している時代に求められるのは、戦略的な先見性、倫理的フレームワーク、そして新しい働き方や考え方を持つ意欲がある、スキルと適応力に優れた人材の準備です。
AGIとASI
今日のAIシステムは高い性能を備えている一方で適用範囲は限定的であり、明確に定義されたタスクを制約された文脈のなかで実行することに長けています。ただし、それらは内省的に思考するものではなく、反応的に動作するにとどまります。しかし、AGIとASIによって、デジタルインテリジェンスが事実上すべての主要な領域で人間の認知能力を超える現実がもたらされる可能性があります。
AGIは飛躍的な変化の代表です。狭義のAIとは異なり、AGIは人間ができるあらゆる知的タスクを習得し、ドメイン間で知識を転用し、時間とともにその行動を適応させる能力を持つと期待されています。
量子コンピューティング
量子コンピュータは急速に進歩しています。量子コンピューティングは、AIの劇的な加速、モデルトレーニング、開発サイクルの迅速化を可能にし、より堅牢な問題解決能力を生み出す可能性を秘めています。
一方で、暗号化突破など新たなセキュリティ上の脅威ももたらし、すでにテクノロジー分野の上級管理職の懸念事項となっています。
今後の展望:2026年のアジェンダ
学習の促進や、将来に対応した労働力の構築、エマージングテクノロジーのトレンドに目を向けることは、2026年のアジェンダに含めるべき重要な要素の一部にすぎません。
レポートでは、将来に向けたテクノロジー変革のヒントをさらに詳しく紹介しています。